EVcafeで考える 第25回 by がす
テスラ「AI5」の真の狙い──自動運転ではなく“人型ロボット”だった
現在、テスラ車のコアは「HW4(ハードウェア4)」というコンピュータですが、その次の世代を担うのは「AI5」であると発表されています。「AI5」という名前からして未来感がありますが、テスラが今回発表した次世代コンピュータは、単なるFSD(完全自動運転)用ではなさそうです。むしろ、イーロン・マスクがずっと語ってきた“人型ロボット・オプティマス”のために仕込まれた兵器だと考えています。
少し大げさに聞こえるかもしれません。しかしスペックを見れば納得せざるを得ません。
自動運転に「40倍」も必要でしょうか?
AI5は現行のAI4(HW4)と比べて“ある種の指標で40倍”。計算能力は8倍、メモリ容量は約9倍、帯域も5倍近いとされています。
これは、たとえるなら「通勤に軽自動車で十分なのに、いきなり戦闘機を配備した」くらいの差です。確かに自動運転は計算が重いです。しかしAI4でも「やり方次第で十分可能」と言われてきました。そう考えると、このモンスター級の進化は、別の戦場を想定していると考えるほうが自然です。
ロボットには「脳の余裕」が必須です
人型ロボットを想像してみてください。
・目で周囲を見て判断する
・耳で声を聞き、理解する
・手先で器用に物を掴む
・足でバランスを取りながら歩く
これらをすべて同時にこなすには、とにかく余裕のある計算資源が必要になります。
現実のロボット研究では「計算が間に合わないから転ぶ」「処理が追いつかないから不器用」といった壁が常につきまといます。AI5の巨大メモリと高帯域は、この“同時処理地獄”を突破するためのものだと考えられます。
「1枚5000ドル」の意味とは?
イーロン・マスクはAIチップ1枚あたり「5000〜6000ドル」(1ドル140円として70万円〜84万円)になると話しています。これを自動車の追加オプションと考えるとあまりに高額です。ですが“ロボットの頭脳”と考えればどうでしょうか。人間に置き換えれば“脳みそ代”が5000ドルなら、むしろ安いとも言えます。
さらに量産を進めれば、2万ドル前後のロボット本体に収まるという試算もあります。家電メーカーが冷蔵庫や洗濯機を売るように、テスラが「人型ロボット」を家庭に普及させる未来が、急に現実味を帯びてくるのではないでしょうか。
その先に見える“汎用AI”
AI5のすごい点は、自動運転(FSD)専用というより“大きなAIモデル全般”に対応できる汎用設計になっていることです。大量のメモリは、画像だけでなく音声や言語を統合的に処理する「マルチモーダルAI」にも不可欠です。つまりこれは、自動車のためだけではなく「ロボットに搭載する汎用AI」への布石でもあるのです。
まとめ──“車から人型ロボ”へ
今回のAI5は、表向きは「次世代自動運転用チップ」です。しかし実際には、テスラが自動車メーカーからロボット企業へと変身するための“隠し玉”だと考えられます。
想像してみてください。街を走るテスラのクルマだけでなく、家庭や工場で働くオプティマス(ヒューマノイド)が同じ頭脳を積んで学習し続ける──そんな世界がもうすぐ現実のものとなります。
「AI5」は、その未来に向けた号砲だと感じます。
(文・がす)
上記の記事は、以下のイーロン・マスクのインタビューを参考としています。

がす(来嶋 勇人)
福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になりテスラでハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。プライベートでは2024年からイーロン・マスクの公式パロディアカウント(フォロワー240万人)からオファーをもらいイーロン・マスク(パロディ)公認のAIデザイナーとなり、ハイクオリティなAI画像をイーロン・マスク(パロディ)に提供。TikTokでは、「Elon Musk’s Mars Food」が計500万再生を記録。
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