テスラは2025年6月29日、米国初となるリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーセル製造工場の完成が間近に迫っていることを公式に発表しました。工場はネバダ州スパークスに位置し、同社にとって重要なマイルストーンとなります。
現在テスラは、主にエネルギー貯蔵システム「Megapack」で使用するLFPバッテリーをすべて中国から輸入しています。今回の新工場により、海外調達への依存を減らし、国内製造による優遇措置の恩恵を受けられることになります。

この工場建設については多くの人が知らなかったのも当然で、テスラは既存のギガファクトリー・ネバダの拡張の一環として、密かに作業を進めてきました。今回初めて、同社が所有・運営する工場で、手頃な価格の米国製LFPセルを生産できるようになり、エネルギー貯蔵製品だけでなく、電気自動車への使用も可能になります。
LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーは、従来のリチウムイオンバッテリーと比べて安全性が高く、長寿命で、コストも抑えられるという特徴があります。一方で、エネルギー密度がやや低いため、主に大型のエネルギー貯蔵システムや価格重視の電気自動車に使用されています。

LFP生産の現地化により、テスラはコスト削減と地政学的なサプライチェーンリスクの最小化を目指しています。さらに、一部の特許情報によると、テスラのLFPセルは現在輸入している中国製よりも安価になる可能性があるとTeslaNorthが報じています。
もう一つの重要な利点は、米国のEV税額控除要件への適合です。テスラは以前、調達制限により連邦優遇措置の対象外となったため、LFPバッテリー搭載の標準航続距離車両の米国での販売を停止していました。今回、米国製セルにより、テスラは「45X製造税額控除」と呼ばれる国内製造業者向けの税制優遇措置の対象となる可能性があります。これにより、米国の購入者向けに手頃な価格で税額控除対象のモデルを復活させることができる見込みです。


テスラの現地LFPバッテリー生産への取り組みは、サプライチェーンの回復力を向上させるだけでなく、米国での製造拠点も拡大します。2024年だけで、テスラは国内の施設とインフラにほぼ100億ドルを投資したと、同メディアが伝えています。
この新工場の稼働により、テスラは中国への依存度を下げながら、米国製バッテリーによる競争力強化を図る戦略を本格化させることになります。
以下がテスラの公開した、LFPバッテリーセル製造工場の動画です。
Nearing completion of our first LFP cell manufacturing factory in North America pic.twitter.com/OLNRWajz4l
— Tesla (@Tesla) June 28, 2025