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本格適応前に回避か? 中国とEU、EV追加関税を巡る協議開始で合意

 2024年6月22日、中国の王文濤商務相は欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)とオンラインで協議し、EUによる中国製の電気自動車(EV)への追加関税を巡り協議を始めることで合意したと、中国商務省が発表しました。

 欧州委員会は2023年10月から中国のEV補助金について調査を開始。6月12日の調査報告で、中国が供給網全体で不当な支援をしていると結論づけ、中国政府から補助金を受けた安価なEVがEU市場に流入し、競争を不当に阻害していると判断。

 EUには、域外で補助金を受けた輸入品が不当に安い価格で域内産業に損害を与えたと認められた場合、追加関税を課すことができるルールがあり、欧州委員会は6月12日、中国製EVの輸入に関し、暫定的に中国からの補助金などの支援度合いに応じて、7月4日から追加の関税をかけることを発表しました。中国自動車大手の上海汽車集団のEVに38.1%、BYDには17.4%を上乗せ。その他のメーカーはEUの調査に応じていれば平均21%、応じていなければ38.1%を追加。現行の10%から最大48.1%に関税が上がることとなります。

EUはBYDへの関税を17.4%上乗せ
EUはBYDへの関税を17.4%上乗せ

 この処置は、上海に自社工場(ギガ上海)をもつ米国のテスラなど、中国でEVを生産する外国メーカーも対象。これを受け、ドイツ、フランス、イタリアなどEU各国のテスラは、上海で生産するモデル3の価格を7月から引き上げる見込みであることを公式サイトで発表し、現状の価格で購入するためには、6月中に納車を行う必要があると早期の購入を促しています。

 EUの追加関税について、中国商務省は6月12日、「欧州側は世界貿易機関(WTO)の規則を無視しており、中国は断固として反対する」との報道官談話を出し是正を求め、対話と協議を通じて適切に処理するよう促すと共に、「中国企業の合法的権益を断固として擁護するため、あらゆる必要な措置を講じる」と強調。中国の対抗措置は、ドイツメーカーの自動車やフランスの酒類やチーズといった製品に対する報復関税も想定されています。

中国側の対抗措置では、ドイツメーカーの自動車への報復関税も想定されています
中国側の対抗措置では、ドイツメーカーの自動車への報復関税も想定されています

 中国の王商務相は6月22日、この問題を協議するために中国を訪問していたドイツのハーベック経済・気候相と北京市内で会談。EUによる中国製EVへの追加関税に「強い不満と断固とした反対」を表明し、対話による問題の回避を求めました。それを受けたハーベック氏は、ドムブロフスキス上級副委員長から同様の報告を受けたこと明らかにし「対話を通じて問題を解決するという中国の提案に同意する」と語りました。

 また、ロイター通信によると、ハーベック氏は上海で「この数週間、具体的な協議日程を立てることができなかったという点でこれは驚きだ」と指摘。この合意が問題解決に向けた「最初の一歩」だとするとともに、2024年11月に関税が本格的に適用される前に対話する時間はあると述べています。

 中国製EVを巡っては、米国も8月から従来の4倍の100%の制裁関税を課すこととなっており、カナダ政府も中国製EVに対する輸入関税を引き上げる検討に入ったと報じられています。

 この米国の関税について、2023年世界EV販売シェアで首位の19.8%を獲得するテスラのCEOイーロン・マスクは「自由な貿易を妨げたり市場をゆがめたりするような措置は好ましくない」と批判しています。

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