CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的専門機関のJ.D.パワーは、「2025年米国EV検討意向調査」の結果を5月15日に発表しました。
同調査は、12カ月以内に新車購入(リースを含む)を検討している消費者8164人を対象に、2025年1月から4月にかけてインターネット調査として実施されました。
将来の電気自動車(EV)市場への関心に暗雲が立ち込め、また、自動車業界全体に影響を与えかねない経済的な逆風が吹くにもかかわらず、EVに対する消費者需要は安定していることが明らかになりました。
調査によると、新車購入検討者の回答は、EVを購入する可能性が「非常に高い」が24%、「ある程度検討している」が35%となっており、いずれも2024年と同水準でした。
EV購入希望者は複数ブランドを横断的に比較
EVの購入意向が「非常に高い」層は平均2.9のブランドを比較検討し、「ある程度検討している」層は平均2.8ブランドを比較していることが分かりました。同様の傾向は、J.D.パワーの「2024年米国販売満足度調査」でも見られ、EV購入者は平均3.0の異なるブランドを比較しているのに対し、ガソリン車購入者は平均2.5ブランドとなっています。
そして、テスラ以外のEVへの関心も高まっています。同調査によると、テスラのモデルY に関心のある購入者の間で比較検討される自動車ブランド上位5社は、ホンダ、フォード、BMW、トヨタ、キャデラックの順となっています。


「これまで電気自動車を扱っていなかったメーカーが、今ではEV製品でポートフォリオを充実させており、消費者はそうした他社の製品を検討している」とグルーバー氏はヤフー・ファイナンスのインタビューで語りました。
ホンダの人気EV「プロローグ」、フォードの「マスタング・マッハE」、そしてBMWの「iX」「i4」「i5」といった製品が人気を集めています。キャデラックの「リリック」は、GMのEVの中で最も売れている車種です。
EVの選択肢は年々増えており、この傾向は自動車メーカーにとって、自社ブランド以外の顧客を引き込むチャンスとなっています。同調査によると、EV購入検討者は、マスマーケットブランドとプレミアムブランドのモデルを同様に検討していることも示されており、これまで検討していなかったブランドやモデルで消費者の関心を引き付けるチャンスが存在することも明らかになりました。


価格と維持費への懸念は減少する一方、充電への懸念は依然として大きい
EVを敬遠する最大の理由は充電インフラの不足であり、新車購入検討者の52%がこれを理由にEVを検討しないとしています。充電に対する懸念が続いていることに加え、EVへの関心が全体的に停滞していることは、これらの問題に関する消費者への啓発活動が進んでいないことを示しています。
一方で、購入価格への懸念は前年比4ポイント減の43%、維持費への懸念は前年比2ポイント減の33%となり、改善傾向が見られました。
J.D.パワーのEV部門エグゼクティブディレクター、ブレント・グルーバー氏は「市場の変動にもかかわらず、EVは消費者の確かな選択肢となっています。今後、更なる消費者の関心向上には、各メーカーが消費者のニーズに合った製品を手頃な価格で提供することが必要です。また、消費者のEV保有への懸念を軽減することも重要です。例えば、公共充電に関する懸念は、実際にEVを所有してみるとそれほど問題にならないことが多いのです」とコメントしています。

若年層と高所得層のEVへの関心は高いが、両者はあまり重ならない
25~49歳の回答者のうち、年収10万ドル以上の割合はわずか17%にとどまりました。グルーバー氏は「若年層はEVに最も関心が高いものの経済的に購入が難しい傾向にあります。一方、年配の消費者は経済的な余裕があるものの、関心は低い傾向にあります」と分析しています。
EV分野での最近の成長の多くはマスマーケットブランドの製品によって牽引されており、より手頃な価格の商品に対する潜在的需要があることが示唆されています。
米国中西部はEVに対する関心が低い
地区ごとのEV購入検討率を見ると、EV購入意向が「非常に高い」層が少ない州は、ウィスコンシン州とケンタッキー州(各18%)、ミネソタ州(17%)、オハイオ州(16%)でした。これは寒冷地でのEV性能への懸念や、これらの地域の消費者の伝統的な自動車メーカーに対するブランドロイヤルティが強いことなど、複数の要因が影響していると考えられます。
同調査結果は、米国におけるEV市場の成熟化が進む中で、価格競争力のある製品の提供と消費者への啓蒙活動の重要性を改めて浮き彫りにしました。自動車業界各社のEV戦略策定において重要な指標となりそうです。