英国の高級車メーカー、ベントレー・モーターズは8月7日、完全電動のコンセプトカー「EXP 15」を発表しました。同車は2026年に発表予定の、同社初の市販電気自動車の開発指針を示すデザインスタディです。
EXP 15は全長5メートル超の実物大外装モデルとして製作され、新設のデザインスタジオで初公開されました。デザインは1930年製ベントレー スピードシックス ガーニー ナッティング スポーツマン クーペ(通称「ブルートレイン」)からインスピレーションを得ており、象徴的な直立グリル、長い「エンドレス」ボンネット、後方キャビンといったクラシックな要素と、現代的な照明技術やアクティブな空力要素を組み合わせています。

パワートレインには完全電動の全輪駆動システムを搭載し、長距離航続と高速充電に対応する設計。従来の内燃エンジンが不要になったことで、ボンネット下のスペースは2つのエレガントな収納エリアに転用されており、ピアノスタイルのヒンジ式エンジンカバーからアクセス可能です。ただし、具体的な技術仕様やプラットフォーム詳細は公表されていません。
車両構成では3人乗り、3ドア仕様を採用。運転席側は1ドア、助手席側はツインコーチドア構造となっており、助手席は45度外側に回転する機能により乗降性を向上させています。また助手席は「コ・パイロット」「スタンダード」「リラックス」の3モードに可変し、乗客のニーズに応じて位置を調整できます。

収納面では、コンサーティーナ・フロア・ストレージシステムを装備し、ペットや手荷物の収納が可能です。トランク部分は展開式の2つの小さなシートとして使用でき、冷蔵庫機能も備えています。
技術的特徴として、エクステリア照明には4本の極細LEDストリップによるヘッドライトを採用し、フロントグリルにはベントレーの象徴的なダイヤモンドパターンを模したLED照明を配置しています。エアロダイナミクス面では、ツイン・アクティブ・スポイラーとアクティブ・エアロディフューザーを搭載。インターフェースには、バーチャルリアリティによるキャビン体験システムを導入し、物理スイッチとデジタル表示を融合したダッシュボードを採用しています。

使用素材では、外装にパラスゴールド・リキッドメタルサテン仕上げを採用し、レーダー透過型の超薄型アルミニウム顔料を使用することで、安全レーダー装置への影響を回避しています。内装には、約250年の歴史を持つ英国の織物メーカー、フォックス・ブラザーズ社製の100%ウール生地や、1903年創業のゲインズバラ社製シルクジャカード織物を使用しています。また、軽量化のため3Dプリント製チタン部品を多用し、車両重量と製造時の廃棄物削減を図っています。



ベントレーのデザインディレクター、ロビン・ペイジ氏は「コンセプトカーの真価は、新しいデザインを訴求するだけでなく、市場の動向を探ることにあります。セダンは変化の激しいセグメントで、お客様との対話により感触を掴む絶好の機会です」と説明しています。
EXP 15は市販化を前提としていませんが、2026年発売予定のベントレー初の市販電気自動車の開発に重要な影響を与えるとされています。同社は電動化移行期において、伝統的なラグジュアリー要素と環境対応技術の両立を目指しており、このコンセプトカーは、その方向性を示すモデルともいえます。
EXP 15 Design Vision Concept Gallery