中国政府が自国の電気自動車(EV)メーカーに対し、先進技術を国内に留めるよう強く要請していると、米ブルームバーグが報じています。この動きは、急速に成長する中国のEV産業を保護しつつ、世界市場での競争力を維持する狙いがあるとみられています。
中国商務省は7月、主要自動車メーカーとの会合で、海外工場での生産に「ノックダウンキット方式」を推奨しました。この方式は、主要部品を中国国内で生産し、海外工場では最終組立のみを行うものです。これにより、核心技術の流出を防ぎつつ、輸出関税を回避できるメリットがあります。
また、同会合では、インドへの投資を控えるよう要請があったほか、トルコへの投資を検討する場合は、工業情報化省と現地中国大使館に事前通知するよう求められました。
専門家は、この動きの背景に主に3つの理由があると分析しています。
第一に、技術流出の防止です。中国のEV技術は世界トップクラスの競争力を有しており、この優位性を維持することが極めて重要だと、中国政府は考えているようです。
第二に、国内産業の保護です。主要部品の生産を国内に留めることで、雇用を確保し、経済への貢献を維持する狙いがあるとみられます。
第三に、貿易摩擦への対応です。「中国製EVに対して貿易障壁を設けている国々が、同時に中国企業の工場誘致を行っている」と、中国商務省は指摘しています。このような外国政府の真意を警戒し、慎重な対応を求めているのです。
一方で、BYDやChery Automobile(奇瑞汽車)など中国のEVメーカーは、すでに欧州やブラジルなどで工場建設を計画しています。しかし、EUの幹部は「単なる組立工場ではなく、付加価値や技術移転を伴う本格的な製造拠点であることが必要」と警告しており、中国メーカーの海外展開に新たな課題を投げかけています。
中国政府のこの方針は、EVメーカーのグローバル展開戦略に大きな影響を与える可能性があります。海外での競争力を維持しつつ、どのように技術を守るか、各社の対応が注目されます。
メイン写真:ハンガリーでの工場建設を発表しているBYDの製造工場(写真:BYD)