電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第35回 by じんべい
こんにちは、じんべいです!
先日、テスラから、投資家たちの度肝を抜くようなビッグニュースが飛び込んできました。テスラの取締役会が、CEOであるイーロン・マスクに対し、10年間で最大1兆ドル(日本円で約148兆円)という、米国企業史上最高額の報酬パッケージを提案したことが明らかになったのです。
このニュースは、多くのテスラ投資家だけでなく、世界中のビジネスパーソンに衝撃を与えたことでしょう。しかし、この天文学的な報酬は決して簡単に手に入るわけではありません。テスラの時価総額を現在の約8倍にまで高めるなど、極めて高いハードルが複数設けられています。特に最大の条件として、2035年までにテスラの時価総額を現在の約1.1兆ドルから8.5兆ドルに引き上げることが求められています。
この「8.5兆ドル」という数字がいかに巨大か、想像できますでしょうか? 現在の世界で最も時価総額が大きい企業である半導体大手NVIDIAの約4兆ドル(※執筆時点)と比較しても、その2倍以上の規模に相当します。これはまさに、「月を目指す」という表現がふさわしい、壮大な目標が設定されていることを意味します。
今回の報酬パッケージは、テスラの取締役会委員会が、イーロンと10回にわたる綿密な協議を重ね、年次総会を延期し、さらに6人もの外部アドバイザーを招いた上でようやくまとめ上げた、非常に練られた内容となっています。
大手メディアの報道によると、この交渉は、イーロンをテスラに少なくとも7年半つなぎ留めるための異例の協議の一部だったそうです。委員会側は、イーロンに政治への過度な関与を控えさせ、テスラへのコミットメントを確実なものにしたい意向でした。
しかし、交渉の中でイーロンが、自身の要求する一定の約束が得られないのであれば退社する可能性を示唆したことも明らかになっています。今回の新報酬パッケージを含め、イーロンのテスラに対する関与については、両者間で緊張感のある激しい議論が展開されたことが伺えます。
今回のイーロンの新報酬プランは、テスラ投資家の皆さんにとって、まさに「知っておくべき最重要情報」と言えるでしょう。そこでこの記事では、
- 新たな報酬体系はどんな内容なのか?
- そして、テスラ投資家にとって具体的にどのような影響があるのか?
これらを皆さんにわかりやすいようにじっくりと解説していきます。記事の最後には、テスラの株価がどうなるのか、その未来像についても見ていきたいと思いますので、ぜひ最後までお読みください!
イーロン・マスク新報酬プランの全貌
まず、イーロンがテスラの株式を報酬として受け取るための仕組みから見ていきましょう。
イーロンは、以下の2つの条件を満たすことで報酬を獲得できます。
- 市場時価総額マイルストーン
- 業務マイルストーン
これらのマイルストーンをクリアすることで、報酬が発生する仕組みです。つまり、イーロンが株式報酬を受け取るには、実際のビジネス成長と株式市場からの評価という、まさに両輪が揃った時に報酬が発生するよう設計されています。
市場時価総額マイルストーンの詳細
まずは「市場時価総額マイルストーン」について詳しく見ていきましょう。

これは、テスラの時価総額が特定の目標に到達することを指します。テスラ取締役会が提示した資料によると、このマイルストーンは順次達成する必要があります。報酬の最初の区分(トランシェと呼ばれる単位)を獲得するためには、まずテスラの時価総額2兆ドルの達成が求められています。
現在のテスラの時価総額は約1.1兆ドル(※執筆時点)ですので、最初のトランシェ達成でさえ、時価総額が約2倍になる計算です。そして、最終トランシェの8.5兆ドルになると、時価総額は8倍近くにも膨れ上がります。これは並大抵な業績達成では成し得ない、非常に高い目標であると言えるでしょう。
業務マイルストーンの詳細
次に「業務マイルストーン」です。こちらは、テスラの事業運営に関する具体的な目標が設定されています。資料に記載されている主な目標は以下の通りです。

イーロンがテスラの株式を報酬として得るためには、時価総額目標と同時に、複数の厳しい業績マイルストーンをクリアしなければなりません。これらの目標は、どれもが「常識外れ」とも言えるレベルに設定されています。順に見ていきましょう。
車両販売:2000万台の納車
テスラはこれまでに800万台近くの車両を納車していると推定されますが、目標達成には、これまでの2倍以上の台数を増やす必要があります。これは単に生産台数を増やすだけでなく、持続的な需要を確保しながら生産能力を拡大し続けるという、極めて困難な挑戦です。
FSD契約:1000万件の有効サブスクリプション
現在のFSD(完全自動運転)の加入者は、北米の累計納車台数から推測すると、およそ30万件程度と見られています。1000万件という目標は、現在の30倍以上の増加を意味します。この目標達成には、技術の完全性を証明し、世界中の法規制をクリアし、誰もが納得する価格設定でグローバルに展開していくことが不可欠です。
ロボット事業:ロボット「オプティマス」100万台の納入
テスラはまだ人型ロボット「オプティマス」の量産化には至っていません。この段階で100万台という目標は、まさにSFの世界のように聞こえます。製造技術の確立、コストの劇的な削減、そして実用的なユースケースの創出がすべて同時に求められる、最も難易度の高い目標の一つと言えるでしょう。
ロボタクシー:100万台の商用運用
ロボタクシーの商用運用は、すでに現実のものとなりつつあります。テスラは今年から、オースティンとカリフォルニアでサービスを開始し、特にオースティンでは急速にサービスエリアを拡大しています。テスラは、100万台を実際に走らせるための技術をすでにほぼ完成させており、あとは各地域の当局からの承認と安全性の確認を待つばかりです。
テスラが目指すのは、高価な3Dマップの作成を必要としない真の自律走行です。この革新的なアプローチが世界の各地域で承認されれば、ロボタクシーの普及は一気に加速し、私たちの移動手段を大きく変える未来が現実となります。
調整後EBITDA:500億ドルから4000億ドルへの段階的達成
財務目標は、テスラがどれだけの収益力を生み出せるかを示します。
中間目標である1300億ドルですら、世界のトップ企業であるGAFAに匹敵するレベルです。最終目標の4000億ドルは、テスラが自動車産業だけでなく、エネルギーやロボティクスなど複数の分野で圧倒的な独占的地位を確立した時に初めて達成可能な水準です。この目標が達成されれば、株主はまさに爆発的なリターンを手にすることになるでしょう。
これらの業務マイルストーンは任意の順序で達成することができます。つまり、いずれかの業務目標を達成すれば、それが報酬獲得の条件の一部として認められる、という柔軟な仕組みになっています。
具体的な報酬獲得の例として、イーロンがまずテスラの時価総額を2兆ドルに到達させ、さらに以下のいずれか一つを達成した場合が挙げられています。
- 2000万台の車両を納入
- 1000万件のFSD有料契約
- 100万台のオプティマス納入
- 100万台のロボタクシーが商業運用
- 調整後EBITDA 500億ドルの達成
上記の条件のうち、いずれか一つが最初に達成された時点で、報酬の最初の区分を受け取ることができます。時価総額の目標と、特定の業務目標の両方をクリアすることが求められるわけです。
新報酬プランがテスラ投資家にもたらす影響
さて、この新しい報酬プランが私たちテスラ投資家にとって何を意味するのか、見ていきましょう。
その前に、テスラのCEOであるイーロンにとっての重要性について簡単に触れておきます。このプランは、イーロンがテスラの価値を拡大し続けるための最大のモチベーションとなるものです。
もしイーロンが提案された1兆ドルの成果報酬プランのすべてのマイルストーンを達成した場合、彼のテスラにおける所有権は、現在の13.5%から大幅に増加し、28.8%に達する可能性があります。これは現在の保有率のほぼ倍にあたります。
これは、イーロンが以前から望んでいたことです。彼は、テスラのAI事業を円滑に進めるために、外部からの干渉を受けないよう25%以上の議決権が欲しいと公言していました。この報酬プランは、イーロンがその目標を達成するために全力を尽くす強力なインセンティブとなるでしょう。
私たち株主にとっても、これは朗報です。イーロンが引き続き企業価値の向上にコミットし、株主と利益を共有するインセンティブが高まるわけですから、今後のテスラ成長への期待はさらに高まります。そして、テスラ株主にとって最も嬉しいことは、株価が上がることです!
今回の新報酬プランは、まさに株主寄りの内容になっています。なぜなら、イーロンが目標を達成するには、テスラの時価総額、つまりは株価を上げることが絶対条件だからです。
では、各時価総額マイルストーンを達成した場合、テスラの株価はどのようになるのか、計算してみましょう。
想定条件としては、現在の発行済み株式数約32.2億株を元に、各マイルストーン時価総額を株式数で割り、一株あたりの株価を算出します。

いかがでしょうか。この数字を見ると、テスラ投資家なら誰もが期待を感じるのではないでしょうか。
テスラの時価総額が2兆ドルに達すれば、1株あたりは約619ドルとなり、現在の株価(約350ドル)の約1.8倍になります。そして、最後の8.5兆ドルという目標を達成すると、1株あたり約2600ドルに達する可能性があります。
この水準は、以前ARK Investが予測した2030年の目標株価(2600ドル)とも一致しており、非常に大きなインパクトがあります。現在の株価を350ドルとすると、実に7.5倍ものリターンが期待できる計算です。
もちろん、これはあくまで現在の発行済み株式数に基づいた試算です。報酬パッケージによる株式の希薄化(約16%の株式追加)を考慮すると、株価は1株あたり2200ドルほどに下がる可能性もあります。それでも2200ドルという水準は、テスラ投資家にとって十分に魅力的な上昇率と言えるでしょう。
まとめ
テスラ取締役会長のロビン・デンホルム氏は、今回の新報酬プランについて「イーロン・マスクをやる気にさせ、テスラのために成果を上げることに集中させるために設計されている」「これは月を目指すことであり、会社全体が成果を上げることに集中することだ」と述べています。
確かに、時価総額8.5兆ドルを達成し、自動運転車やオプティマスを100万台規模で運用するという目標は、まさに「月を目指す」ほどの難題です。
しかし、イーロンはスぺースXで月よりも遥か先の「火星を目指す」人物であり、これまでも数々の「不可能」を可能にしてきました。そう考えると、これらの達成難易度が高い目標も、たとえ時間がかかっても実現させてしまうのではないでしょうか。
まずは、私たちテスラ株主がこの新報酬プランを承認することが第一歩です。これによって、イーロンはテスラでのAI事業推進と企業価値向上に、これまで以上に全力を注いでくれるでしょう。
テスラ投資家である皆さんは、今年の株主総会でイーロンのテスラへのコミットメントを後押しするために、賛成票を投じることを検討してみてはいかがでしょうか。
この新たな報酬プランは、テスラの未来、そしてテスラ投資家の未来を大きく左右する重要な転換点となるでしょう。引き続き、テスラの動向に注目していきましょう。

文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約3万人。 X(Twitter)フォロワー数:約1万人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。


