欧州におけるテスラの自動運転システム「FSD(フルセルフドライビング)」の導入に向けた規制環境が、大きな転換点を迎えています。国連欧州経済委員会(UNECE)の自動運転・コネクテッド車両作業部会(GRVA)において、2026年1月19日から開催されている会合に向け、運転支援システムに関する国際基準「UN R171(DCAS:ドライバー・コントロール・アシスタンス・システム)」の改訂案が提出されました。
今回の改訂案は「02シリーズ」と呼ばれ、これまで欧州での高度な運転支援システムの導入を阻んでいた制約が大幅に緩和される内容となっています。国連のタスクフォースが提出したステータスレポートによると、今回の改訂では「フェーズ3」として定義された課題がすべて解決されました。
最大の変更点は、これまで高速道路に限定されていた「システム主導の操舵(SIM)」の制限が解除されたことです。改訂案では、高速道路以外でもシステムがドライバーの明示的な承認なしに車線変更などの操作を行うことが可能となります。また、高速道路やそれに類する道路において「ハンズオフ(手放し運転)」が許可されるほか、閉鎖された駐車場内でのシステム動作も認められます。車線変更の要件についても、より自然な運転感覚を実現するために緩和されました。

規制の今後のスケジュールについても具体化しています。今回のGRVAで承認された改訂案は、2026年6月に開催される世界自動車基準調和フォーラム(WP.29)での投票にかけられます。そこで可決された場合、約6カ月の猶予期間を経て、2027年1月から正式に発効する見通しです。
テスラの展開予測に影響を与える別の動きもあります。テスラはオランダの車両認証当局(RDW)に対し、2026年2月を目標にFSDの性能実証を行うスケジュールを立てており、個別免除規定を利用した早期導入を模索しています。しかし、今回の国際基準の改訂により、2027年1月からは個別免除ではなく、統一された型式認証基準に基づいた広範な展開が可能になる法的基盤が整います。

また、ステアリング設備に関する基準「UN R79」も同時に更新される予定です。これにより、駐車操作時などにDCAS基準が優先されることが明確化され、テスラが提供する「サモン」や「オートパーク」といった機能の欧州導入も、より現実に即した形で進むことになります。
欧州でのFSD展開は、これまでルールベースの古い規制によって制限されてきましたが、2027年の新基準発効により、市街地走行やシステム主導の車線変更を含む本来の性能が解禁される可能性が高まっています。

