テスラは2025年8月20日、人工知能(AI)による完全自動運転システム「Full Self-Driving(Supervised)」の日本国内でのテスト走行を本格開始したと発表しました。今夏から全国の公道で走行を開始しており、運転手はハンドルに手を添えて監視するだけで、運転判断の全てをAIが担う革新的なシステムです。
テスラのFSD(Supervised)は、AIが周囲環境の認知から判断、操作まで全てを担う「エンド・ツー・エンド(E2E)」と呼ばれる手法を採用し、従来の「ルールベース」から完全に脱却しました。車両に搭載された8つのカメラによる360度視野と「Tesla Vision」でリアルタイム環境認識を実現し、レーダーや超音波センサー、高精度地図は一切使用しません。AIの自動運転車による日本の一般道走行はテスラが初とみられます。

テスト車両には、2024年10月の「We, Robot」イベントで披露されたFSD v13技術を搭載したモデル3を使用。最新のハードウェア「AI 4」を装備し、全世界600万台以上のテスラ車両から収集した10億マイル以上の走行データを基にAIをトレーニングしています。
このシステムは自動運転の「レベル2」に相当し、運転者の常時監視が必要です。従来の「レベル2」は高速道路での自動追従などに限定されていましたが、テスラのFSDでは駐車場から駐車場への完全自動走行、市街地での信号・標識認識、車線変更、交差点通過、歩行者・自転車への対応など幅広い場面で機能します。スマートフォンアプリで車両を呼び寄せる機能も搭載し、最大約85メートルの範囲で動作します。
安全性については、テスラのオートパイロット機能をオンにした車両は平均1077万キロメートルごとに1件の事故が発生する一方、一般的な車両では平均113万キロメートルごとに1件の事故が発生しており、約9.5倍安全とのこと。緊急ブレーキ、衝突警告、車線逸脱防止を統合し、ドライバーの注意力をステアリングやカメラで監視する仕組みです。

テスラ車はインターネット経由でソフトウェア更新が可能で、一般利用が解禁されれば国内で販売済みの3万台以上の車両にも機能が追加される見通しです。AI学習加速のため、米テキサス州の工場では約1万6000台のH200 GPU(NVIDIA製)を追加導入し、総計算能力をH100相当で6万7000台分まで拡大しました。
エンド・ツー・エンドの自動運転技術では米中勢が先行し、特に中国では中~高価格帯車両で必須機能となりつつあります。日本メーカーでは、ホンダが自社開発方針を表明し、日産は英新興企業と組んで2027年度からの市販車導入を目指すなど対応を急いでいます。

レベル2相当の自動運転車走行は日本の法律で認められています。ただし、公道で利用するには、国土交通省が定める保安基準やガイドラインを満たした車両であることが前提となります。
日本では事故の責任はドライバーに帰属するため、普及には安全性の担保が不可欠です。テスラは現在、社員によるテスト走行で安全性検証とAI学習を進めており、その後一般ドライバーへの利用拡大を目指しています。「監視つきFSD」の正式リリース時期は、開発状況と規制当局の許認可に依存するとしています。




