文藝春秋は、世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』の評伝作家ウォルター・アイザックソンによる決定的評伝『イーロン・マスク』(上・下)を2023年9月12日に発売します。
作者のウォルター・アイザックソンは、教授、元『タイム』誌編集長、CNNの会長兼CEO、ワシントンD.Cに拠点を置く超党派の政策研究機関、アスペン研究所の理事長兼CEOなどを歴任した有名なジャーナリスト、伝記作家です。著書に、同名映画の原案ともなった『スティーブ・ジョブズ(Ⅰ・Ⅱ)』(講談社)、『レオナルド・ダ・ヴィンチ(上・下)』(文藝春秋)、『アインシュタイン その生涯と宇宙(上・下)』(武田ランダムハウス・ジャパン)、『キッシンジャー 世界をデザインした男(上・下)』(日本放送出版協会)、「ベンジャミン・フランクリン」(2003年)などがあります。
『イーロン・マスク』の評伝は、9月12日に35カ国で世界同時発売されます。(ウォルター・アイザックソン本人がTwitterで公表した発売国のリストには、EV先進国の北欧の国々や、アラブ諸国、イーロン・マスクが、衛星通信機スターリンクを寄付した、ウクライナやロシアなども含まれており、世界の人々のイーロン・マスクやテスラへの興味が伺えます。
以下、2023年5月19日の文藝春秋のリリースより。
世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』の評伝作家だからこそ、描くことができた本書。
いま、世界で最も魅力的であり、かつ、世界で最も論議の的となっているイノベーターの赤裸々な等身大ストーリー。彼は、ルールにとらわれないビジョナリーで、世界を電気自動車、民間宇宙開発、人工知能の時代へと導いた。
そして、つい先日ツイッターを買収したばかりだ
イーロン・マスクは、南アフリカにいた子ども時代、よくいじめられていた。よってたかってコンクリートの階段に押さえつけられて頭を蹴られ、顔が腫れ上がってしまったこともある。このときは1週間も入院した。
だがそれほどの傷も、父エロール・マスクから受けた心の傷に比べればたいしたことはない。エンジニアの父親は身勝手な空想におぼれる性悪で、まっとうとは言いがたい。いまなおイーロンにとって頭痛の種だ。このけんかのときも、病院から戻ったイーロンを1時間も立たせ、大ばかだ、ろくでなしだとさんざどやしつけたという。
この父親の影響から、マスクは逃れられずにいる。そして、たくましいのに傷つきやすく、子どものような言動をくり返す男に成長し、ふつうでは考えられないほどのリスクを平気で取ったり、波乱を求めてしまったりするようになった。さらには、地球を救い、宇宙を旅する種に我々人類を進化させようと壮大なミッションまでをも抱き、冷淡だと言われたり、ときには破滅的であったりする常軌を逸した集中力でそのミッションに邁進するようになった。
スペースXが31回もロケットを軌道まで打ち上げ、テスラが100万台も売れ、自身も世界一の金持ちになった年が終わり2022年が始まったとき、マスクは、騒動をつい引き起こしてしまう自身の性格をなんとかしたいと語った。
「危機対応モードをなんとかしないといけません。14年もずっと危機対応モードですからね。いや、生まれてこのかたほぼずっとと言ってもいいかもしれません」
これは悩みの吐露であって、新年の誓いではない。こう言うはしから、世界一の遊び場、ツイッターの株をひそかに買い集めていたのだから。暗いところに入ると、昔、遊び場でいじめられたことを思いだす——そんなマスクに、遊び場を我が物とするチャンスが巡ってきたわけだ。
2年の長きにわたり、アイザックソンは影のようにマスクと行動を共にした。打ち合わせに同席し、工場を一緒に歩き回った。また、彼自身から何時間も話を聞いたし、その家族、友だち、仕事仲間、さらには敵対する人々からもずいぶんと話を聞いた。そして、驚くような勝利と混乱に満ちたストーリー、いままで語られたことのないストーリーを描き出すことに成功した。本書は、深遠なる疑問に正面から取り組むものだとも言える。すなわち、マスクと同じように悪魔に突き動かされなければ、イノベーションや進歩を実現することはできないのか、という問いである。
(訳 井口耕二)
▼予約開始▼
『イーロン・マスク』
ウォルター・アイザックソン/著 井口耕二/訳
※本日(5月19日)以降、紙書籍版・電子書籍版の予約を開始します。
Kindle版は9月13日発売に変更(発売詳細はamazon等をご確認ください)
・上(Kindle版) https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5QMW1JY/
・下(Kindle版) https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5QMX279/