by EVcafe編集長 駒井尚文 @tesla365day
ミニのEV「クーパーS」に乗り、定番コースの東京→房総ドライブ
色んなEV(おもに輸入車)に乗って、ここでレビューを書いていますが、試乗してみて常に抱く疑問があります。
「輸入車のEVって、そもそもサイズがデカすぎませんか?」
私の乗っているテスラ モデル3にしても、まあまあデカい。私の妻は、サイズを嫌って運転したがりません。東京都内なら、例えば路上のパーキングメーターに駐車すると、確実に白線からハミ出します。房総の拠点で使っている時は、イオンモールとか商業施設の駐車場は車室に十分な余裕がありますが、道路は東京に比べると狭い。特に、幹線道路を外れると狭小な道が大変多くなります。あとはトンネルですね。国道を走っていても、トンネル内で対向車(特に大型トラックやバス)とすれ違うのはなかなかスリリングです。地方都市に行くと、圧倒的に軽自動車が多いのは、価格はともかくそのサイズが最適だからだってことがよく分かります。
今回試乗するミニ、「MINI Cooper SE 3 Door」は、これまで私が試してみた輸入車EVの中でもっともコンパクトなサイズの車です。一目見た瞬間「この車、小さくてイイね」って思いました。都内でも房総でも不自由なく運転できそうです。早速、モデル3とサイズを比較してみましょう。
ミニクーパー:全長×全幅×全高=3860 × 1755 × 1460mm(ホイールベースは2525mm)
テスラ モデル3:全長×全幅×全高=4720 x 1850 x 1440mm(ホイールベースは2875mm)
モデル3より車幅がおよそ10センチも小さい。全長も80センチ以上短い。これ、日本の道路事情にジャストフィットって感じがします。EVを評価するときって、航続可能距離が何キロだとか、0→100キロ加速が何秒だとか、ガソリン車とはちょっと違った尺度が強調されがちですが、私の場合「まずはサイズでしょ」って思っています。自宅やよく行く場所で、楽に駐車できるか? 狭い道路でのすれ違いも不安なしにできるか? ここが大事。その点、ミニなら文句なし。
全幅1755mm、全高1460mmのMINI Cooper SE 3 Doorは街乗りに最適
あと、EVでありながら、すでにブランドとして、またモデルとして圧倒的なレガシーがあるというのもミニの特長です。これ、他の輸入EVにはないですもん。テスラにしてもBYDにしても「EVとしての歴史」しかありません。広報の方に聞いたら、いま、日本でもっとも売れている輸入車はミニなんだそうです。デザインもユニークで、誰が見ても「あ、ミニだ」って認識できる。そんな有名ブランドがリリースしているEVなので、日本市場においても高いポテンシャルを感じます。
早速、乗り込んでみましょう。ダッシュボードには「ON/OFFボタン」が存在しています。イグニッションキーをひねる感じでスイッチオン。その上部に鎮座するタッチスクリーンが丸い形状なのがユニークです。円形タブレットのディスプレイは非常にレアですね。自動車でもそれ以外でも、丸いヤツは他で見たことがありません。ちなみに、搭載されるOSは自社製とのこと。あと、ルーフがガラスじゃないんですね。これ、実はEVとしては珍しい。試乗車は伝統の白ルーフで、ボディが青というツートーン。
港区にあるミニの拠点を出発します。丸一日試乗車を借りて、アクアラインを走って房総半島に上陸する、EVcafeの定番ドライブルートに突撃。晴天に恵まれ、気持ちのよいドライブ体験となりました。
例によって良かった点と微妙な点を箇条書きにしていきます。私はふだん、テスラのモデル3を乗っています。レビューはあくまでテスラー目線であることをご承知置きください。
ミニの良かった点は?
サイズ感がナイス。これぞ日本の道路にマッチするEV
すでに記したように、EVとしてはかなりコンパクトなサイズです。モデル3との比較は示しましたが、プリウスやアクアとも比較してみましょう。
ミニクーパー:全長×全幅×全高=3860 × 1755 × 1460mm(ホイールベースは2525mm)
プリウス:全長x全幅x全高=4600 x 1780 x 1430mm(ホイールベースは2750mm)
アクア:全長x全幅x全高=4050 x 1695 x 1485 (ホイールベースは2600)
このサイズ感で、ミニに対して不満を持つ方がいるとすれば、それは「荷物がたくさん積めない」「後部座席が狭い」というものでしょう。取り回しの楽チンさと、空間の広さや居住性はトレードオフなので、これはオーナーが何を優先するかという問題ですよね。
デザインが、佇まいが、紛う方なきミニ
円形のヘッドランプ、フロントグリルのデザイン、ツートーンカラー。その姿は、誰がどう見ても「ミニ」そのものです。これがICE車なのかEVなのか、ぱっと見で区別できる人は希だと思います。しかし、それが「ミニ」であることは誰の目にも明らか。ICE車もEVも同じ「ミニクーパー」の呼称ですが、EVは、EV専用のプラットフォームで製造しているとのことです。そしてミニは、人々から「オシャレな車」として認知されているそうで、ファッション業界の方とか、デザイナーの方とかにも愛されているそうですよ。
インフォテインメントが充実。アプリも山のようにある
タッチスクリーンを操作してみると、インストールされているアプリがけっこう盛りだくさんであることが分かります。特に、音楽系のアプリは数多くの中から選べます。日本ではなじみの薄いものも含め。個人的には、SpotifyがダウンロードできるのでOKでした。
ボーイズレーサーの伝統を継承
ちなみに、ミニはFFです。いや、エンジンがないからFWDか。かつて、ローバー時代のミニは「ボーイズレーサー」なんて呼ばれ、キビキビした走りが売りでした。EVのミニも、その辺を意識したような作りになっています。ドライブモードが7つもあるのですが、そのうち「ゴーカートモード」を選ぶと、加速も走りも鋭くなります。これは楽しい。
ミニの微妙な点って?
タッチスクリーンは、操作性がかなり煩雑
円形のタッチスクリーンは、斬新でスタイリッシュですが、正直に言えば操作性がやや煩雑だと感じました。UIについても、もっと洗練して欲しいと思います。やはり、円形だとスペース効率が悪くなりますね。
アプリを探すときに、手書きで探せる機能もありました。しかし、右ハンドル車の場合ドライバーは左手で操作することになるので、やや不便だと感じます(私は右利きです)。文字を手書きできるインターフェースに、左手の指で書くのは至難の業。
手書き検索機能、右利きの運転手は苦労しそう
速度計はスクリーン中央のトップに表示されるので、運転席からだと視認性がやや悪い。その代わり、ステアリングの向こうにヘッドアップディスプレイがせり出してくる仕様です。
ゴーカートモードでエンジン音。これ、必要ですか?
試乗車のMINI Cooper SE 3 Doorには、ドライブモードが7つあって、そのうちもっともスポーティーな「ゴーカートモード」を選びます。アクセルをベタ踏みしてみると「ウォオオオ〜ン」というヴァーチャルなエンジン音が車内に轟くではありませんか。「うわあ〜!何じゃこれ」ってなりました。あまりの衝撃に大笑い。
気になったので、他のモードでもエンジン音が出るのか確かめます。「コアモード」もエンジン音が鳴りました。さすがに「グリーンモード」ではエンジン音がありません。これって、趣味とか嗜好の違いってことなんでしょうか? 「やっぱゴーカートなんだから、エンジン音欲しいよね」みたいな。
これ、個人的には「謎仕様」だと思います。せっかく静かなEVに乗っているのに、わざわざ騒音(しかも人工)を室内に轟かす意味が全然分かりません。もしかしたら、設定で音を消せるのかもしれませんが、それならデフォルトでOFFにしておいて欲しいと心底思います。テスラにおけるブーブークッションみたいなおまけ機能で十分じゃないですか。
MINI Cooper SE 3 Door まとめ
Mini Cooper SE 3 Doorは、とにかくサイズが日本市場にマッチしていると思います。ブランドも信頼性が高いので、アフターサービスなども含め、選ぶ側からすれば安心感は抜群でしょう。
操作系でいけば、やはり円形タッチスクリーンは好みが分かれるところでしょう。個性的でデザイン性も高いので、楽しいなあと思う一方、情報量や効率性という点では、やや難ありです。もしもタッチスクリーンが2種類あって、円形と長方形が選べるのなら、私は迷わず長方形を選びます。
あと、好みの問題ではありますが、個人的に3ドアはけっこうメンドウだなあと思いました。荷物を後部座席に放り込む時に、いちいち座席を倒さないといけない。市場を見渡してみるに、「3ドアのEV」ってあんまりないですよね? ICE車のミニ同様、5ドアの設定を是非用意して欲しいなと思いました。
最後に、このEVの最大の特長は、ぱっと見でICE車のミニと区別がつかないところだと思います。「実はこれ、電気自動車なんだよ」って他人を驚かせることもできます。実はミニって、PHEVもあるんですよね(MINI CROSSOVER クロスオーバー)。同じデザインでこれほど動力系にバリエーションのある車も珍しい。ファンが多いし、ファンに愛されているブランドだなぁと思います。ミニのICE車からミニのEVに買い替える人とか、意外に多いんじゃないでしょうか。