2025年も、イーロン・マスクは世界中を驚かせ続けました。トランプ政権の中枢への参画、スペースXの火星計画、そしてテスラとxAIの躍進。EVcafeでは、テスラ系インフルエンサーとして有名な「がす」氏を迎え、編集長駒井とともに、「2025年イーロン・マスク10大ニュース」をセレクトしました。
10位 ボーリングカンパニー、ラスベガスの空港へのトンネル開通計画が承認される

イーロン・マスクのボーリングカンパニーが進めるラスベガス・ループの拡張計画が、2025年に正式承認されました。この計画では、既存のラスベガス・コンベンション・センター・ループからハリー・リード国際空港までのトンネルが建設されます。完成すれば、空港からストリップ地区まで約5分で移動可能になる予定です。運用開始は2026年を予定しており、年間推定利用者数は1500万人とされています。
駒井編集長: 「人間が運転する車で狭いトンネルを走るのは、どうしてもハンドル操作ミスの恐怖を感じますが、無人の完全自動運転(FSD)になれば安心感が増しますね。特にラスベガス空港への接続は大きな前進です。空港交通としてこの『ループ』が採用されるのは世界初ですが、ドバイやアブダビなどがすぐに追随する可能性もあります。今後の空港トランスポーテーションのトレンドになるかもしれません」
がす氏: 「自動運転の新たなスタンダードなルートとして発展していったら、非常に面白いことになりそうですね」(以下敬称略)
9位 スペースX、衛星経由で携帯と直接通信する「Starlink Direct to Cell」を大幅に進化

スペースXは2025年、スターリンクの「Direct to Cell」サービスを本格始動させました。この技術は、既存のスマートフォンが地上基地局を経由せず、直接スターリンク衛星と通信できる画期的なものです。
2025年からは、従来のSMSに加え、音声通話やデータ通信も可能となりました。北米のT-Mobile、欧州のボーダフォン、オーストラリアのオプタス、日本のKDDIといった世界各国の主要キャリアと提携。空が見える場所であれば、従来の携帯電話がそのまま「衛星通信端末」として機能し、地球上から「圏外」をなくす革新的なインフラとして注目を集めています。
がす: 「既存のスマホがそのまま衛星通信に繋がるというのは、まさに通信の概念を根本から変えましたね。イーロン・マスクは『既存のキャリアと競合するつもりはない』と公言していますが、各国のキャリアからすれば脅威であることは間違いありません。このスターリンク事業の圧倒的な成功が、スペースXのIPO(新規株式公開)への道を確固たるものにしたと言えますね」
駒井: 「スペースXは地球低軌道に最終的に4万機以上の衛星を配備する計画ですが、現時点で1万機以上の配備をしています。イーロン・マスクの政治的言動でテスラが批判を浴びる場面もありましたが、スペースXやスターリンクに関しては、もはや批判を差し挟む余地がないほどの社会的インフラになっています。辺境地、戦場、海上、そして機内。どこにいても繋がる環境を実現した彼に対し、『感謝しかない』と思っている人は世界にけっこう多いと思います」
8位 対話型AIの最新モデル「Grok 4.1」が登場!

xAIは2025年11月、対話型AIの最新モデル「Grok 4.1」をリリースしました。前バージョンから推論能力と感情知能(EQ)が大幅に向上し、複雑な問題解決や長文理解、多言語対応が強化されています。最大の特徴は、リアルタイムのX(旧Twitter)データへのアクセスによる「超速の時事情報」に基づいた回答です。さらに、画像生成機能の精度も向上し、テキストから高品質な画像を作成可能。現在はX Premium会員や開発者向けAPIとして提供されており、「世界で最も賢く、人間味のあるAI」として注目を集めています。
がす: 「Grok 4.1の性能向上には目覚ましいものがありますね。ただ、GoogleがGemini 3をリリースしたことで、現時点ではGeminiが『最強』の座を盤石にした感があります。それを追随するOpenAIのChatGPTとのシェア争いも激化していますね。xAIも巨大データセンター『Colossus』を増強していますが、純粋な言語モデル単体では、まだ上位2強を追いかける『3番手』という印象を拭えません。しかし、Grokの真の可能性はテスラやスペースXとのエコシステムにあります。特に人型ロボット『オプティマス』の量産が始まれば、その脳としてGrokが搭載されるはず。そうなれば、クラウド上のAIであるGeminiとは全く別次元の、物理世界(リアルワールド)での覇権を握る可能性があります」
駒井: 「そうですね。加えてX(旧Twitter)とのリアルタイム統合というイーロン・マスク企業群としてのアドバンテージ。汎用AIとは異なる、独自の進化を遂げていますね」
7位 オプティマスの量産計画と「V3」プロトタイプを発表

テスラのイーロン・マスクCEOは、2025年10月22日の第3四半期決算会見で、人型ロボット「オプティマス」の量産ロードマップを公表しました。マスクは、最終的に年間100万台以上の生産能力を持つ専用ラインの構築を目標に掲げています。
2025年、オプティマスは歩行速度の劇的な向上や、自由度の高い次世代ハンドの採用など、ハード・ソフト両面で飛躍的な進化を遂げました。10月の最新デモンストレーションでは、自律的な家事支援や複雑な工場作業をこなす姿を披露。テスラは、2026年から自社工場での数千台規模の導入を開始し、2027年には一般販売を目指すとしています。
さらに、2026年初頭(2月〜3月予定) には、量産を前提とした最終デザインとなる「オプティマス Gen 3(第3世代)」の正式発表が控えており、価格は自動車よりも安価な「2万ドル〜3万ドル以下」をターゲットにしています。
駒井: 「当面はテスラの自社工場内など、限定的な環境での実用化が中心になりますが、すでに外部からの受注も相当数入っているようですね。将来的にはコンビニでの品出しや、原発内などの危険区域での作業などで機能してくれることを期待したいです。ただ、メンテナンスを担うテスラのサービスセンター側は大変でしょうね。修理や調整が必要な対象が、車からロボットにまで一気に広がるわけですから」
がす: 「オプティマスのAIは、テスラの完全自動運転(FSD)と同じ仕組みですが、処理すべき情報の複雑さが桁違いです。車は『道路を走る』という特定のタスクですが、オプティマスは家事、料理、さらには子守りまで、予測不能な人間の生活空間で動く必要があります。このハードルをどう超えるかが鍵ですね。2027年の市販後も、私たちが理想とする万能ロボットになるには、数多くのソフトウェア・アップデートを重ねる必要があるでしょう。また、アクチュエータ(駆動装置)などの専用部品をすべて自社開発しているため、故障時のサポート体制がテスラのサービス網で本当に機能するのかは、投資家も注目している点です。次回の発表会で最大の注目は、22個の自由度を持つと言われる『新型の手』ですね。これによってどれだけ繊細な作業が可能になるのか、非常に楽しみです」
6位 スペースXが史上最大のIPOへ、1.5兆ドルの衝撃

スペースXが企業価値1.5兆ドル(約225兆円)という、史上最大規模の新規株式公開(IPO)を2026年に向けて計画していることが明らかになりました。これまでIPOに慎重だったイーロン・マスクの方針転換の裏には、AI開発競争の激化とスターリンク事業のさらなる拡大に伴う、巨額の資金需要があります。第6世代衛星の大型化には超大型ロケット「スターシップ」による大量打ち上げが不可欠であり、IPOで調達される資金は、人類の火星移住を可能にするという壮大なビジョンの実現に向けた強力なエンジンとなります。
がす: 「AI用の電力不足を解決する究極の手段として、GoogleやOpenAIも宇宙進出を模索し始めています。データセンターを衛星軌道や月面に設置すれば、太陽光による24時間365日の安定発電が可能ですし、冷却問題も宇宙の排熱技術で解決できます。計算結果だけをレーザー通信で地球へ送ればいいわけです。ロケット、AI、自動運転、ロボットのすべてを『垂直統合』できるのは、現在イーロン・マスクだけ。テスラ製のAIチップがスターリンク衛星やロボット(オプティマス)に共通して搭載されることで、このIPOはテスラのエコシステムにも計り知れない恩恵をもたらすでしょう」
駒井: 「今まさに、投資案件で最も熱いテーマですね。イーロンはスペースX株の約4割を握っています。スペースXが1.5兆ドルの評価を受ければ、彼の資産は天文学的な数字になります。そう考えると、テスラでの成果報酬(約560億ドル)を巡る法廷闘争なども、彼にとっては些末な問題に過ぎないのだと再認識させられます」
5位 宇宙船「スターシップ」、2026年に無人火星飛行へ

スペースX社は、次世代の超大型ロケット「スターシップ」による初の火星無人飛行を2026年末までに実施する計画を明らかにしました。最大150トンという驚異的な積載能力を誇る同機は、人類の火星移住を実現するための鍵となります。イーロン・マスクが提唱する「マルチプラネタリー(多惑星居住)」時代の幕開けに向け、100万人規模の移住を目指す壮大な計画がいよいよ本格始動します。
駒井: 「スペースXは、2025年にファルコン9を年間170回近くという驚異的なペースで打ち上げました。今後はスターシップの本格運用によって、さらに大量の衛星を一気に投入するフェーズに入ります。これらの事業収益が火星への無人飛行を加速させていくでしょう。第2次トランプ政権下で規制緩和が進み、イーロン・マスクの構想がよりスピーディーに実現されることが期待されます」
がす: 「日本のロケット打ち上げでは、成功のたびに万歳三唱する光景が見られますが、スペースXは今や約2日に1回のペースで打ち上げており、それが『日常』になっています。この圧倒的な場数の差が、そのまま宇宙事業の競争力の差として現れていますね」
4位 テスラがロボタクシー・サービスを開始

テスラは2025年6月、テキサス州オースティンで、続いて7月末にはカリフォルニア州ベイエリアでロボタクシーサービスのパイロット運用を正式に開始しました。これはイーロン・マスクが長年構想してきたビジョンの第一歩です。現在は安全監視員(セーフティドライバー)が同乗する形での運用が中心ですが、テキサス州では一部で完全無人(ドライバーレス)の試験走行も始まっています。料金はパイロット運用の段階では一律料金(例:テキサスでは4.20ドル)などが設定されており、将来的に従来のタクシーやライドシェアより安価に提供することを目指しています。サービス開始から半年で利用エリアや対象ユーザーを順次拡大しており、自動運転技術の社会実装に向けた重要なマイルストーンとなっています。
がす: 「テスラはロボタクシーで収益を上げたい意向ですが、テスラのEnd-to-Endの自動運転はAIが判断して運転するため、なぜ止まったのか、なぜ右折したのかといった『判断理由』がブラックボックスであるという課題がありました。これが規制当局の認可を得る上での壁となっていましたが、最近ではテスラがその判断理由を可視化・出力できる技術を開発したとの報告もあります。これにより各国で認可が進めば、無人自律運転の普及が一気に加速すると予想されます」
駒井: 「無人ロボタクシーに関しては、ウェイモ(Waymo)にしてもテスラにしても、日本に導入するためには、規制対応や安全性の確保など、まだまだ解決しなければならない課題が山積みですね」
3位 史上最大の1兆ドル!テスラ取締役会、イーロン・マスクに前例なき成果報酬を提案。マスク氏の「150兆円報酬」承認される

テスラの株主総会で、イーロン・マスクCEOへの1兆ドル(約150兆円)規模の新たな成果報酬パッケージが承認されました。これは2018年の報酬案を大きく上回る史上最大の規模です。新パッケージには、時価総額8.5兆ドルの達成や、年間2000万台の車両納入、人型ロボット「オプティマス」100万台の販売など、極めて高い目標が設定されています。マスク氏はこのパッケージの承認を受け、テスラを世界で最も価値のある企業にすると改めて宣言しました。
がす: 「イーロン個人が私腹を肥やすためではなく、今後、人型ロボット『オプティマス』が数億台規模で普及する未来を見据え、テスラ内での議決権を25%程度確保したいという狙いがあります。未来を正しくコントロールするためには、確固たる支配権が必要だという彼の哲学の表れですね」
駒井: 「それにしても、時価総額8.5兆ドル(約1300兆円)達成が条件とは、現在のGAFAすら霞む数字です。数字が『吹かし』に見えるほどの超絶目標ですが、これを株主が承認したこと自体、彼への期待が異常値であることを示していますね(笑)」
2位 イーロン・マスクの政治活動でテスラの不買運動が勃発

イーロン・マスクのトランプ政権への積極的な関与は、一部の顧客層に強い反発を招き、「テスラ離れ」を引き起こしました。特に民主党支持者が多い米国西海岸都市部やリベラルな消費者が多い欧州でブランドイメージが悪化し、販売台数に影響を与えています。その結果、2025年上半期の決算では、価格競争の影響も相まって営業利益が前年同期比で大きく落ち込むなど、政治的リスクが経営の表面に現れた1年となりました。
駒井: 「『ブルーステート(民主党支持州)』での顧客離れは深刻でしたね。一方で、トランプ支持者が多い『レッドステート(共和党支持州)』でその分売れたかというと、EVそのものへのアレルギーがあるせいか、リベラル層の減少分を完全にはカバーできていない印象です」
がす: 「イーロン本人が政府効率化委員会の活動にリソースの多くを割いたことで、『本業のテスラがおろそかになっている』という株主からの不満も出ました。2025年は、テスラが政治的シンボルになってしまった難しい年でしたね。ヨーロッパ市場については、結局はブランドイメージの悪化で、年末時点でもまだ本格的な回復には至っていませんね。特に北欧での落ち込みは深刻です」
1位 イーロン・マスク、トランプ政権の中枢に

イーロン・マスクは2025年1月、新設された政府効率化省(DOGE)の責任者に就任しました。同組織は年間2兆ドルの歳出削減を目標に掲げ、契約解約や人員削減などを通じて約2140億ドルの削減を報告しましたが、その実効性については多くの議論を呼びました。テスラの業績悪化を受け、マスクは2025年末までに同組織から事実上撤退し、DOGE自体も11月に解散となりました。
駒井: 「一連の活動でトランプ氏の覚えがめでたくなったのは大きかったかなと。あまりに酷かった民主党政権下でのテスラ冷遇、イーロン・マスク冷遇が解消されたことで、テスラの未来が大きく開けた印象もあります」
がす: 「トランプさんがホワイトハウスの前でテスラに乗る姿を見て、ファンの期待も最高潮に達しました。政権中枢に入ったことで、自動運転の法的な壁を一気にクリアしていくパイプライン(人脈・影響力)に、私は強く期待したいです」
【2025年 イーロン・マスク10大ニュース 対談ゲスト】
がす(来嶋 勇人)
福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になり、テスラに乗ってハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。プライベートでは2024年からイーロン・マスクの公式パロディアカウント(フォロワー240万人)からオファーをもらいイーロン・マスク(パロディ)公認のAIデザイナーとなり、ハイクオリティなAI画像をイーロン・マスク(パロディ)に提供。そのメールをやりとりしているイーロン・マスク(パロディ)はイーロン・マスク本人だと思っている。TikTokでは、「Elon Musk’s Mars Food」が計500万再生でバズり中。
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