by テスラ365日 @Tesla365days
2023年9月13日、いよいよイーロン・マスクの評伝本が発売されます。かつてスティーブ・ジョブズの評伝本も手がけたウォルター・アイザックソンの著作ということもあって、大変楽しみです。
これ以外にも、イーロン・マスクに関する評伝はいくつかありますが、イーロンに関するTVシリーズがリリースされているのはご存知ですか? Huluオリジナルの「イーロン・マスク 夢と野望」という全3エピソードからなるミニシリーズがそれです。これがなかなか良くできているので、各エピソードについて簡単にご紹介しましょう。
「イーロン・マスク 夢と野望」 全3 エピソード紹介
「イーロン・マスク 夢と野望」
シーズン1 エピソード1
幼少期から2008年頃までのイーロン・マスクの業績が紹介されます。母メイ・マスクがインタビューに答え、3歳の頃からイーロンのことを天才だと思っていたことや、十代の頃は友だちがいなくて部屋にこもって本ばかり読んでいたというエピソードが語られます。アメリカに渡ったイーロンは、1995年にZip2を創業し、その会社の売却益で100万ドルのスーパーカー、マクラーレンを購入したエピソードには、最初の妻ジャスティンも登場しています。
このエピソードで一番面白いのは、航空宇宙エンジニアのジム・カントレルの話でしょう。イーロンが火星を目指してロケットを打ち上げるにあたり、ロシアにロケット買付に行く旅に一緒に行った時の話を披露しています。ロシアとの交渉は破談に終わり、帰って来ると、カントレルはスペースXの最初の社員になりました。
また、テスラのパートも貴重です。ロードスターのお披露目イベントのフッテージを見ることができます。当時のカリフォルニア知事アーノルド・シュワルツェネッガーがロードスターを痛く気に入っている様子や、そのロードスターがなかなか納車できずに四苦八苦しているテスラの様子が赤裸々に描かれています。この時代の映像はなかなか見ることができないので、興味津々。
しかし、クライマックスは、何といってもクエゼリン環礁での4回目のファルコン・ロケットの打ち上げでしょう。過去3回の打ち上げ失敗の映像も含め、ちゃんと記録が残っているのはこのTVシリーズで初めて知りました。今日に到るスペースXの躍進の端緒、「失敗」→「失敗」→「失敗」→「成功」の歩みについてはもちろん知っていましたが、こうして映像を目撃すると、胸が熱くなりますよね。テレビの取材でイーロンも涙ぐんでましたしね。
「イーロン・マスク 夢と野望」
シーズン1 エピソード2
2009年、イーロン・マスクは全財産をスペースXとテスラにつぎ込んだあげく、最初の妻との離婚調停にも臨まなくてはならないという苦境に見舞われていました。そして2010年、さらなる資金調達の必要に迫られたイーロンは、テスラのIPOという大ギャンブルを仕掛けます。自動車メーカーとしては、フォード以来50年ぶりのIPOです。
テスラのIPOは大成功し、スペースXはNASAと16億ドルの契約を締結、イーロン・マスクとタルラ・ライリーは、オバマ大統領の就任式に招待されるなど、上昇気流に乗って快進撃を始めます。かつてアップルストアの責任者を務め、その後テスラに合流したジョージ・ブランケンシップや、スペースXの副社長ハンス・ケーニヒスマンらが、インタビューに答えて当時の様子をふり返ります。
一連の出演者の中でも、独特の存在感を放っているのがドリー・シン。2008年から2013年まで、スペースXの人事部長を務めた女性です。カメラに向かって、イーロン・マスクがいかに才能豊かであるかについて語った後、インタビュアーから「でも、彼はアインシュタインじゃないですよね?」と問われ、「イーロンは、アインシュタインより賢いわよ」とキッパリ言い放つ表情が素敵すぎます。
この時期、テスラはモデルSの量産に相当な苦労をしていましたが、その模様を語るジョージ・ブランケンシップの姿も非常にエモーショナルです。ノリノリでモデルSの納車イベントを仕切る様子、辛かった生産の現場を思い出して涙ぐむ様子、とても感情豊かなブランケンシップの表情が記憶に残ります。彼は、スティーブ・ジョブズとイーロン・マスクの両方に仕えた数少ない人物のひとりです。
「イーロン・マスク 夢と野望」
シーズン1 エピソード3
2016年、トランプ大統領が就任しますが、この頃にはイーロン・マスクは大物になっていて、Twitterのフォロワー数も数百万人に膨れ上がっていました。ネバダ州にギガファクトリーも完成し、そのローンチパーティーの模様も紹介されていますが、「I love Elon!」「We believe!」などと叫ぶ人々が大勢いて、まさにイーロン信者の集会の様相です。
シーズンを通じて登場する元妻のタルラ・ライリーの語りも、まさにイーロン信者のそれでしょう。2010年に結婚し、一度離婚しましたが再婚して16年にまた離婚。それでも続く、イーロンに対する愛と信頼にはゆるぎないものを感じます。
しかしイーロンは、Twitterで物議を醸すツイートを頻発するようになりました。ビジネスインサイダーのジャーナリストが登場し、テスラの工場の廃棄物が不適切に処理されていない問題を記事にしたところ、イーロンがTwitterで彼女のことを攻撃し始めた事実を語っています。「彼のフォロワーも彼に追随して攻撃してくるのよ」という信者の悪癖も。
2018年には、タイの洞窟で12人の少年が閉じ込められた事件をめぐり、現地で救助にあたった英国人ダイバーとTwitterでやり合いました。これは訴訟騒ぎにまでなっています。
YouTubeにおけるマリファナ吸引事件とか、テスラを非公開化するとツイートした事件とか、イーロンがTwitterで巻き起こす騒動について多くの尺が費やされていますが、そのイーロンがTwitterの買収にいたる件までは描かれていませんでした。
いずれにせよ、2022年の前半あたりまでイーロン・マスクを追いかけたシリーズです。スターシップの打ち上げも見ることができます。2029年に有人の火星飛行を行うと、イーロンが述べたのが22年の3月なので(その前の目標は2026年)、そこら辺が終点。これまで製作されたイーロンの評伝映像としては、最新のものであるということで間違いありません。イーロン信者なら、鑑賞はマストですね。日本では、Huluでのみ視聴可能です。
なお、「イーロン・マスク」文藝春秋・刊は9月13日上下巻同時発売です。Kindle版もあります。