米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2025年8月6日、アマゾンの自動運転子会社Zooxが開発したハンドルやペダルのないロボタクシーについて、デモンストレーション使用の認証を行い、3年間の調査を正式に終了したと発表しました。従来の運転制御装置を持たない完全自律走行車両が米国の公道走行許可を得たのは初めてで、自動運転業界にとって歴史的な転換点となります。

NHTSAは2022年から、Zooxの車両が連邦自動車安全基準を満たしているかどうかの調査を実施していました。同社は当初、自社の車両が安全基準に適合していると自己認証していましたが、実際にはブレーキペダルやバックミラーなどの必須装備が欠けていることが判明していました。
Zooxの車両は従来の自動車とは根本的に異なる設計です。ステアリングホイール、ペダル、バックミラーは一切なく、最大4人の乗客が向かい合って座る「キャリッジスタイル」を採用しています。同社CTO(最高技術責任者)のジェシー・レビンソン氏は「Zooxは従来の手動制御装置なしで公道を走行する唯一の目的別ロボタクシーです」とロイターに語っています。

今回の承認により、Zooxは6月に申請していた一部要件からの免除措置を正式に取得しました。トランプ政権は6月、最大2500台の自動運転車両の配備を可能にする免除申請の処理迅速化を発表しており、今回がその初の成功例となります。ゼネラル・モーターズ(GM)とフォードの類似提案は最終的に撤回されていました。
現在Zooxは、カリフォルニア州のフォスターシティとサンフランシスコ、ネバダ州のラスベガスで数十台のロボタクシーを運行中です。同社は2025年後半にラスベガスで初の商用サービス開始を予定しており、2026年にはサンフランシスコでもサービス開始を計画しています。

しかし、安全面での課題も浮上しています。今年5月には270台の無人ロボタクシーのリコールを実施しました。4月8日にラスベガスで無人車両が乗用車と衝突する事故が発生したためです。自動運転システムが「他の車両がゆっくりと垂直に接近して停止する際に不正確な予測をする可能性がある。このようなシナリオでは、Zoox車両は衝突を回避できない可能性がある」という問題が判明し、ソフトウェア更新で対応しました。
アマゾンが2020年に12億ドルで買収したZooxは、グーグル傘下のWaymoに対抗する形で事業を展開しています。アイチャ・エヴァンスCEOは「今後10年以内に、米国の主要都市にいれば、これが最も好ましい移動手段になることを期待しています」と展望を語りました。
今回のNHTSA承認は、自動運転業界全体にとって重要な前例となり、完全新設計による自動運転車両の実現可能性が実証されたことになります。
