電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第10回
by じんべい
テスラ株は2024年第2四半期決算説明会以降にどうして下落した?
日本時間24日の早朝、テスラの2024年第2四半期決算が発表されました。その後に開催された決算説明会には、イーロン・マスク氏をはじめとする同社の幹部たちが出席し、投資家からの様々な質問に答えました。これら2つのイベントを終えた翌日、テスラの株価は一日で12%以上も下落しました。
今回の決算内容は市場の期待に完全には応えられませんでしたが、2桁を超える株価の下落を引き起こすほどの悪材料ではありませんでした。このことから、決算説明会でのイーロン・マスク氏らの発言がテスラ株の急落を引き起こした可能性が高いと考えられます。
今回の記事では、テスラの最新の決算を振り返りながら、さらには決算説明会で何が起こったのか、どんな発表があったのか見ていきたいと思います。
テスラ第2四半期決算の結果と総評
まず、今回のテスラの決算内容を簡単に振り返っていきたいと思います。アナリストの事前予想では売上高は243.4億ドルでしたが、実際の結果は255.0億ドルとなり、見事に予想を上回りました。これは良好な結果といえます。
しかし、問題となったのはEPS(1株当たり利益)です。予想の0.62ドルに対して、実際の結果は0.52ドルと、残念ながら大きく下回ってしまいましたね。私自身は0.70ドル以上を期待していたのですが、その水準には全く届きませんでした。
最初に決算資料を目にした時、「えっ、こんなに低いの!?」と一瞬目を疑うほどでした。しかし、その原因を詳しく調べてみると、納得できる理由があることがわかり、決して落胆する必要がないことが判明しました。
テスラ株価が急落した3つの原因
では、どうして決算発表の翌日に株価は急落したのでしょう。ここでは、筆者が考える3つの原因について解説します。
株価急落の原因①:EPSが市場予想に達しなかった
今回のテスラの決算資料の損益計算書の一部に、「リストラおよびその他」として622百万ドル(6億2200万ドル)の費用が計上されています。これは企業が事業再編やリストラを実施する際に発生する特定の費用を指します。テスラは今年4月に全社員の10%を解雇する大規模な人員削減を行いましたが、その巨額費用が今回計上されたのです。
このリストラ費用によって、EPSが0.14ドル押し下げられたと考えられます。もし人員削減に伴う費用がなければ、テスラのEPSは0.66ドルとなり、アナリスト予想を上回っていたことになります。
したがって、私はEPSが予想を下回ったからといって、テスラの今回の決算結果に対して悲観的になる必要はないと考えています。次回の第3四半期の決算では、テスラはすでに人員削減を完了しているため、この一時的なリストラ費用は発生しません。そのため、来期はEPSが0.6ドル以上、順調に進めば0.7ドルまで改善することを期待しています。
株価急落の原因②:ロボタクシーお披露目イベントの延期が決定
決算発表後の説明会で、イーロン・マスク氏は8月8日に予定されていたロボタクシーお披露目イベントを10月10日に延期すると発表しました。これが決算発表後のテスラ株急落に拍車をかけた可能性が高いです。投資家たちは、テスラの将来の大きな収益源となるであろうロボタクシービジネスの発表や、ロボタクシー専用の新モデル「サイバーキャブ」のお披露目に大きな期待を寄せていました。これが裏切られた形となりました。
説明会でマスク氏は、イベント延期の理由として「重要な改良を行うため」と説明し、「イベントではその他の内容も公開する予定だ」と付け加えました。また、「ロボタクシーの利用は早ければ年内開始、遅くとも来年にはスタートすると思う」とも述べました。
2カ月間延期となったロボタクシーのお披露目ですが、テスラはこの5年ぶりとなる新モデルの発表(前回の一般向け新モデル発表は2019年のサイバートラック)に向けて、おそらく画期的なテクノロジーを採用し、世間に衝撃を与える斬新なデザインに取り組んでいるのでしょう。マスク氏のことですから妥協は許さず、これまで世界が見たことがない機能やデザインをロボタクシー車に組み込むようテスラの担当チームに働きかけているはずです。そのため、10月10日のロボタクシー発表イベントにはより高い期待が寄せられています。
また、テスラの完全自動運転システムFSDについても新情報がありました。マスク氏は、2024年末までにヨーロッパや中国などの他の市場でFSDを発売するために規制当局に働きかけており、その承認を受ける可能性が高いと述べました。いよいよ北米以外でもFSDが利用可能となりそうです。このリストに日本が含まれているかどうかは不明ですが、年内か遅くとも来年早々に日本でもFSD利用が開始されれば大きな話題となるでしょう。日本のテスラオーナーの方々は、一日でも早くFSDを利用したいと願っていると思われるので、日本でのFSD承認を期待したいですね。
株価急落の原因③:新モデル発表などの目新しい情報がなかった
投資家は決算説明会でイーロン・マスク氏から新モデルに関する新たな情報が出てくるのではないかと期待していましたが、残念ながら目新しい情報はありませんでした。
マスク氏は「次世代モデルは2025年前半に導入予定だ。新型ロードスターはエンジニアリングの大部分は完了しているが、まだアップグレードしたい点がいくつかある。来年には生産を開始する予定だ」と述べましたが、「詳しいことは新モデルを発表するイベントで説明する。今回は決算発表会なので、コメントは避けたい」として、投資家からの新モデルに関する質問への回答を避けました。
これが投資家の失望を招き、新しい情報がなかったことで、ここ数ヶ月で急騰したテスラ株を売って利益確定しようとする動きにつながったと考えられます。
テスラ株価の急落には、以上の3つの要因が関係していると私は考えています。
今後のテスラ投資成功のカギとは?
今回の決算説明会では、マスク氏が元気のないトーンで終始話をしていたのが印象的でした。いつもは明るく、時折冗談を交えて場を和ませるテスラのCEOが、今回は様子が異なっていました。これは私の推測ですが、マスク氏の心境としては、「なぜ皆テスラのエネルギー事業や自動運転の価値を理解してくれないのか。短期的な目線ではなく、長期的な視点でテスラのビジネスを見て、投資してほしい」と感じているのではないでしょうか。
多くの投資家は、テスラがEVメーカーからエネルギー&AIロボティクスカンパニーへと移行中であることをまだ十分に認識していません。テスラは将来、自動運転とロボタクシー事業、そして現在急拡大を見せているエネルギー事業によって、企業価値がアップルやマイクロソフトといった時価総額トップ企業を超える可能性があります。テスラ投資の成功のカギは、テスラが今後自動運転を成功させ、ヒューマノイドロボットを開発し、社会を変革すると信じられるかどうかにあると思います。
メインカット出典:Tesla 公式Xアカウント
文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約1万5000人。 X(Twitter)フォロワー数:約7800人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。