アメリカの自動車環境政策を巡り、連邦政府と州政府の対立が激化しています。米上院は2025年5月22日、カリフォルニア州が2035年までに温室効果ガスを排出する自動車の新車販売を禁じる取り組みを無効化する法案を51対44で可決しました。同法案はトランプ大統領の署名を待つのみとなっています。
この動きに対抗する形で、カリフォルニア、コロラド、デラウェア、マサチューセッツ、メリーランド、ニュージャージー、ニューメキシコ、ニューヨーク、オレゴン、ロードアイランド、ワシントンの11州が「アフォーダブル・クリーンカー連合」を発足させました。連合は約1億人のアメリカ人と米国自動車市場の約30%を代表しています。
カリフォルニア州の排ガス規制権限は、1970年の大気浄化法第177条に基づいて認められてきました。当初は同州のスモッグ対策支援として考案された制度でしたが、カリフォルニア州は大気汚染対策で主導的役割を果たすようになり、他州も追随する形で広がりました。同州は連邦政府よりも厳しい排ガス制限を導入し、電気自動車やゼロエミッション車の普及を推進してきました。
しかし、法案が成立すればバイデン前政権下で与えられていた環境保護局(EPA)の免除措置が撤回されます。シェルリー・ムーア・カピト上院議員(共和党)は「過去20年間、カリフォルニア州は免除権限を乱用し、極端な気候政策を他州に押し付けてきた」と述べています。一方、環境団体の責任者マニッシュ・バプナ氏は「ぜんそくや肺疾患、心臓疾患を引き起こす汚染問題に取り組む州の法的権限に対する前例のない攻撃だ」と反論しています。

トランプ政権はEVに批判的な立場を取っています。EVは中国やメキシコに恩恵を与え、米自動車産業の労働者に打撃を与えていると主張しています。下院も今月、カリフォルニア州のガソリン車禁止を廃止する法案を可決済みで、連邦レベルでの規制緩和が進んでいます。
これに対し、11州連合はクリーンな車両をより手頃で利用しやすくするソリューションの開発、各州のクリーンビークル政策の推進、州の環境規制権限の擁護を掲げています。製造業者、販売業者、労働組合、充電インフラ提供者などとの協働を通じて、州間での経験共有と連携を強化する方針です。

この政策の分裂状態は、自動車メーカーにとって市場戦略の策定を困難にしています。連邦レベルではEV支援策の縮小が進む一方で、主要州では独自の環境基準維持や充電インフラ整備が継続されているためです。
今回の連合は、2017年に設立された24州による「米国気候同盟」の一部として位置づけられています。州レベルでの協調により連邦政府の政策変更の影響を一定程度緩和できる可能性がありますが、連邦による免除措置撤回が実現すれば州の規制にも制約が生じる恐れがあり、今後の動向が注目されます。

