米ゼネラルモーターズ(GM)が、100億ドル(約1.5兆円)を投じたロボタクシー事業「クルーズ」からの撤退を決定しました。「運転手なしで自動運転を行う車両を使ったタクシー事業」の困難さを象徴する出来事といえます。今後GMは、同社が独自開発した高度運転支援システム「スーパークルーズ」の進化に注力する方針です。
この決定により、ロボタクシー市場はグーグル系の「Waymo」が主導する構図となり、テスラも「サイバーキャブ」での参入を目指しています。
GMのポール・ジェイコブソンCFOは投資家向け説明会で、「ロボタクシー事業の立ち上げと運営には、すでに投資した100億ドルを超える多額の追加資金と時間が必要になる」と、撤退の理由を説明しています。
撤退の背景には、2023年10月にサンフランシスコで発生した、クルーズの車両と歩行者との接触事故があります。この事故を受けてクルーズは全米での運行を停止し、経営陣も刷新。この運行停止期間中に、すでに商用サービスを展開していたWaymoとの技術格差が広がった可能性があると、バーンスタイン・リサーチのアナリスト、ダニエル・ロエスカ氏は分析しています。
GMのメアリー・バーラCEOは、デトロイトの自動車記者協会で「技術面での課題と、クルーズが直面した規制当局との関係修復の必要性が、事業展開の遅れにつながった」と述べています。
今後GMは、キャデラックなどの高級車に搭載している運転支援技術「スーパークルーズ」の開発に注力します。スーパークルーズは、高速道路での完全ハンズフリー運転を可能にするGM独自の技術で、すでに収益化に成功しているといいます。同社は米国とカナダでの対応道路の拡大と、搭載車種の増加を進めていく考えです。
この決定は、GMのより広い経営戦略の転換の一環とみられます。同社はEV用バッテリー工場の持分売却や中国事業の縮小など、より効率的な資本活用を進めています。
GMの撤退により、北米では、すでに商用サービスを実施しているWaymoと、これからサービス開始予定のテスラの2社がロボタクシー事業を担っていくことになります。テスラのサイバーキャブは、2025年からカリフォルニア州とテキサス州で運用を開始する見込みです。