大成建設は、走行中の電気自動車(EV)への無線給電が可能な次世代道路「T-iPower Road」において、最高時速60kmで走行する車両に最大出力10kWの連続無線給電を実現したと発表しました。国内では初の成功事例となります。

実験は、福島県田村市にある大成建設グループ次世代技術実証センターで実施されました。直線区間が200m以上ある「舗装のテストトラック」の20m区間分に送電電極と送電システムを埋設し、受電電極を搭載したEVトレーラーを一般車両で牽引しながら時速0~60kmで走行させ、電力の伝送効率などを計測したとのことです。

実験の結果、最高時速60kmで走行する車両への連続無線給電において、伝送効率は平均66%(最大71%)を達成。道路側からの最大10kWの送電出力に対し、EV側では6〜7kWの電力を連続受電できることが確認されました。また、無線給電道路の施工や更新・メンテナンスは、大型施工機械を用いる従来工法とほぼ同じ施工法で対応可能であることも実証されました。

T-iPower Roadは、舗装道路に埋設した送電電極から走行中のEVに無線で電力を供給する「電界結合方式」を採用しています。送電電極と送電システムは道路表層から100mm以上の深さに埋設されており、従来の高速道路と同様の交通量で大型車両が走行可能な舗装構造を実現しています。

国内の年間CO2総排出量の約18%を運輸部門が占め、そのうち約9割が自動車の運行によるものとされています。政府は2025年2月に「道路法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しており、道路分野の脱炭素化推進が期待されています。
大成建設は2012年より無線給電道路の開発に着手し、2020年には国土交通省の技術研究開発に採択されています。これまで国内の実証実験におけるEVの走行速度は最高時速20km程度に留まっていましたが、今回の成功により高速道路への本格適用に向けた道筋が見えてきました。
同社は今後、中型・商用車両など様々なEVに対応可能な無線給電道路の実用化と高速道路への本格適用に向けた技術開発を進める方針。無線給電道路の実現により、EVの長距離・連続走行が可能となり、搭載バッテリーの小型・軽量化も期待されます。
