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トランプ大統領、EV支援策を撤回へ 充電インフラ予算の即時停止を指示

 トランプ米大統領は2025年1月20日、バイデン前政権が推進してきた電気自動車(EV)促進策を廃止する大統領令「米国エネルギーの解放(Unleashing American Energy)」に署名しました。2030年までに新車販売の50%をEVなどとする目標が撤回されるほか、充電インフラ整備のための予算配分が即時停止となります。

 大統領令では「EVへの不公平な補助金」と「市場を歪める政府の介入」を見直す方針が示されています。具体的には「EVの購入を事実上義務付けている不公平な補助金や、その他の誤った政府による市場介入」を排除する考えが明記されました。

 また、インフラ投資・雇用法(Infrastructure Investment and Jobs Act)および2022年インフレ削減法(Inflation Reduction Act)に基づく予算配分について、全面的な見直しが指示されています。これには、全米EV充電インフラ整備計画(NEVI)や充電・燃料補給インフラ助成プログラムなど、充電設備への支援策が含まれます。

バイデン政権下では、稼働していないEV充電器の修理や交換も促進された
バイデン政権下では、稼働していないEV充電器の修理や交換も促進された (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

 大統領令では、エネルギー政策に関しても、石油、天然ガス、石炭、水力、バイオ燃料、重要鉱物、原子力エネルギーの開発や利用を妨げる規制の特定を各機関に指示。一方で太陽光発電については言及を避けています。

 現時点での実質的な影響は限定的と見られています。「EVの義務化」は実際には努力目標に過ぎず、CARBによるカリフォルニア州の独自規制※についても、トランプ前政権時代の廃止の試みは不調に終わっています。また、バイデン政権下で既に多くの充電インフラ予算が執行済みであることも指摘されています。

※CARBは、California Air Resources Board(カリフォルニア州大気資源局)のことで、米国で唯一、独自の自動車排出ガス規制を設定する申請ができる権限を持つ機関。同局は2035年までに州内の新車販売を全てゼロエミッション車にする目標を掲げ、自動車メーカーに対してEVなどの一定割合での販売を義務付けています。米国最大の自動車市場であるカリフォルニア州の基準は、ニューヨーク州などでも採用され、実質的に米国の環境規制を主導しています。

交通量が多いロサンゼルスのダウンタウン。長年大気汚染に悩まされてきたカリフォルニア州は、現在、米国におけるゼロエミッション車への移行を主導(iStock.com/choness)

 ただし、共和党が過半数を握る議会の動向次第では、今後さらなる規制緩和や支援策の見直しが進む可能性があります。特に、現行のEV購入時の連邦税額控除制度については、トランプ大統領が選挙期間中から見直しを主張してきた経緯があり、その行方が注目されます。

 自動車業界への影響も懸念されています。米国市場でEVを展開するメーカーには逆風となる一方、トヨタ自動車やホンダなどハイブリッド車技術に強みを持つメーカーには、EV開発の時間的余裕が生まれる可能性があります。

 また、両社は既に北米でEV用電池工場の建設を決定しており、長期的な電動化戦略に大きな変更はないとの見方が強まっています。グローバル市場、特に中国やEUでは引き続き強力なEV促進策が維持される見通しで、世界的な電動化の流れは継続するものとみられています。

メイン画像:ホワイトハウス公式サイトより

トランプ大統領の大統領令は、以下のホワイトハウス公式サイトで全文を読むことができます。

「米国エネルギーの解放(Unleashing American Energy)」

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