台湾の電子機器受託生産大手フォックスコン(鴻海精密工業)は、電気自動車(EV)事業を新たな成長分野と位置づけ、日本市場への本格参入を進めています。同社のEV事業責任者である関潤最高戦略責任者(CSO)が2025年4月9日、都内で事業戦略説明会を開催し、今後の計画を明らかにしました。
関CSOは説明会で、2027年までに複数のEV車を日本市場に投入する計画を発表。さらに「何個か日本に投入するといいましたが、日本でつくりたいと思っている」と述べ、将来的には日本国内での生産も視野に入れていることを明らかにしました。
フォックスコンは、既に乗用車から商用車まで8車種のEVを開発済みで、運送事業者から自動車大手まで幅広い企業を顧客として、EVの受託生産などを拡大していく方針です。EVバスなど一部の車種は、日本でも導入される予定です。

関氏は「われわれは日本との親和性が高く、EV事業でもチャンスが大きいと考えている」と述べ、日本の自動車メーカーとの協業に強い意欲を示しました。ただし、取り沙汰されている日産自動車などについては「特定のメーカーとやりたいわけではない」と説明し、「組んでシナジーが得られるところとは、なるべく早くやりたい」と述べるにとどめました。既に日産自動車との協業に関心を示していることや、三菱自動車工業へのEV供給検討が明らかになっており、日本メーカーとの協業の進展が注目されています。
「トランプ関税」の影響について問われた関氏は「モットーとしているのは現地化だ」と回答しました。「アメリカで売るものはアメリカでつくるべき」と述べ、米国市場向けEVについては現地生産を行う意向を示しました。
フォックスコンは1974年に台湾で設立された企業で、電子機器製造サービス(EMS)分野では世界最大手。コンシューマーエレクトロニクス、クラウドネットワーク、コンピュータ端末、コンポーネントなどの分野で40%を超える市場シェアを持っています。2024年の連結売上高は6兆8600億台湾ドル(約30兆円)に達しています。近年は「電気自動車、デジタルヘルス、ロボット工学」と「人工知能、半導体、次世代通信技術」を組み合わせた「3+3」戦略を長期発展戦略として位置付け、スマートライフプロバイダーへの転換を図っています。