by EVcafe編集長 駒井尚文 @tesla365days
Volvo Studio Tokyoを出発してEX30に試乗
テスラー目線でテスラ以外のEVに試乗してレビューする企画、第2回目のチャレンジは、日本市場で売れ行き好調なEV「ボルボEX30」になりました。試乗車をピックアップするため、青山のボルボショールームを訪問。この「Volvo Studio」は世界に6店舗あるボルボのブランドスペースです。ストックホルム、ニューヨーク、ミラノ、ワルシャワ、上海、そして東京の6拠点だそうです。
東京のスタジオは「Volvo Studio Tokyo」といって、国道246号沿い、外苑前駅の近くにあります。北欧風のインテリアの中にボルボの自動車が並び、傍らのカフェでは淹れたてのコーヒーを楽しむことができるお洒落スポットです。
このスペース、ボルボ車を眺めながらリラックスできる癒しの空間なのですが、さりげなく先端技術も仕込んであります。最新のARを活用した「ヴァーチャル・ストックホルム・ドライブ」はなかなかの没入感。運転席から見えるストックホルムの街並みがリアルで、現地に行ってみたくなること請け合いです。北欧風味が好きな自動車ファンならば、一度は体験してみることをオススメします。
さて今回は、ボルボ・カー・ジャパンの太っ腹な広報さんの計らいで、EX30を丸一日お借りできるという貴重な機会をいただきました。長距離の高速ドライブも可能なので、私が普段乗っているテスラ モデル3との比較も存分にできそう。これはめちゃめちゃ楽しみです。
ショールームの地下にある、充電設備つきのガレージを出発します。東京都心における短時間の試乗だと、竹芝とかお台場ぐらいまでしか行けませんが、今日は時間がたっぷりあるので、房総半島を目指すことに。
結局、東京湾を渡って木更津から君津、そして富津まで走り、アクアラインで自動運転も試すことができました。そして、その走りを堪能するとともにテスラより勝っている点も複数発見。やはり、長めの試乗じゃないと気づけないことがたくさんあります。
それでは、テスラー目線でのインプレッション、早速お届けします。基本的に箇条書きで、簡単なレビューを加えていきます。
EX30の良かった点は?
都会的なデザイン。パステル調のボディカラー
最近のボルボ車って、ICE車にしてもEVにしても、BMWやメルセデスなどドイツ勢のマッチョな感じとは全然違いますね。色味もパステルカラーが中心で、このEX30は「上品な都会のEV」って感じがします。ハイウェイを疾走する姿よりも、高級スーパーの駐車場で映える感じ。
EX30はワールド・カー・アワードでも、「2024ワールド・アーバン・カー」を受賞したほか、レッド・ドット デザイン賞「ベスト・オブ・ザ・ベスト」も獲得しています。納得の受賞結果ですね。
パワーボタンなし。キーが近づくとロック解除
キーを携えて車に近づくと、「カシャッ」と音がして自動的にロック解除されます。ドアを開けて運転席に座ると、タッチスクリーンが起動しており、すぐに運転可能です。ここら辺はテスラと同等ですね。ON/OFFボタンは存在しません。テスラー的には、乗り込んで走り出すまでの違和感はゼロ。
SUVとしての座高の高さとサイズ感
EX30は、テスラモデル3よりもひとまわり小さいと感じます。サイズを比較してみましょう。
ボルボ EX30:全長×全幅×全高=4235 x 1835 x 1550mm(ホイールベースは2650mm)
テスラ モデル3:全長×全幅×全高=4720 x 1850 x 1440mm(ホイールベースは2875mm)
モデル3に比べ、車庫入れなどが楽だなと感じるし、視点も高くて運転しやすいと感じます。テスラ モデルYの全高が1625mmなので、モデル3とモデルYの中間ぐらいの高さです。全長4235mmはけっこう短いですが、これをどう評価するかは人それぞれでしょう。後部座席のクリアランスと積載量には若干の不安を感じますが、取り回しの楽チンさとトレードオフ。
テスラモデル3より車庫入れが楽な印象のEX30
EX30は、一般的な日本の機械式駐車場にも適合するサイズに設計されているとのことで、東京都内でも駐車スペースで困ることはあまりないかも知れません。
Googleアカウント連動したら、なんでもできるように!
カーナビの操作は、目的地の設定などボイスコマンドでも可能です。「OK Google」のコマンドが使えるとのことなので、自分のGoogleアカウントにログインしてみました。ついでにSpotifyにもログインしておきましょう。
すると! Googleアシスタントがフル活用できるようになるのです。これは衝撃的です。めっちゃ便利です。
「OK Google、海ほたるまでナビして」
「OK Google、ビートルズをかけて」
「OK Google、今日の木更津市の天気は?」
こんなコマンドが次々に実行されていくので、タッチスクリーンにタッチする必要がなくなります。これ、正直言って、テスラより便利です。テスラは天気予報なんか教えてくれませんから。
私は自宅でAmazon Echo(=アレクサ)にかなり依存する生活をしているので、車の運転中はやや不便を感じることがあるのですが、車内でGoogleアシスタントが使えるなら最強です。この音声アシスタント機能の有無が、今後、ドライバーによっては車を選ぶ時の決め手になるかも知れません。ちなみにGoogleアシスタントは、ボルボの場合、EVにもICE車にも標準装備だそうです。
自動運転がスムーズ! ワンペダルも快適
EX30にはレベル2の自動運転が標準装備されています(ACC+車線中央キープの機能)。これがけっこうスムーズに動くんですね。試乗の際、アクアライン名物の夕方上り線渋滞に遭遇したのですが、前の車に合わせてスピードダウン→ほぼ停止→再び走行開始という一連の走行では、テスラよりも遙かにスムーズだと感じました。テスラのオートパイロットだと、ブレーキが急過ぎる、走り出しが急加速過ぎるという症状がよく出ます。そのあたりはボルボの方がストレスを感じず、安心感が勝ります。
ワンペダルも快適です。テスラと同等レベルと感じました。面白いのは、ワンペダルドライブの「ON/OFF」ボタンがあるところ。ワンペダル走行の挙動を好まないドライバーもいるのでしょうか。
微妙な点は?
窓の開閉が不便。ドアにウインドウボタンがない
EX30のインテリアは、リサイクル素材がふんだんに使われているとのことです。環境コンシャスな目配りが行き届いている。しかし一方で、操作性とトレードオフになっている面もあります。例えば、ドア部分にはウインドウの開閉ボタンがありません。これ、ドライバーはすぐに慣れるかも知れませんが、助手席にゲストで乗る人は「窓、どうやって開けるの?」って必ずなりますよ。
タッチスクリーンが小さい。縦位置なのも微妙
ここ、一番残念だったポイントです。テスラ(モデル3)のタッチスクリーンは15.4インチ。それに対してEX30は12.3インチ、しかも縦長なので、実用面積がだいぶ小さいと感じます。iPadに例えるなら12.9インチのiPad Proと、10.9インチのiPad Airぐらいの差があるのですね。
そもそもEX30のタッチスクリーンは、レスポンスが非常に早く、サクサク動くのでテスラと比較しても何の遜色もありません。今後、スクリーンサイズが大型化することに期待したいと思います。
フランクが使えない
EX30には、一応フランク(フロント側のトランク)がついています。しかし、開いてみたら、そこは充電ケーブル置き場でした。ここら辺はちょっと残念ですね。テスラ車においてフランクは、完全に荷物収納のスペースとして機能しているのですが、この車ではそこまで望むことはできません。
フランクのカバーを開くと、そこは充電ケーブル置き場に
EX30に乗ってみて感じたことまとめ
まとめましょう。EX30はトータルで好印象でした。今回の車はRWDで69kW、航続距離が560kmなので、モデル3のRWDモデルとほぼ同等で、価格帯も一緒です(EX30が559万円から、モデル3が531万円から)。
ミニマルな室内デザイン、例えば、操作系のスイッチが少ないことや、メーター系がタッチスクリーンに集約されていることなどは、思想的にテスラと共通なものを感じます。
個人的にもっとも印象的だったのは、操作系が「Googleに全振り」されていることです。Googleマップ、Googleアシスタント、ChromeやYouTubeもプリインストールされています。これ、今のところメリットしか感じなくて、デメリットが見あたりません。一応、Googleのサービスが局地的にダウンしたり、パケットが取れない圏外エリアなどで一時的に利用できなくなったりする可能性はあるでしょう。それでも、音声アシスタントを日常的に使っている人なら、便利なことこの上ないでしょう。
ドライバーが車を操作する方法論の重要なオプション(=Googleフル活用)を垣間見た感があります。考えてみれば、ドライバーレスの自動運転もすでに世界の一部エリア、一部車種では実現しているわけですから、このGoogle制御はそれと同等か一歩手前に相当する技術と言えるのかも知れません。
個人的には、自動運転が実現した上でさらに、車に搭載されたAIが、室内の温度調整とか、音楽の選曲をしてくれるようになる未来を期待したいですね。「外気温が高くなったので、エアコンを少し強くしましょうか?」「サンセットが近い時間なので、音楽をジャズにしましょうか?」みたいな提案をAIがしてくれるような。
近未来、車は、単なる移動のための道具ではなくて、共に移動するコンパニオンみたいな存在になっていくと思っています。そんな未来をヴィヴィッドに感じさせてくれるEX30の試乗体験となりました。