ホンダは米ラスベガスで開催中のCES 2025において、次世代EVシリーズ「Honda 0(ゼロ)」の2車種のプロトタイプを世界初公開しました。セダンタイプの「Honda 0 SALOON」とSUVタイプの「Honda 0 SUV」で、2026年から北米市場を皮切りに、日本や欧州などグローバル展開を予定しています。
今回のCESにおいて話題となっているのが、新開発の独自ビークルOS「アシモ(ASIMO)OS」の搭載です。自社開発の「アシモOS」は、かつての二足歩行ロボット「アシモ」の技術的遺産を受け継ぐソフトウェアプラットフォームです。アシモで培った外界認識技術や人の意図を理解して行動する自律制御技術を、最新の知能化技術と組み合わせることで、ソフトウェア主導の次世代モビリティ実現を目指すというコンセプトです。
具体的には、自動運転や運転支援システム、車載インフォテインメントなど、車両の各システムを制御するECUを一元的に管理。これにより、快適な移動空間の提供から、運転の楽しさを引き出すダイナミクス制御まで、幅広い機能を統合的にコントロールします。さらに、OTAによる継続的なソフトウェアアップデートにより、個々のユーザーの好みや使い方に応じて、車両の機能や性能が進化し続けることが特徴。
Honda 0 SALOONは、低全高のスポーティーなスタイルと広い室内空間を両立させたフラッグシップモデル。一方のHonda 0 SUVは、シリーズ第1弾として投入される中型SUVで、3次元ジャイロセンサーを用いた高精度な姿勢推定と安定化制御により、高い走行性能を実現しています。
ホンダは2021年に自動運転レベル3(アイズオフ)条件付自動運転車(限定領域)に対応する「ホンダ センシング エリート(Honda SENSING Elite)」を搭載した「レジェンド」を発売し、世界で初めて自動運転レベル3を実用化しました。Honda 0シリーズでは、このレベル3技術をベースに、Helm.aiの「教師なし学習技術※」と熟練ドライバーの行動モデルを組み合わせた独自のAI技術を採用。まずは高速道路での渋滞時におけるアイズオフ走行から開始し、OTAによる機能アップデートを通じて、運転支援・自動運転レベル3適用の範囲を拡大。世界に先駆けて全域アイズオフを実現し、移動中の映画鑑賞やリモート会議など、これまでにはできなかった「ドライバーによる移動中のセカンドタスク」を可能にしていくとしています。
※AIを支える技術である機械学習の手法の一つ。入力データに対してどのような正解を導き出すかを学習させる「教師あり学習」と異なり、機械に正解を与えずに学習させ、自力でデータの規則性や特徴を導き出す学習方法
さらに、ホンダはルネサス エレクトロニクスと次世代向け高性能SoCの開発契約を締結。2020年代後半に投入予定の次世代モデルでは、業界トップクラスとなる2000 TOPSのAI処理性能を実現する計画です。
充電インフラ面では、北米において自動車メーカー8社による合弁会社「イオンナ(IONNA)」を通じ、2030年までに3万口の充電網を構築。NACSの採用により、約10万口の充電設備へのアクセスを可能にします。また、Emporia社との共同開発によるHome Energy Management Systemを展開し、EVの充電最適化とともに、電力系統への逆潮流による収益化も視野に入れています。
Honda 0シリーズの具体的な販売時期について、SUVが2026年前半、SALOONが2026年中の北米展開を予定しています。日本を含むその他市場への投入時期は追って発表される見込みです。