電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第36回 by じんべい
こんにちは、じんべいです!
今回は、世間を騒がせているテスラのCEO、イーロン・マスクの衝撃的な動きについて深掘りしていきたいと思います。先日、テスラが米証券取引委員会に提出した文書で明らかになったのですが、なんとイーロンがテスラ株を大量に購入していたとのこと!その額、驚きの10億ドル!日本円にすると約1470億円です。日本の国家予算の0.1%に匹敵する額と聞くと、その凄まじさが伝わってきますよね。

ある調査によると、これはCEOによる自社株購入額としては史上最高額。2位のアサナのCEOが3億3990万ドルですから、イーロンはその3倍近く、まさにダントツのトップです!やはりイーロンは別格だなと改めて感じさせられます。
世界屈指の富豪であるイーロンですが、彼の資産のほとんどはスペースXとテスラの株式が占めています。そんな彼でも、自社株を売却せずに10億ドルもの資金を用意するのは、相当大変だったはず。銀行からの借り入れか、はたまた蓄えていたポケットマネーから捻出したのか…。いずれにしても、これだけの金額を投じてテスラ株を購入したということは、テスラの将来に対する尋常ならざる自信の表れだと考えることができますね。
では、なぜ今、イーロンはテスラ株の取得に動いたのでしょうか?投資家として、この点が最も気になりますよね。今回は、イーロンの株購入に隠された2つの戦略について、じっくりと解説していきます。
戦略その1:11月の株主総会を前にした「株主へのプレゼント」
1つ目のポイントは、今年11月に開催される年次株主総会を前にした、まさに「計算され尽くした動き」だったと私は見ています。今回の株主総会で最大の注目点は、取締役会が提案しているイーロンへの巨額報酬パッケージが承認されるかどうかです。この報酬プラン、なんと今後10年間で最大1兆ドル(約147兆円)という破格の金額!もし承認されれば、イーロンはさらにテスラ株の保有率を高めることができます。
この株主総会を前に、今のテスラ投資家たちに気持ちよく賛成票を投じてもらいたい。イーロンには、そんな狙いが少なからずあったのではないかな、と私は推測しています。だって、この報酬プランが承認されれば、イーロンには1兆ドルものチャンスが巡ってくるわけですからね。今回、イーロンが自社株買いに投じた10億ドルは、1兆ドルに比べればわずか1000分の1の金額に過ぎません。
これはまるで、「先に株価を上げておくから、11月の株主総会では僕の報酬プランを承認してね」という、株主への事前のプレゼントだったと私は見ています。もちろん、テスラの将来の業績に対する自信の表れであることは間違いありません。しかし、その自信を実現するには、この報酬パッケージが承認されることが大前提となるわけです。
戦略その2:テスラでの「絶対的支配権」確立への野望
テスラウォッチャーのソーヤー・メリット氏によれば、今回の自社株買いで、イーロンのテスラ株保有率はわずか0.62%の上昇でした。しかし、これは彼が目標としている25%の保有率に一歩近づいたことを意味します。
世界一の大富豪であるイーロンは、もはやお金のためにテスラやSpaceXを経営しているわけではないでしょう。彼の真の目的は、テスラのミッションである「持続可能なエネルギー社会の実現」や、「AIによる人類文明の発展」といった壮大なビジョンを成し遂げること。そして、これを実現するためには、テスラの経営権をできるだけ強く握っておきたいはずです。

第三者に追い出されて、自分のやりたいことができなくなることだけは避けたい。その思いが強いからこそ、彼はテスラ株を欲しているのだと私は考えます。
かつて、アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、経営トップとの対立が原因で、1985年にアップルを追放されました。当時の彼のアップル株保有率は11%ほど。もしもっと保有率が高ければ、追放されなかったかもしれません。
もちろん、アップルほどの巨大な公開企業では、たとえジョブズ氏が多くの株式を保有していたとしても、取締役会との激しい対立が解決されない限り、追放される可能性は依然として高かったでしょう。しかし、CEOが多くの株式を保有していれば、それだけ多くの議決権を持つことになり、自身の解任といった動議を否決する力が増すのは事実ですし、自身のビジョンを実現するための影響力を強く保つことができます。
イーロンは、この教訓から学び、自身のテスラでの「絶対的支配権」を確立しようとしているのでしょうね。
もし今年の株主総会で新しい報酬プランが賛成多数で承認され、さらにイーロンが全ての追加株式付与のマイルストーンを達成できれば、彼のテスラ株保有率は約25%にまで高まります。これは、現在デラウェア州で係争中の2018年の報酬プラン分を除いた数字です。もしデラウェアでの裁判にも勝つことができれば、なんとテスラ株の約29%保有が実現することになります。これはまさに、イーロンが何としても成し遂げたいテスラでの野望の一つでしょう。

この計画は、テスラ株主にとっても大きなメリットがあります。なぜなら、イーロンがテスラ株の保有比率を高めるには、テスラの株価がしっかりと2600ドルまで上昇し続けることが条件だからです。これは、投資家にとって大きなリターンを得られることと同義なのですね。
史上最高値更新への強い自信とシグナル
では次に、短期的な視点で、投資家にとって最大の注目点についてお話ししましょう。今回のイーロンの自社株買いを受けて、テスラの史上最高値である480ドルの更新が実現するのかどうか。これが、今みなさんが一番関心のあるところだと思います。
米国証券取引委員会への届け出書類「Form 4」を見ると、イーロンが前回テスラ株を買い増したのは2020年2月でした。そのため、今回の自社株買いは本当に久しぶり、実に5年ぶりの動きでした。

一般的に、企業の幹部、いわゆるインサイダーが自社株買いをすると、その会社の株価は上がると言われています。インサイダーは会社の内部事情を最もよく知る人物。彼らが自社株を買うということは、「今の株価は割安で、これから株価が上がる」という強い自信の表れだと受け取れるからです。
特に「インサイダー買い」は、将来の株価上昇の良いシグナルである可能性を示唆しています。投資家のブライアン・フェロルディ氏がまとめたデータを見ると、インサイダーが自社株を買った場合、1年後の平均リターンは約30%と非常に高く、さらに「勝率」が100%という結果も出ています。これは、過去の事例においては、インサイダー買いが1年後に必ず株価上昇につながっていることを示唆しているのです。
では、イーロンが前回自社株買いを行った2020年2月以降のテスラ株価が、どのような動きをしたのか見ていきましょう。

こちらが当時のテスラの日足チャートです。イーロンがテスラ株を大量購入した時、出来高がいつもの倍になっているのがわかりますね。この時、株価は分割後で50ドルほどでした。それが、その年の終わりにはなんと293ドルまで急騰しているのです。つまり、6倍にまで増えたということになります。
さらに翌年の2022年末にはどうなったかというと、407ドルにまで上昇しています。イーロンの自社株買いから約8倍になった計算です。これは驚異的な上昇ですよね。もちろん、この時はコロナショックからのFRBによる緊急利下げ、好調なEV販売、そしてテスラのS&P500への組み入れなど、いくつかの好条件が重なったことも背景としてあります。しかし、それらを差し引いても、テスラ株価が大きく上に動いたという事実は変わらなかったでしょう。
テクニカル分析が示す、もう一つの上昇シグナル「ゴールデンクロス」
さらにもう一つ、テスラ株が今後史上最高値更新するのではないかと思わせる動きが、テクニカルチャートから読み取れます。
最近の株価上昇によって、テスラの短期的な株価の平均線である「50日移動平均線」が、長期的な平均線である「200日移動平均線」を上回ろうとしているんですよね。これを、株式投資の世界では「ゴールデンクロス」と呼んでいます。このゴールデンクロスが起こると、株価が上昇する可能性が高まると言われています。
前回50日移動平均線が200日移動平均線を突き抜けたのは去年の7月でした。この時、ゴールデンクロスが出た後に株価は上昇しました。
さらに、今後、中期の株価平均線である「120日移動平均線」が200日移動平均線を超えると、さらに上昇の勢いが加速する可能性が高いです。前回、それが起きたのは昨年の10月で、この時、株価はほぼ2倍になりました。この時に、テスラは史上最高値の480ドルを記録したのですね。もし今後120日移動平均線と200日移動平均線が再びゴールデンクロスをすれば、史上最高値更新、480ドル超えも視野に入ってくると思います。
ファンダメンタルズも追い風!テスラの未来は明るい?
それだけではありません。テスラには、株価を支えるファンダメンタルズ(企業の基礎的価値)の面でも、たくさんのポジティブな材料があります。

例えば、デラウェア州での裁判でテスラが逆転勝訴すれば、2018年のイーロンの報酬プランは実施されることになります。これもテスラ株価にとっては大きなプラス材料となること、間違いありません。
さらには、今年の株主総会での最大のテーマの一つ、テスラがxAIに投資するかどうかも重要です。もし賛成多数で可決となれば、これはテスラ株価をさらに押し上げる要因になると思います。
どうでしょうか、皆さん。今のテスラには、不安材料よりもワクワクする材料、つまり「株価はもっと上にいくのではないか」という期待がたくさんありますよね。
もちろん、今テスラのRSI(相対力指数)は上がってきているので、このあたりで一時的に調整が入る可能性はあります。ただ、もし少し落ちた時があれば、そこは押し目買いのチャンスかもしれません。先ほど挙げた年末に向けた材料がしっかりと消化されていけば、テスラ株はどんどんと500ドルに向けて上に登っていく気がしています。
年末までに500ドルに到達し、2025年がテスラにとって良い年だったと振り返ることができたら素晴らしいですね。引き続き、これらの材料がしっかりと達成されるのか、注目していきましょう。

文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約3万人。 X(Twitter)フォロワー数:約1万人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。
