中国の電気自動車(EV)大手BYDが、日本に続いてカナダ市場への参入準備を進めています。グローバル展開を加速するBYDの動きが、北米自動車業界に大きな影響を与える可能性が出てきました。
自動車専門メディアのAutomotive News Canadaが報じたところによると、BYDは7月下旬、カナダ連邦政府とオンタリオ州政府に対してロビイストを登録しました。これは「BYDの乗用EVのカナダ市場参入に関する助言」を行うためとされています。
BYDは昨年末にテスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなり、すでに日本市場に進出しています。日本では2023年1月から乗用車の販売を開始し、「ATTO3」や「ドルフィン」「シール」などのモデルを展開。手頃な価格設定と高性能を武器に、日本のEV市場に新風を吹き込んでいます。
カナダ以外にも、BYDはメキシコ市場でも積極的な展開を見せています。今年初めには100台のATTO3コンパクトクロスオーバーを納車し、7月にはピックアップトラック「シャーク」のグローバル発表をメキシコシティで行いました。さらに、1000人以上の雇用を創出する工場建設も計画中です。
一方で、BYDのカナダ市場参入に対しては懸念の声も上がっています。カナダ自動車部品製造業協会(APMA)のフラビオ・ボルペ会長は、中国政府の支援を受けた安価なEVが北米の自動車製造業を脅かす可能性を指摘しています。
現在、カナダ政府は中国製EVに対する関税導入を検討中です。米国やEUも同様の措置を取っており、BYDの北米戦略に影響を与える可能性があります。
オートフォーキャストソリューションズのジョー・マッケイブCEOは、「米国自動車市場はBYDにとっての聖杯だが、カナダとメキシコを入口として使う可能性が高い」と分析しています。
BYDの具体的なカナダ市場参入のタイミングや方法はまだ明らかになっていませんが、同社の動向が北米自動車市場に与える影響は大きいと予想されます。日本を含む各国市場でのBYDの成功を踏まえると、カナダでも同社の競争力が注目されることになりそうです。