特集&エッセイ

テスラ、好決算を受けてわずか2日で株価25%の大上昇! じんべいが注目したQ3決算のポイント

電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第16回

by じんべい

 こんにちは、じんべいです。テスラ株ホルダーの皆さん、おめでとうございます!

 2024年第3四半期(Q3)決算を受けて、翌10月24日のテスラ株は前日比で約22%もの大幅上昇を記録しました。さらに25日も+3%の上昇となり、わずか2日で合計25%もの上昇です。これほどの大幅な株価上昇は、まさに「大暴騰」と呼ぶにふさわしい出来事です。1日で22%も株価が急騰するのは、S&P500の上位銘柄である大型株にとって極めて珍しい、稀有なケースと言えるでしょう。

 木曜日の取引では、取引量も通常の2倍にあたる2億株に達しました。これを見るに、世界中の投資家がこぞってテスラ株を買い求めた結果と考えられます。  

 X(旧Twitter)でもお伝えしましたが、以下のリストはテスラ株の1日当たりの上昇率トップ10のランキングです。今回を含めてテスラが1日の取引で20%以上の上昇を記録したのは、過去にわずか2回のみです。過去最高は2013年5月9日の24.4%の上昇。この時期は、テスラがS&P500指数に組み入れられるずっと前で、プレミアムセダンのモデルSを市場に投入した翌年、まだ赤字を抱えたベンチャー企業の時代でした。

Q3決算翌日、テスラ株価は21.9%という史上二番目の大きな上昇を記録(出典:X@TeslaPodcast)
Q3決算翌日、テスラ株価は21.9%という史上二番目の大きな上昇を記録(出典:X@TeslaPodcast)

 今回、大型株となったテスラが20%以上の1日上昇率を達成したのは、非常に重要な出来事です。この結果は、市場のテスラに対する見方が「悲観から楽観へ」「失望から期待へ」と大きく転換したことを意味しているのではないでしょうか。

 では、なぜテスラ株に対する投資家の心境がここまで大きく変わったのでしょうか? 理由は主に2つあります。1つ目は、Q3決算が市場予想を大幅に上回る好調な結果を示したこと。そして2つ目は、テスラが今後の成長見通しについて非常にポジティブな発表を行ったことです。この2点が、テスラ株の急騰を支えた大きな要因と考えられます。

Q3決算報告と説明会での発言をもとにポイントの振り返り

 そこで今回は、テスラのQ3決算報告と説明会でのイーロンや幹部たちの発言に注目し、じんべいが特に興味を持ったポイントを振り返ってみたいと思います。ぜひ最後までお付き合いいただければと思います!

 今回の決算で株価上昇の原動力となった主要な業績をざっと確認していきましょう。

 まず、売上高についてですが、予想の253.7億ドルに対し実際の結果は251.82億ドルとなり、わずかに予想を下回りました。しかし、注目すべきはEPS(1株当たり利益)です。テスラは0.72ドルを記録し、アナリスト予想の0.60ドルを大幅に上回る好結果を達成しました。テスラ強気派のアナリストやウォッチャーでさえもQ3で0.70ドルを超えるEPSを予測していた人はほとんどおらず、この力強いEPSが市場に大きなポジティブサプライズを与えたといえるでしょう。

売上高は予想を下回るも、利益率は大幅改善  (著者が作成したテスラQ3決算の市場予想と結果)
売上高は予想を下回るも、利益率は大幅改善  (著者が作成したテスラQ3決算の市場予想と結果)

 まとめると、売上高はやや予想を下回ったものの、利益率の改善が顕著であり、この点は非常に高く評価されるべきです。

自動車部門の粗利益率も17%台までに回復し底を脱した模様

 次に、自動車部門の粗利益率を見ていきましょう。テスラの自動車部門の粗利益率は、予想の14.9%を上回り、実際には17.1%という結果になりました。これは前年同期からの改善を反映しており、テスラが製造コスト削減に成功していることが要因と考えられます。

自動車部門の粗利率はQ3で反転上昇!(出典:X@TroyTeslike)
自動車部門の粗利率はQ3で反転上昇!(出典:X@TroyTeslike)

 長期的に見れば、この利益率の改善はテスラの競争力を強化し、将来の収益成長を支える重要な要素となるでしょう。また、全体粗利益率も予想の16.9%に対し、実際には19.8%と大幅に改善されており、コスト削減と効率的な生産体制が成果を上げていることを示しています。


好決算の最大の貢献要因は絶好調なエネルギー事業と車両コスト削減

 今回の好決算を支えた最大の要因は二つあります。絶好調なエネルギー事業と車両コスト削減です。

 まず一つ目のエネルギー事業についてですが、テスラのエネルギー事業はQ3で特に力強い成績を示し、今後の成長が大いに期待されています。Powerwall 3を含むストレージ製品の販売が好調で、エネルギー部門の収益は前年比52%増の23億8000万ドルに達しました。また、ストレージ製品の導入数も前年同期比で75%増加しており、成長の勢いが続いています。さらに、粗利益率も前年より6ポイント上昇し、30.5%と過去最高を記録しました。

 また、2025年Q1には上海メガファクトリーでメガパックの出荷が予定されており、これが収益をさらに押し上げる可能性があります。再生可能エネルギーの普及が加速する中、エネルギー貯蔵ソリューションの需要も今後拡大すると予想され、テスラのエネルギー事業は今後ますます注目される分野となりそうです。

 さらに、今回の決算で投資家に大きな衝撃を与えたのが、テスラが車両1台あたりの製造原価(COGS)を過去最低の3万5100ドルまで削減した点です。添付のグラフを見ていただくとわかるように、テスラの製造原価削減への取り組みは目を見張るものがあります。  

 特に今回の第3四半期のコスト削減は劇的で、2022年Q1では1台あたり4万1235ドルだった製造コストが、今回のQ3では3万1996ドルにまで低下しました。つまり、テスラはこの2年で製造原価を約22%も削減することに成功したのです。

テスラはこの2年で製造原価を約22%削減することに成功!(出典:X@TroyTeslike)
テスラはこの2年で製造原価を約22%削減することに成功!(出典:X@TroyTeslike)

 背景にはバッテリー原材料費の急低下が一因として挙げられますが、それ以上に、テスラの持続的なコスト削減努力がこの成果を支えていると考えられます。

 また、昨年11月に販売が開始されたサイバートラックが、Q3(7-9月期)に初の黒字化を達成したことも投資家にとっては大きな朗報でした。多くのEVメーカーが製造コスト削減に苦戦し赤字から抜け出せないなか、テスラの異例の成功は業界全体からも注目を集めています。他の輸送手段と価格面で競争できるレベルにまで製造コストを抑えたテスラの取り組みは、EVの普及をさらに加速させる大きなステップです。

 まとめると、今回の決算でテスラが高い利益率を確保できた背景には、過去最高の30.5%という粗利益率を誇るエネルギー事業の好調に加え、この大幅な車両コスト削減が大きく貢献しているといえます。

決算説明会でイーロンらテスラ幹部が述べた将来成長予測

 決算報告書のリリース直後に開催された決算説明会では、イーロンも出席し、ここ数四半期の中でも特に強気でポジティブな発表が行われました。テスラ投資家やファンにとってどれも注目に値する内容でしたが、特にじんべいが注目したポイントは次の3つです。

1:低コストモデルの投入と自動運転サービス展開によって来年の成長率は20%〜30%になる


 決算説明会で、イーロンは「2025年前半に、より手頃な価格のモデルを提供する計画が順調に進んでいる」とし、「低コスト車両や自動運転の進展を考えると、来年の成長率はおそらく20%から30%程度になるだろうというのが、私の最良の見通しだ」と述べました。

 さらに、自動運転に特化した新モデル「サイバーキャブ」にも言及し、「サイバーキャブは2026年に量産体制に到達する予定であり、その実現に自信を持っている。単に生産を開始するだけでなく、2026年には本格的な量産が可能になると考えており、その結果として大きな成長が見込まれる」とコメントしました。

 また、イーロンは「サイバーキャブは年間200万台の生産を目指しており、複数の工場で製造が進められる予定だ。最終的には年間400万台の生産に達する可能性もあるが、これは現時点での最良の予測である」と述べました。サイバーキャブはハンドルやペダルを持たない完全自律運転に最適化されたデザインで、コストはおおよそ2万5000ドル前後になる見込みです。

 先日の「We, Robot」イベントでは、テスラは新製品の発表のみを行い、サイバーキャブに関する具体的な生産戦略についての情報が乏しかったため、投資家の失望を招き、株価が下落しました。しかし、今回の決算説明会でサイバーキャブに関するポジティブな追加情報が得られたことは、非常に良いニュースと言えるでしょう。

会場でプレゼンをするイーロン(出典:テスラYouTube公式アカウント)
会場でプレゼンをするイーロン(出典:テスラYouTube公式アカウント)

2:10月、FSD導入率は大幅に上昇、ロボタクシーアプリもテスラ社内でテスト中


 また、今回の決算説明会ではFSD(完全自動運転)の導入率に関する報告もありました。イーロンによると、FSDの導入率はここにきて大幅に改善しており、特に10月10日のイベント以降、顕著な増加が見られたといいます。  

 今年5月には、イーロン氏が当時のFSD導入率が「2%を大幅に上回っている」と発言しており、これはFSDバージョン12を提供し始めた直後のことでした。それから約半年後の「We, Robot」イベントでは、限定的な環境ながらもレベル5の完全自動運転が披露され、テスラのFSDに対する関心が一気に高まったことで、多くのテスラオーナーがFSDを「使ってみたい」と感じるようになったのでしょう。

 現在、世界には約700万台のテスラ車が走行しています。もしこのうち30%がFSDに加入した場合、約200万台の車両から毎月FSD収益がテスラにもたらされることになります。FSDの月額料金は99ドルであるため、200万台 × 99ドルとして月額2億ドル、年間では24億ドルの収益が自動的にテスラに入り続けることになります。このFSDによるソフトウェア収益は、今後のテスラの利益率向上において非常に重要な役割を果たすといえるでしょう。

 さらに、自動運転関連でもう一つ注目すべき発表がありました。それは、テスラがここ数カ月にわたり、ベイエリアでロボタクシーサービスのテストを行っているとイーロンが明かしたことです。テスラ従業員が試作型の配車アプリを使用し、自動運転のテスラ車を呼び出して移動できるというもので、同社の配車サービス「テスラネットワーク」の実現がついに近づいていることを示唆しています。この発表は、「We, Robot」イベントで投資家が期待していたものの語られなかった情報でもあり、テスラネットワークがいよいよ現実味を帯びてきたことで、投資家の期待も一層高まることでしょう。

テスラが開発しているロボタクシーアプリ(出典:2024 Q1 Quarterly Update Deck)
テスラが開発しているロボタクシーアプリ(出典:2024 Q1 Quarterly Update Deck)

3:テスラの次なる一手:自動運転配車サービスの全米展開へ

 テ スラは来年からカリフォルニア州とテキサス州で有料の自動運転配車サービスを開始する予定で、規制当局からの承認を得るために着実に準備を進めています。現在、カリフォルニア州では商用自動運転サービスの認可をまだ取得していないものの、イーロンはテキサス州での認可がよりスムーズに進むと期待しています。

 また、イーロンは現在、トランプ前大統領の応援にも力を入れており、トランプ氏も再び大統領に就任した際、イーロンを「政府効率化委員会」のトップに任命し、官僚的なプロセスを簡略化する方針を示しています。これに関連して、決算説明会でイーロンは「もし政府に効率化のための部門があるなら、私も協力し、テスラだけでなくすべての人々のために尽力したい」と述べました。

 加えて「米国では州ごとに規制が異なり、保険の規制が州ごとに違うように、50州それぞれに対応するのは非常に困難だ。自律運転車に関しても、全国で統一された承認プロセスが必要だ」と語り、州ごとに異なる規制が自動運転の普及の障壁となっている現状への問題意識を示しました。

 テスラの株価急騰とQ3決算は、未来への力強い足音を感じさせてくれました。これからもイーロンが率いるテスラの次なる挑戦を見守りつつ、彼らがどのように市場の期待に応えていくのか楽しみにしたいですね。

文・じんべい

日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約1万7000人。 X(Twitter)フォロワー数:約8000人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

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