特集&エッセイ

ウォーレン・バフェット氏がテスラへ投資する日は来るのか? (後編)

 電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第6回

 by じんべい

 投資の神様ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが、2024年1〜3月期に米アップル株を13%程度売却したことが判明。これに対してイーロン・マスクは、バフェット氏はテスラ株を買うべきだと主張しました。はたしてバフェット氏が今後テスラに投資する可能性はどれほどあるのでしょうか? 

 前後編に分けてお届けしている「ウォーレン・バフェット氏がテスラへ投資する日は来るのか?」。前編ではバフェット氏が、現在テスラ株に投資をしていない理由を分析しましたが、この後編ではバフェット流の投資法を紐解きながら、バフェット氏によって株が買われる可能性とタイミングを探っていきます。

 テスラとウォーレン・バフェット氏の投資手法

 ウォーレンバフェットの投資スタイルはバリュー株投資と呼ばれる投資法。バフェット氏がバリュー株投資を実践する上で大事にしている鉄則は次の3つと考えられています。

 ①独自性があり自分が理解できる銘柄だけを買う

 ②安い時に株を購入する

 ③明確で有望な収益見通しがある企業に投資する

 この3つです。

 残念ながら、現在のテスラがバフェット氏のバリュー株投資条件を満たしているとは言えません。順にその理由を解説したいと思います。

 バフェット流投資術 ①「独自性があり自分が理解できる株式だけを買う」

 まず、①の独自性があり自分が理解できる株式だけを買うに関してですが、先述したようにバフェット氏は企業の競争優位性や独自性を重視して投資をしています。また、バフェット氏は基本的には自分が理解できる銘柄だけに投資をしています。バンク・オブ・アメリカやアメリカンエキスプレス、クラフト・ハインツなどは古くからある人々の生活に密着した企業であり、IT製品とは違い、高齢のバフェット氏もその製品サービスを熟知した企業と言えます。

 一方で、自動車はコモデティティ製品で、独自性を築くのは難しいと考えているため、自動車銘柄への投資は避ける傾向にあります。唯一の例外は、中国の自動車メーカーBYDで、バークシャーは2008年9月からBYDに投資を始めています。ただBYDへの投資きっかけはバフェット氏というよりも腹心のマンガー氏による提案からとされています。

 当時2008年ごろ、マンガー氏がBYDの事業内容と今後中国政府が新エネルギー産業を前進させる意向であることを察し、早い段階から投資をしたと言われています。一方、テスラはその当時、財政面や商品開発で苦しんでいたためにバークシャーの投資対象には入ってなかったと考えられます。

出典:byd.co.jp

 またBYDは最近まで、ビジネスの核となる事業はエネルギーやバッテリー事業でした。2020年時点で、BYD の携帯電話部品および組立サービスの収益は40%を占め、二次充電バッテリーおよび太陽光発電事業は8%を占めていました。ですので、バークシャーがBYDに投資を決めた当時は電気自動車メーカーへの投資というよりも、エネルギー会社への投資といった側面が強かったと思います。

 もしバフェット氏がテスラに投資するとしたら、先述したようにテスラの自動運転システムが社会に普及し、バフェット氏もロボタクシーサービスを利用するような時代になった時かもしれません。その時には、テスラはバフェット氏の投資判断基準の一つをクリアしていることでしょう。

 バフェット流投資術②「安い時に株を購入する」

 バフェット氏は、投資価値のある企業の株価が安くなるのを待ち、十分安くなったところで購入。その価値が高まるまで辛抱強く持ち続けます。いわゆる、バリュー株投資を実践しています。株が割安かどうかを判断するのに使用されるのが、PERという指標です。米国を代表する大型企業500社のPERは平均18とされています。一方、テスラの現在のPERは50近くもあり、一般的には高いとされる水準です。ただ一方で、バフェット氏はそれまで投資をしてこなかったハイテク株のアップルやアメリカ大手ゲーム会社のアクティビジョン・ブリザードの株式を取得した経緯があります。また、スノーフレークというデータクラウド会社へも投資しています。

 出典:YCHARTS

 ですので一概にPERが高いからといって、バークシャーは投資候補リストから除外する訳ではなく、銘柄をしっかりと精査した上で投資可否を決断しているのでしょう。またPERが高い成長銘柄への投資に関しては、バフェット氏の判断というよりもバークシャーの他の経営陣の提案を受け入れる形で行われているのだと思います。

 バフェット流投資術③「明確で有望な収益見通しがある企業に投資する」

 バフェット氏は過去に株について考えを変えたことがあります。それはアップル株に対してです。バフェット氏はアップルという企業の市場における競争力学が不確実だったため、当初は投資しませんでした。しかし途中でアップルに対する考えを改め、「スマートフォンの技術は分からないが、iPhoneが生活のベースにあり、新型が出たら買い替えるという消費行動は分かる」と言ってアップル株を買いました。現在、アップルはバークシャーのポートフォリオの中で最大の保有銘柄となっています。

 したがってテスラに関しても、もしバフェット氏がEVやテスラの将来の主軸ビジネスとなることが期待される自動運転市場の競争力学が明確で楽観的な見通しをもたらすと確信できれば、テスラへの投資を決断する可能性があります。

 ウォーレン・バフェット氏がテスラへ投資する日は来るのか?

 米投資機関アーク社は、2030年までに自動運転プラットフォームを提供する企業の価値は28兆ドルに達すると推測しています。もしテスラが自動運転・ロボタクシー市場において二桁を超えるマーケットシェアを獲得できれば、その収益は計り知れないものとなります。そしてその分野において、バフェット氏も認めるモート構築に成功していれば、バークシャーも有り余る大量のキャッシュをテスラ株投資にあてる可能性は十分にあります。

 出典:ARK Invest_Presentation_Big Ideas 2023_FINA

 イーロン・マスクが、Xへの投稿でバフェット氏の投資先に関して「彼はテスラでポジションを取るべきだ。それは明らかな一手だ」と発言した背景には、このテスラが現在注力している自動運転技術を含むAI / ロボティクス事業には無限の収益機会があり、テスラは巨額の先行投資により、有利な立場にあることを確信してのことでしょう。

 将来ウォーレン・バフェット氏がテスラへ投資する日が来るのか。それが3年後なのか、5年後なのか、または10年後なのか分かりませんが、少なくともその日が近づいていることは間違いないと思います。それだけテスラは過去数年で大きくEVビジネスを成長させました。そしてこれからは自動運転とAI / ロボティクス分野への事業拡大を加速させていきます。近い将来、テスラがウォーレン・バフェット氏の投資銘柄リストに載る日も夢ではないと思います。

 メインカット写真提供:Tesla, Inc.

 ウォーレン・バフェット氏がテスラへ投資する日は来るのか? (前編)

文・じんべい

 日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約1万3000人。 X(Twitter)フォロワー数:約7000人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

 じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル

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