ベトナムの電気自動車(EV)メーカー、ビンファストが2025年8月4日、インド南部のタミル・ナードゥ州トゥーットゥックディにEV組立工場を正式に開設しました。同社にとってベトナム国外では初の製造拠点となり、世界第3位の自動車市場であるインドでの本格的な事業展開が始まりました。

新工場は総面積約162万㎡の敷地に建設され、車体工場、塗装工場、組立工場、品質管理センター、物流ハブなどを備えています。最新の自動化技術を導入した生産ラインを有し、年間生産能力は初期段階で5万台、将来的には15万台まで拡大可能としています。

工場では当初、プレミアム電動SUVの「VF 7」と「VF 6」の2モデルを組み立てる予定です。フル稼働時には地域住民3000〜3500人の直接雇用と、サプライチェーン全体で数千人の間接雇用を創出する見込みです。

ビンファストは製造拠点の開設に先立ち、7月に販売網の構築を開始しています。7月27日にはグジャラート州スーラトに初のショールームを開設し、8月2日にはタミル・ナードゥ州チェンナイに同社最大となる約437㎡の店舗をオープンしました。
同社は年内に27都市以上で計35店舗の展開を計画しており、7月15日からVF 6とVF 7の予約受付を開始。予約金は2万1000ルピー(約3万5000円)で、全額返金可能としています。
インド市場参入にあたり、ビンファストは複数の現地企業との戦略的提携を進めています。充電インフラの整備とアフターサービスでロードグリッド、マイTVS、グローバル・アシュアと提携し、全国規模のサービス網構築を目指しています。

また、持続可能性への取り組みとして、インドのクリーンテック企業バットエックス・エナジーズと連携し、バッテリーのリサイクルと循環型バリューチェーンの構築に取り組んでいます。
ビンファストアジアのファム・サン・チャウCEOは「タミル・ナードゥ工場は、インド市場への長期的なコミットメントを示す戦略的マイルストーンです。将来的にはこの施設を南アジア、中東、アフリカ向けの最大輸出拠点に発展させる予定です」と述べています。
同社は2025年に全世界で20万台、2030年には年間100万台の生産目標を掲げており、インド事業はその実現に向けた重要な拠点と位置づけています。
ビンファストは、ベトナム最大級の複合企業ビングループの子会社として2017年に設立され、現在はナスダック市場に上場しています。北米、欧州、アジアの主要市場での販売網拡大と製造能力の増強を進めており、インドでの本格展開は同社のグローバル戦略の重要な一歩となります。
