2024年10月1日、静岡県湖西市で、トヨタバッテリー株式会社の「出発式」が開催されました。この式典で、トヨタ自動車とパナソニックが出資して誕生した会社で、今年3月にトヨタの完全子会社となったプライムアースEVエナジー(PEVE)が「トヨタバッテリー」へと社名変更することが発表されました。湖西市やトヨタグループの関係者など多くの来賓が参加しました。
新居工場は、トヨタバッテリーの主力拠点の一つとなる見込みです。第1工場では既に2024年2月からHEV用バッテリーの生産を開始しており、今後は第2工場および第3工場の稼働も予定されています。この「湖西バッテリーパーク」と呼ばれる一帯は、トヨタの電動化戦略の要となる拠点として注目を集めています。
出発式では、トヨタバッテリーの岡田政道社長が決意を表明。同社長は、自動車業界が直面する大きな変革の中で、トヨタ自動車のマルチパスウェイ戦略を支える重要な役割を担うことを強調しました。「ハイブリッド、プラグインハイブリッド、EV、さらには燃料電池車の2次電池として、マルチパスウェイ戦略に貢献することは言うまでもありません。さらに、トヨタが情熱を傾けて開発し続ける水素エンジン車に向けても、航続距離を伸ばし、水素タンクを小型化することに、電池の力で寄与できないか、全方位で支えたいと願っております」と述べ、幅広い電動化技術への対応を約束しました。
湖西市の影山剛士市長も祝辞を述べ、トヨタバッテリーの誕生が地域にもたらす意義について言及しました。影山市長は、この地で生まれたトヨタグループの創業者豊田喜一郎の父、豊田佐吉の発明精神が今日まで受け継がれていることを高く評価し、「モノづくりのはじまりKOSAI」という地域の若者たちの提案を紹介しながら、産業と地域の発展への期待を表明しました。
最後に登壇したトヨタ自動車の豊田章男会長は、トヨタバッテリーの設立を豊田佐吉の夢の継承と位置付け、感慨深げに語りました。豊田会長は、佐吉が1925年に、当時の100万円(現在の価値で100億円以上)という懸賞金をかけて提案した「飛行機に載せて、太平洋をひとっとび」できる蓄電池の開発について触れ、「なぜ、佐吉は100年たっても実現できない、突拍子もない電池に懸賞金をかけたのでしょうか。そこには、2つのメッセージがあると思っています。一つは、動力源としての電池の可能性です。もう一つは、人の『考える力』が持つ無限の可能性です」と解説しました。
トヨタバッテリーの設立は、トヨタグループが電動化時代に向けて本格的に舵を切ったことを示す象徴的な出来事です。ハイブリッド車で培った技術と経験を基盤に、より高性能で多様な用途に対応できるバッテリーの開発と生産を加速させることで、トヨタは電動化市場でのリーダーシップを強化しようとしています。
さらに、この動きは地域経済にも大きな影響を与えることが期待されています。湖西市は豊田佐吉のふるさとであり、トヨタグループにとって特別な意味を持つ地域。トヨタバッテリーの設立により、新たな雇用が創出され、関連産業の集積が進むことで、地域経済の活性化につながる可能性も期待されています。
写真提供:トヨタ自動車、トヨタバッテリー