by EVcafe編集長 駒井尚文 @Tesla365Days
アイオニック5で横浜から千葉へドライブ
韓国製のEVに乗るのは初めてです。ヒョンデ The new IONIQ 5(アイオニック5)の試乗のために、Hyundai Customer Experience Center 横浜を訪れました。
試乗車の準備が整うまでの間、韓国のお茶をいただきながら、個人的なヒョンデの記憶について広報の方に質問してみます。


私「かつて、ヨン様が『ソナタ』という車をCMしていましたよね? とても懐かしいです」
広報さん「そうなんですよ。『冬のソナタ』は日本で大ヒットしましたが、当時の『ヒュンダイ』から『ヒョンデ』にリブランドして、日本市場ではEVだけに絞って再参入することになりました」
私「その間、BTSを筆頭にK-POPが世界を席巻するというもの凄いムーブメントが起こったわけですけど、韓国車の販売にも影響がありますか?」
広報さん「はい。正直、K-POPや韓流コンテンツの追い風はありますね。特に、若い世代には響いている感じがします。実際、ヒョンデ車の開発陣は若いスタッフが多くて、技術力も高いと認められています」
私「なるほどー。何か疑問が解けたような感じがしました。アイオニックに乗ってる人たちは、テスラやリーフよりも若い人たちが圧倒的に多い印象です。外観も、テッキーで未来的なイメージのルックです。シニアなら抵抗あるけど、若い人たちには『オレたちのEV』って感じで共感を呼びやすいんだなと理解しました」
さらに話を聞いてみると、ヒョンデはM&Aも積極的に行っていて、犬型ロボットで有名な「ボストンダイナミクス」も同社の傘下なんだそうです。K-POP云々とかのレベルじゃなくて、立派なシリコンバレー企業じゃん!

広報さんの話を聞いて、俄然、試乗のモチベーションが上がりました。テスラーとしては「テッキーなEV」なら大歓迎です。ヒョンデ上等〜。
まずはサイズ比較
アイオニック5:全長×全幅×全高=4655 × 1890 × 1645mm(ホイールベースは3000mm)
テスラ モデル3:全長×全幅×全高=4720 × 1850 × 1440mm(ホイールベースは2875mm)
テスラ モデルY:全長×全幅×全高=4800 × 1920 × 1625mm(ホイールベースは2890mm)
テスラのモデルYを、少し縮めた(トランク部分を15センチほどぶった切った)のがアイオニック5のサイズ感だと思っておけばよろしいかと。

さあ今回も、試乗車を24時間お借りできました。例によってテスラー目線で良かった点と微妙な点を箇条書きにしていきます。

アイオニック5の良かった点
デザインがスタイリッシュ。ヘッドライトもユニークです
ヒョンデのアイオニック5の特徴は、やはり未来的でシュッとしたデザインだと思います。誰がデザインしたのかと気になってAIに聞いてみたら、ジウジアーロの名前が出てきてビックリしました。GoogleのAI、Geminiから引用しましょう。「アイオニック5のデザインは、1974年にジウジアーロ氏がデザインした『ポニーカークーペコンセプト』からインスピレーションを受けています。この過去のデザインが、現代のアイオニック5に影響を与えています」……なるほど、そうでしたか。ジウジアーロ本人の仕事ではないのですが、この説明でなんか納得しちゃいました。

私がジウジアーロの名前を知ったのは、日本車でいうといすゞの「117クーペ」とか「ピアッツァ」なんかの昭和の名車ですが、アルファロメオとかフェラーリとかフォルクスワーゲンなどの数々のスタイリッシュな自動車を世に送り出した、「カーデザイナーの代名詞」みたいなマエストロです。70年代にヒョンデの仕事もしていたんですね。
シャープなエッジに、段差をつけた直方体のライトが特徴です。リアの処理もモザイクっぽくて斬新ですね。若い人たちに受けるテイストに溢れています。

タッチスクリーンのUIがシンプルに整理。バックミラーがデジタル
さすがIT先進国の韓国製ということでしょうか、タッチスクリーンのUIはシンプルで視認性も高いです。そして、バックミラーはデジタルミラーが標準装備されています。これはめちゃめちゃ驚きました。個人的に、初めて体験するデジタルミラーでしたが、慣れてしまえば問題ないですね。ナビゲーションは、マップ表示の一般的なモードの他に、カメラの映像にルートを示すARモードがあります。これは好みの問題でしょうか。分かりやすいと感じるドライバーもいれば、逆に、かえって煩雑だという意見もありそうです。

ドアハンドルが飛び出す。ウインカーは右側にある
アイオニック5には、フィジカルな特徴がたくさんあります。まずは、ドアハンドルがせり出す仕様。これ、テスラだとモデルSとかモデルXと同じ機能です。BYDのドルフィンにもありました。
そして、まったく想定しておらず嬉しかった機能は、ウインカーレバーがステアリングの右側に設置されていることです。輸入車ではかなりレア。これ、日本人ならみんな喜びますよね。
あと、ガラスルーフにはスライディングタイプのサンシェードがついています。夏場とか、嬉しいですよね。自分のテスラにもサンシェードが欲しいと思いますもん。この仕様、SUVだと時々見かけますね

加速はまずまずというか、速い方の部類。モデル3ならRWDモデルと同等と感じます。ドライブモードは、エコ、ノーマル、スポーツの主に3モード。加えて、マイドライブというカスタムモードと、スノーモードがあります。フル加速時のフィーリングも悪くありません。
そして、車内は驚くほど静かです。ロードノイズもほとんど気になりません。これは、私のモデル3ハイランドと同じレベルの静粛性。

V2Lが標準装備。災害時にも役に立つEV
アイオニック5には、輸入車では珍しいV2L機能が装備されています。給電コネクターも標準装備されており、充電ポートから最大1600Wを給電することが可能です。災害で停電になった際の備えになりますし、もちろん、オートキャンプでも活躍します。
さて、微妙だった点はどうでしょう。
アイオニック5の微妙な点
タッチパネルが小さい。そして、遠い
アイオニック5のタッチパネルは12.3インチ。テスラに比べるとやや小ぶりで、縦横比率はだいたい16:9といったところ。やや横長です。先に述べたようにUIはとてもシンプルでよくできているのですが、微妙な点もいくつかあります。
まず、ドライバーからちょっと遠いので、指で触れて操作するのがちょっと大変です。そのため、タッチスクリーンの周囲や手前には物理スイッチがけっこうたくさんあって、結果的に操作性がやや煩雑になっています。

あと、12.3インチのスクリーンは横に2基並んでいて、ステアリングの奥にある右パネルがやや残念だと感じます。スピードメーターは必要ですし、視認性もいい。しかし、外側の「現在の充電量で走行可能な距離」がこんなにデカデカと表示される必要はありません。これ、今どきのEVあるあるですよね。センター付近にあるタッチスクリーンにどんどん情報が集約されていく一方で、ドライバーの目の前、ステアリングの奥にパネルを設置するかどうか。設置するんなら、どこまで情報を出すのかが非常に難しいですね。このポイントで、各メーカーのアプローチは微妙に違います。

OSは自社開発だそうですが、実は、できることはそれほど多くありません。音楽アプリもインストールされていません。CarPlay接続で音楽聞くか、ラジオかということになります。ただ、ラジオはFMに加えてAMも用意されているのはユニークです。
アイオニック5の試乗まとめ
まとめましょう。 アイオニック5は、思った通りスタイリッシュでテッキーな車でした。タッチスクリーンのUIも含めて、デザイン性が優れているのは大きなアドバンテージです。
ただし、自社開発のOSは、拡張性の部分で今一歩と感じました。もっと色んなアプリが標準装備されたり、ダウンロード可能になったら、もっと楽しいEVになると思います。ガジェット風味は備えていますが、ガジェット本体としてはやや物足りないといったところ。「デザイン性>ガジェット感」というバランスは、それはそれで良しと思う方も多いと思います。オシャレだし、乗り心地はとても快適。タッチパネルで色々遊びたい人には、ちょっと物足りない。でも、V2Lとかついていて、案外痒いところに手が届いている。ヨーロッパのEVよりもはるかに個性的なEVだと思いました。

ヒョンデについては、今年登場のインスターに大期待ですね。コンパクトな5ナンバーのEVで、タッチスクリーンもアイオニックより大ぶりみたいです。デザインのテイストが、アイオニックとはまた全然違いますが、どんだけテッキーな味付けになっているのか興味津々。4月からの発売が非常に楽しみです。
グレード | アイオニック 5 Voyage | アイオニック 5 Voyage AWD | アイオニック5 Lounge | アイオニック 5 Lounge AWD |
---|---|---|---|---|
バッテリー容量・一充電走行距離 | 84kWh・703km | 84kWh・648km | 84kWh・703km | 84kWh・616km |
車両価格(消費税込み) | 523万6000円 | 554万4000円 | 574万2000円 | 613万8000円 |