2025年10月30日、東京ビッグサイトで「ジャパンモビリティショー2025」が開幕しました。11月9日までの11日間にわたって開催される本イベントは、約70年の歴史を持つ東京モーターショーから進化を遂げた「共創プラットフォーム型イベント」として、今年で3回目の開催となります。自動車メーカーだけでなく、IT・通信・エレクトロニクス産業など多様な業界から過去最多となる500社以上が参加した同イベントで体感できる、世界の最新EVを紹介していきましょう。
BYD
今年のジャパンモビリティショーで最も注目を集めたのは、今後も日本のEV市場を牽引する可能性が高い「軽EV」。その話題の中心となったのは、BYD初の海外専用設計モデル「BYD RACCO(ラッコ)」のプロトタイプ。日本の軽自動車規格に合わせて開発された前輪駆動の同モデルは、サイズが全長3395mm、全幅1475mm、全高1800mmのスーパーハイトワゴンタイプです。既に国内発売されている日産自動車の軽EV「サクラ」やホンダの「N-ONE e:」にはないスライドドアを装備。駆動用バッテリーには、BYDのリン酸鉄リチウムイオン電池「ブレードバッテリー」を採用し、電池容量はショートレンジとロングレンジの2種類となります。2026年夏の導入に向けて、同社は既に100台を超える試作車を製作し、衝突試験、走行試験、充電試験などを実施中とのことです。



また、BYDのブースでは、世界累計販売台数700万台を超えるDM(PHEV:プラグインハイブリッド)シリーズのうち、まもなく日本で発売となる「BYDシーライオン6 DM-i」が日本初公開されました。BYDらしく積極的に電気で走り、必要な時だけガソリンを活用するというユニークなPHEVであることから、同社はこのPHEVを「スーパーハイブリッド」と呼んでいます。国内発売の公式発表は12月1日、先行予約は11月1日から開始予定です。

また、「踊る車」という奇抜なアクションで同ブースを盛り上げたのが、BYDハイエンドブランド「仰望(ヤンワン)」の高性能BEV「YANGWANG U9」です。今年9月には、ベースモデルをさらにチューニングした「YANGWANG U9 Xtreme」で、ニュルブルクリンク北コースで6分59秒157を記録し、世界最速のEVスーパースポーツカーとなった同モデルも、今回日本初公開となりました。


その他、バスを含む商用EVも展開する同社が、日本の法規・寸法に最適化した専用設計で開発したEVトラック「T35(ティーサンゴ)」も世界初公開となりました。普通免許で運転可能な同モデルは、リン酸鉄リチウムイオン電池のブレードバッテリーを搭載し、航続距離250km。日本国内ではあまり展開がなかったEVトラックというジャンルも注目を集めています。アルミバンと平ボディの2モデルが設定され、同イベント会場では、サウナ搭載モデルも展示。2026年発売予定で、市場価格は架装費込みで800万円前後を検討しているとのことです。



Zeekr
同じく中国のGeelyグループが展開する高級EVメーカーZeekr(ジーカー)の大型MPV「Zeekr 009(ジーカー・ゼロゼロナイン)」もジャパンモビリティショーで国内初披露となりました。同モデルと取り扱うのは、EV開発などを手がけるフォロフライ。同社のブースに展示されたZeekr 009は、全長5209mm、全幅2024mm、全高1812mmの大型ボディに最大7人が乗車可能なMPV(ミニバン)で、航続距離は822kmを誇ります。


KIA
韓国のメーカーからも、日本初披露のEVが展示されました。KIAのワンボックスタイプ電気自動車「Kia PV5」です。KIAはこのモデルから日本市場へ進出。定員2人の商用車「カーゴ」と定員5人の乗用車「パッセンジャー」の2タイプ展開で、両モデルともサイズは全長4695mm、全幅1895mm、全高1899mm、航続距離は528kmです。2026年春から日本で発売されるこれらのモデルの価格は、カーゴが589万円から、パッセンジャーが679万円からとされており、Kia PBVジャパンは、PV5の日本国内販売台数目標を2026年1000台、2027年2000台としています。


ホンダ
今回、日本のメーカーで最も積極的にEVシフトをアピールしたのはホンダでした。同社は、Honda 0シリーズの新たなSUV「Honda 0 α(アルファ)」のプロトタイプを世界初公開し、シリーズのフラッグシップモデルのプロトタイプ「Honda 0 SALOON(サルーン)」と中型SUVの「Honda 0 SUV」をメインステージに展示しました。これら3つのEVラインナップは、2027年から日本国内での販売が予定されています。




ホンダのブースには他にも、Acuraブランドの次世代EV「Acura RSX Prototype(アキュラ アールエスエックス プロトタイプ)」が日本初公開されました。同モデルはHonda 0シリーズと同様に、独自のビークルOS「ASIMO OS」を搭載し、ユーザーの好みや運転行動を学習して、それぞれのEVが「超・個人最適化」されるとのことです。


また、2026年から日本発売がスタートするのが、こちらも世界初公開された「Super-ONE Prototype(スーパー ワン プロトタイプ)」です。専用開発の「BOOSTモード」を搭載した同モデルは、出力の拡大とともにエンジンサウンドが響き渡るなど、EVならではの加速とエンジン車の運転の感覚を融合させています。同社はこのモデルを小型EVのニーズが高いアジア各国や英国などの地域で展開していく予定とのことです。

日産自動車
国内メーカーとして日本のEV市場を構築してきた日産自動車のブースでは、10月17日に発売された新型リーフとともに、国内初公開のEVモデルが展示されました。


同社は、マイナーチェンジとなった新型アリアを展示。一新したフロントデザイン、Googleビルトインを搭載したインフォテインメントシステム、EVのバッテリー電力を取り出すことができるV2L(Vehicle to Load)機能の追加などが実施された同モデルは、年内の発売が予定されています。

また、日産のブースでは、2025年4月に中国で発売され、約1カ月間で1万7215台を受注したというセダンタイプのEV、「N7」も展示されました。このモデルは、最大635kmの航続距離を有しながら、現地では11万9900元(約240万円)から14万9900元(約300万円)という手頃な価格帯で販売されているヒット作。日本での発売は未定ながら、会場でも注目度の高い一台でした。


また、欧州で2025年後半に発売予定のマーチの後継車「マイクラ」も登場。日本発売未定のモデルだからか、残念ながらプレスデイのみの公開で、一般公開はされない予定とのこと。しかし、全長3974mm、全幅1830mm、全高1499mmのコンパクトなサイズと、52kWhモデルで航続距離408kmという機能性、そして、その愛らしいデザインは、日本国内でもヒットする可能性を強く感じさるモデルでした。


この他の国産メーカーや欧州のメーカーなども様々なスタイルのEVを提案した今回のジャパンモビリティショー。メルセデスベンツやBMWなど、その他の最新EVモデルは後編でご紹介します。

