テスラは、ヨーロッパの一部市場において、2025年10月に販売開始となったモデルYに続きモデル3の廉価版「スタンダード」グレードの販売を開始しました。2025年12月5日付けでElectrekなどが報じています。
モデル3「スタンダード」グレードは、ドイツ、フランス、イタリアなどで3万6990ユーロ(約669万38円)からという価格設定で販売されています。
この廉価モデル投入の背景には、欧州市場での厳しい状況があります。2025年11月の欧州でのテスラ車の登録は前年比12.3%減を記録。ノルウェーでは年末インセンティブ終了前の駆け込み需要がありましたが、これを除くと実質36%以上の急落という深刻な状況でした。
テスラは3万7000ユーロという価格の壁を突破することで、大衆市場の競合と真正面から競争できるポジションを確立しようとしています。
モデル3スタンダードは、WLTP航続距離534km、0-100km/h加速6.2秒、最高速度201km/hというスペックを維持。価格を抑えながらも、コア性能は妥協していません。

競合車種と比較すると、フォルクスワーゲンID.3 Pureは約2万9760ユーロですが、モデル3は航続距離と室内スペースで大幅に優位。BYD Atto 3の3万7990ユーロを1000ユーロ下回り、ボルボEX30(3万6000〜3万9000ユーロ)とも同程度の価格設定となります。
一方、モデルYスタンダードは3万9990ユーロ(約723万6700円)と、上位グレードとの価格差が小さく、航続距離も約100km減少するため、モデル3ほど魅力的な提案ではないとの評価です。VW ID.4 Pure(約4万0335ユーロ)よりは安価ですが、差別化は限定的です。

スタンダードモデルの装備については、まず、シート素材がビーガンレザーから部分的にテキスタイル素材へ変更。リアシートパッセンジャー用のディスプレイとリアシートヒーターは設置なし。オーディオシステムはサブウーファーとアンプを省いた7スピーカーにダウングレード。ホイールは合金からプラスチック製エアロカバー付きスチールホイールへ変更され、外観ではライトバーが削除されています。

スタンダードモデルの投入は、欧州での販売不振を克服するためのテスラのアグレッシブなアプローチと言えます。欧州EV市場の競争激化の中、この価格戦略がどこまで効果を発揮するか、今後の動向が注目です。
(写真提供:Tesla, Inc. )



