2024年の米大統領選でドナルド・トランプ氏がカマラ・ハリス副大統領を破り、勝利を収めたことで、自動車業界に大きな変化が予想されています。自動車専門メディアAutomotive Newsの読者投票では、この選挙結果が2024年最大のニュースに選ばれました。
トランプ次期大統領は、バイデン政権が推進してきた電気自動車(EV)への7500ドルの購入補助金を廃止する方針を示しています。さらに、充電設備への支援金返還や、中国製の部品・バッテリー材料への関税導入も検討しているといいます。輸入車や部品への関税についても強硬な姿勢を示していますが、これが実際の政策となるか、あるいは交渉の出発点なのかは不透明な状況です。
一方で、自動車ディーラーたちの間では楽観的な見方が広がっています。調査会社コックスの最新の意識調査によると、政治環境の改善を歓迎する声が上がっており、2022年第2四半期以来の強気な見通しを示しています。
自動車業界2位のニュースは、世界第4位の自動車メーカー、ステランティスの経営危機です。同社は2021年にフィアット・クライスラー・オートモービルズとフランスのプジョー・シトロエングループ(PSA)が統合して誕生した企業です。2024年12月1日には、CEOのカルロス・タバレス氏が取締役会との戦略の違いを理由に辞任。在庫の増加や販売不振、工場稼働率の低下など、複数の課題を抱えています。北米での工場稼働率は52%と、地域内の自動車メーカーで最低水準にとどまっていると、投資分析会社ジェフリーズが報じています。
3位には2つのニュースが同率でランクインしました。1つは、メーカー各社が掲げていたEV化計画の遅延です。メルセデスやボルボが2030年までのEV完全移行目標を見直し、フォードもヨーロッパでの目標を後退させています。もう1つは、北米の自動車販売店向けに基幹システムを提供するCDKグローバルへのサイバー攻撃です。約1万5000の販売店が数週間にわたってシステムを使用できない事態となり、アンダーソン・エコノミック・グループの試算によると、6月19日から7月15日の間に5万6200台の新車販売機会が失われ、10億ドル以上の損失が発生したと報じられています。
2024年は米自動車業界にとって大きな転換点となった1年でした。2025年はトランプ氏の政策がどのように具体化されるのかは、自動車業界の行方を左右する重要な要素になりそうです。
メイン画像:休日に撮影されたアメリカの充電ステーション風景(Roschetzky Istock Photo)