EVとガソリン車、どちらが環境に悪影響を与えてるかを分析
「EVは実はガソリン車よりも環境に悪い」—— こんな批判を耳にしたことはありませんか? 電気自動車(EV)の普及が進む中、その環境への影響を疑問視する声が一部であります。この主張に対し、EV専門メディアのinsideEVsが詳細なリサーチを実施しました。
insideEVsの調査によると、EVはガソリン車と比較して、実際には環境にとってより良い選択肢であることが明らかになりました。では、具体的にはどのような結果が得られたのでしょうか。
比較方法:高級セダンで検証
調査では、EVの代表としてルーシッド・エア、ガソリン車の代表としてアウディS6が選ばれました。両車とも高級セダンで価格帯も近いため、公平な比較が可能です。
排出量の計算には、車両の走行時だけでなく、燃料の輸送や電力の送電ロスなども考慮されました。さらに、場所による電力源の違いも加味するため、再生可能エネルギーの使用率が低いウィスコンシン州と、比較的高いニューヨーク州の2つの地域で計算が行われました。
驚きの結果:EVの圧倒的な優位性
分析の結果、EVの環境への影響は、ガソリン車よりもはるかに小さいことが判明しました。
ガソリン車(アウディS6):1マイルあたり1.125ポンドのCO2を排出
EV(ルーシッド・エア):
ニューヨーク州:1マイルあたり0.069ポンドのCO2を排出
ウィスコンシン州:1マイルあたり0.373ポンドのCO2を排出
つまり、最も条件の悪いウィスコンシン州でさえ、EVの排出量はガソリン車の3分の1以下なのです。
バッテリー製造の影響は?
EVの批判者がよく指摘するのが、バッテリー製造時のCO2排出です。確かに、92kWhのバッテリーパックを製造する際には、約2万0240ポンドのCO2が排出されます。
しかし、走行距離が増えるにつれ、この初期の環境負荷は相殺されていきます。ウィスコンシン州の場合、約2万6910マイル(約4万3300km)走行後にガソリン車と同等になり、それ以降はEVの方が環境に優しくなります。アメリカ人の平均年間走行距離が約1万3476マイルであることを考えると、2年程度で逆転することになります。
ニューヨーク州ではさらに早く、約1万9170マイル(約3万0800km)で逆転します。将来的にバッテリー製造の効率が向上すれば、この逆転ポイントはさらに早まる可能性があります。
EVの効率性:無駄の少なさが鍵
EVが環境に優しい大きな理由の一つは、その効率性にあります。一般的なガソリン車のエネルギー効率は30%程度で、70%もの燃料が熱や音として無駄に消費されています。
一方、EVは電気エネルギーの77%以上を車輪の動力に変換できます。発電所の効率を考慮しても、天然ガス発電所からの電力を使用した場合、EVの総合効率は54%に達します。これは平均的なガソリン車をはるかに上回る数字です。
将来性:さらなる改善の可能性
EVの環境性能は、電力供給の改善とともにさらに向上していく可能性があります。石炭火力発電所の廃止や効率の良い天然ガス発電所への移行、再生可能エネルギーの拡大により、EVの実質的なCO2排出量は今後さらに減少すると予想されます。
例えば、ニューヨーク州では2025年に完成予定のシャンプレーン・ハドソン・パワー・エクスプレス送電線により、1200メガワットの再生可能エネルギーがカナダからニューヨーク市に供給されることになっています。
結論:EVは環境にとってより良い選択肢
今回のinsideEVsの分析により、「EVはガソリン車よりも環境に悪い」という主張が誤りであることが明確に示されました。製造時の環境負荷を考慮しても、EVは長期的にはガソリン車よりもはるかに環境に優しい選択肢なのです。
さらに、電力供給の改善とともにEVの環境性能は向上し続けます。交通インフラの電化は、個々の車両の排出量削減だけでなく、電力供給の集中管理を通じて、より効果的な環境対策を可能にする可能性を秘めています。EVへの移行は、現在の環境問題解決だけでなく、よりクリーンな未来への重要な一歩となりそうです。
参考出典:insideEVs “Do Electric Vehicles Really Pollute More Than Gas Cars?”