電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第17回
by じんべい
こんにちは、じんべいです。テスラ株の上昇が止まりませんね!
テスラは、この記事を執筆している11月12日時点で、過去1カ月で60%を超える大幅な上昇を見せ、株価は350ドルを超えました。これは、時価総額が数千億ドル規模の大型株としては異例のことと言えます。
現時点でテスラの時価総額は1.1兆ドルを超え、時価総額別の大企業ランキングでトップ10入りを果たしました。現在、テスラは世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCと、投資の神様ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイの両企業を抜き、その成長力を示しています。
短期間で急騰を遂げたテスラ株ですが、この上昇が今後も続くのか、そして年内に史上最高値の407ドルを超える日が訪れるのか。本記事では、テスラ投資家の皆さんが最も気になっているであろうこの疑問に迫っていきたいと思います。
何がテスラ株を押し上げているのか?
テスラ株の急上昇の背景には、皆さんもご存知の通り、先日の米大統領選挙で同社CEOイーロン・マスク氏が支持するドナルド・トランプ氏が、民主党の大統領候補カマラ・ハリス氏を大差で破って勝利したことが影響しています。
主流メディアの事前予想では、今回の選挙は接戦になると報じられていましたが、ふたを開けてみるとトランプ氏の圧勝という結果に。これがマーケットに大きな衝撃を与えたことは明らかです。
米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したことを受け、6日の米株式市場は大幅に上昇しました。ダウ工業株平均は1334ドル(3.2%)高で取引を開始し、S&P500は2%、ハイテク株が中心のナスダック総合指数は1.8%の上昇となりました。
同日のテスラ株価はなんと14%を超える急騰を見せ、出来高も通常の倍を超える1.6億株を記録しました。トランプ氏勝利以降、テスラの出来高は毎日1億株から2億株の間で推移しており、現在マーケットで最も注目されている銘柄の一つであることを示しています。
では、なぜテスラがここまで市場から期待され、買われているのでしょうか? その理由は、大きく三つに分けられると考えられます。
一つ目の理由として、次期米大統領となるトランプ氏が掲げる政策の一つである規制緩和が、テスラに大きな恩恵をもたらすと期待されていることが挙げられます。テスラは現在、EV販売を主力ビジネスとしていますが、マーケットの期待は、将来的に自動運転やロボタクシーによる配車サービスが実現し、テスラが莫大な収益を上げることにあります。
テスラは昨年、エンド・ツー・エンドのAIトレーニングによる自動運転システムへの移行を行い、これがテスラの完全自動運転システム(FSD)に大きな進化をもたらしました。
また今年10月10日には、完全自動運転システムを搭載したロボタクシー「サイバーキャブ」を発表し、映画スタジオの敷地内でという条件でしたが、ハンドルやペダルがなくても、ドライバーなしで乗客を運べることを実証しました。
テスラの自動運転システムは技術的には確実に進歩していますが、これまでは大きな障害がありました。現バイデン政権下では、テスラを含むイーロン・マスク氏が経営する企業が冷遇され、規制や訴訟などの問題に直面していたのです。
しかし、トランプ政権が発足すれば、これらが大きく改善されると期待されています。特に、テスラの将来の基幹ビジネスとされる自動運転の当局承認において、テスラが優遇される可能性が高いと見られています。
二つ目の株価急騰の理由としては、次期政権でイーロン・マスク氏が要職に起用される可能性が取り沙汰されており、トランプ氏支援への見返り期待が高まっていることが挙げられます。この期待が、株価上昇圧力につながっていると考えられます。
米ニュースによると、イーロン・マスク氏はトランプ氏が勝利して以来、ほぼ毎日フロリダ州パームビーチに滞在し、時にはパティオでトランプ氏と食事をしながら人事決定について助言をしたり、特定の役職に対する自身の意向を示したりしていると報じられています。
イーロン・マスク氏が新政権の閣僚人事に関与することで、テスラに対する規制緩和や補助金の優遇措置が進み、事業拡大に追い風となることが予想されます。
三つ目の株価上昇要因として、トランプ氏の公約であるEV購入に対する連邦税控除の廃止や、関税引き上げがテスラに有利に働く可能性が挙げられます。
トランプ氏は選挙キャンペーンを通じて、バイデン政権によるEVの普及政策を非難し、EV支援策を終わらせると約束してきました。EV支援策の縮小または廃止は、テスラにとって販売縮小につながるのではないかという懸念もあります。7500ドルのEVクレジットが、これまでテスラの米国内での販売を支えてきたのは間違いないからです。
しかし、EV支援策の縮小はテスラよりもGMやフォードといった競合他社に大きな影響を及ぼすと見られます。もしテスラがEV市場で優位な立場を維持できるとすれば、EV支援策の縮小がかえってテスラに有利に働く可能性が高いです。
さらに、トランプ氏が掲げる高関税政策が実行されれば、中国から輸入されるEVの競争力が米国内で低下するでしょう。また、米自動車大手のビッグスリーはメキシコで安価に自動車を生産し、その多くを米国に輸入しているため、関税引き上げは大きな打撃となる可能性があります。
一方、テスラは米国内で販売するEVのほとんどを国内で生産しているため、高関税政策の影響を最小限に抑えられます。さらに、中国製EVの価格競争力も弱まるため、トランプ政権の産業政策はテスラにとってプラスとなる可能性が高いと考えられます。
年内に史上最高値407ドルを超える可能性は?
上昇を続けるテスラ株はテクニカル指標的には割高となっています。
テスラのPER(株価収益率)は、現在95と年初来の最も高い水準に達しており、株価の割高・割安を判断する指標として注目されています。一般的に、PERが20倍を超えると割高と見なされることが多く、成長率が高い企業ではPERが50倍~100倍となることもありますが、100倍を超えると投資リスクが高まるため注意が必要と言われています。
また、買われ過ぎや売られ過ぎの水準を判断するテクニカル指標としてRSI(相対力指数)がありますが、現在のテスラのRSIは80を超え、こちらも買われ過ぎの水準にあります。最近、RSIが80付近まで上昇したのは7月上旬と9月末の2回で、いずれも高水準の後に株価が下落しています。
つまり、テクニカル指標上、テスラ株は割高で買われ過ぎの水準にあり、いつ下落してもおかしくない状況と言えるでしょう。
ただし、PERに関して言えば、現在のテスラのPERは、2021年のバブル的な相場と比較すると低めです(現在の大型ITハイテク企業と比べるとかなり高いですが……)。当時、テスラは黒字化したばかりで、現在ほどの利益を出していなかったため、PERが1000を超えていました。そのため、今後市場がさらに過熱しテスラの株価が上昇を続ければ、PERが100、120、140とさらに上昇する可能性も考えられます。
さらに、今回はイーロン・マスク氏がトランプ政権の中枢入りする可能性という特殊な要因が絡んでいるため、このプラス要因がどこまで相場を牽引するかは未知数です。トランプ氏とイーロン・マスク氏が敏腕ビジネスマンとしての手腕を発揮し、規制緩和と経済拡大を積極的に推し進めていけば、その活躍に比例してテスラへの期待が高まり、業績に関係なく株価が上昇し続けるシナリオも考えられるでしょう。
以上を踏まえると、テスラ株が年内に史上最高値の407ドルに到達する可能性は十分ありますが、テクニカル指標上はいつ下落してもおかしくない状況です。そのため、今後テスラに投資する場合は、それなりのリスクを取る覚悟が必要と言えます。
なお、本記事はあくまでテスラ株に関する個人の考察であり、テスラに投資される際は、ご自身の判断と責任でお願いいたします。
文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約1万9000人。 X(Twitter)フォロワー数:約8000人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。