日産が最新技術でスカイラインGT-RをコンバージョンEVに
日産自動車は、2025年1月10日より開催された東京オートサロン2025において、R32型スカイラインGT-R(BNR32)をEV化したコンセプトモデル「R32EV」を参考展示しました。
カスタマイズカーの祭典である東京オートサロンにおいて、R32EVの展示ブースには他のICE車の展示車とは比較にならない来場者が集まり、日本の伝統的な車づくりとEVのコラボレーションに高い関心が寄せられました。
このプロジェクトは、日産の技術者が30年前に自身が感じた走りの魅力を現代の技術で再現し、30年後の未来にもR32GT-Rの持つワクワク感を継承していきたいという想いからスタートしました。プロジェクトリーダーを務める日産自動車パワートレインエキスパートリーダーの平工良三氏は、「R32GT-Rに乗ると、現代のクルマとは違った高揚感や気持ちよさを感じます。このワクワク感を後世に残すことはできないか?という想いから、このR32EVの製作活動が始まりました」と説明します。
日産が誇る名車R32型スカイラインGT-R
日産の誇る名車、8代目スカイラインR32型は1989年5月にデビューを飾りました。その3カ月後となる同年8月、多くのファンが待ち望んだ「GT-R」が16年ぶりに復活。この復活は自動車業界内外で大きな話題を呼びました。
R32型スカイラインGT-R
GT-Rの心臓部には、専用開発された2.6リッターの直列6気筒DOHCツインターボエンジン「RB26DETT型」を搭載。このエンジンは、当時の国産車として最高となる280馬力を誇りました。
駆動システムにも革新的な技術が採用されました。FRをベースとしながらも、路面状況に応じて前後輪への駆動力を電子制御で最適に配分する「アテーサE-TS」と呼ばれる電子制御トルクスプリット4WDシステムを搭載。さらに、サスペンションには新開発の4輪マルチリンク方式を採用し、セダンベースのスポーツカーとして世界最高水準の運動性能を実現しました。
EV化でクルマの価値を次世代に伝える挑戦
EVやe-POWERの開発に携わってきた技術者でもある平工氏の今回の挑戦は、クルマの持つ本質的な価値を次世代に伝えようとする試みでもありました。「R32のアナログ(ガソリンモデル)の良さを、デジタル(EV)データで再現することができれば、30年後でもR32GT-Rの魅力を味わうことができるのです。いわば『クルマのデジタルリマスター版』のようなものとも考えています」と平工氏は語ります。
R32EVは、日産リーフのモーターを前後に搭載し、電動車ならではの緻密な制御をすることでエンジン車特有の加速感を再現。全長4545mm×全幅1755mm×全高1340mmのボディサイズを持ち、各モーターは最高出力160kW、最高トルク340N・mを発生させることが可能です。
最も注目されている技術の一つが、RB26DETTエンジンの音や振動を表現した専用のサウンドシステムです。アイドリングの音から空吹かしした時の音や振動、パドルシフトでシフトチェンジした時のエンジン音の変化まで再現しています。
東京オートサロンの展示会場では、R32EVの足回りにも注目が集まりました。本モデルは、ブレーキシステムにR35GT-Rのユニットを採用し、18インチアルミホイールにはR32GT-Rオリジナルの5本スポークデザインを現代的に再解釈したデザインを採用。245/40R18のタイヤと組み合わせることで、クラシカルな佇まいと現代の性能要求の両立を実現しています。
インテリアでは、ステアリングやシフトノブはオリジナルを再現しながら、メーターとセンターコンソールに液晶パネルを採用し、R32GT-Rのオリジナル表示を再現しています。
このR32EVプロジェクトについて平工氏は「この活動は商品化のためのものではありませんが、一緒に活動している若いエンジニアと共に”楽しいクルマとは何か”を探求し、今後も日産の技術を磨いていきたい」と説明しています。
さらに、R32GT-R当時のテストドライバーである加藤博義氏による実際のR32EV運転体験映像を、東京オートサロンの初日に公開。
東京オートサロン2025は、1月10日から12日まで幕張メッセで開催されています。
【R32EVの仕様】
ベース車両:R32型スカイラインGT-R(BNR32型)
全長×全幅×全高:4545mm×1755mm×1340mm
車両重量:1797kg
モーター最高出力:160kW×2基
モーター最高トルク:340N・m×2基
乗車定員:2名
駆動方式:ツインモーター4WD
駆動バッテリー:リチウムイオン電池(リーフNISMO RC02)
燃料:電気
タイヤサイズ:245/40R18