特集&エッセイ

2024年、テスラ販売台数の動向をウォッチしていくポイントとは?

EVcafeで考える 第18回

by がす

 こんにちは、がすです!

 さてテスラは、1月24日に2023年の決算を発表し、通期では約181万台の納車となりました。

 テスラの出荷台数は、年ベースで並べると下記となります。

 2020年    50万台(+50%)

 2021年 93.6万台(+87%)

 2022年  131.3万台(+40%)

 2023年  180.8万台(+38%)

 単純に2024年もプラス40%増えると考えると約250万台という数字になりますが、話しはそう単純なものでもありません。今後の販売台数について、これから注目していくべきネガティブな要素とポジティブな要素をそれぞれ考えてみましょう。

 2024年、テスラに待ち受けるネガティブな要素

 2024年にも、テスラには乗り越えて行かなければならない困難なハードルがいくつも存在しています。

 1:中国でのEV競争の激化

 これは言わずもがなですが、中国ではEVの開発競争と販売が激化しています。先日、中国政府は電気自動車(EV)など新エネルギー車の比率を45%に高める目標を発表しました。

 中国政府は電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)を「新エネルギー車(NEV)」と呼んでおり、優遇税制で生産と販売をサポートし続けています。Clean Technica のEV販売データによると、中国ではBYDのプラグインハイブリッド車なども爆発的に売れていますが、かといってテスラの、いわゆる純粋なバッテリー式の純粋な電気自動車(BEV)が売れていないという訳ではなく、中国でBEVのシェアは27%もあり、まだまだシェアは伸びる余地があると思われます。

 中国のEVの状況はまた別の記事で詳しく研究したいと思いますが、Geely(吉利汽車)とBYDが競争を続ける中で、Xpeng(小鵬汽車)がG9などの小型で安価なSUVモデルや、Li Auto(理想汽車)のフラッグシップSUVのL9など新エネルギー車の裾野が広がっていきました。Liは中国でもテスラに匹敵する人気ブランドになっています。そしてこれら各社のEVには、日本はもちろん西欧の自動車メーカーでもまだきちんとできていない技術(インテリジェントなエアサス、3KのOLEDスクリーン、ジェスチャーコントロール、NVIDIAの最新の自動運転コンピューターOrin等)もどんどん進んでいます。つまりBYDだけがテスラのライバルではないのです。

Li AutoのフラッグシップSUV、L9(写真Li Auto Inc.)
Li AutoのフラッグシップSUV、L9

 こんな状況で戦っているテスラは、現在も上位をキープし続けていますが、中国では今年もいっそう激しい戦いになることが確実です。これが、テスラの販売数の成長を阻むネガティブ要素のまず一つ目です。

 2:米国のインフレ抑制法の動向

 2022年にバイデン政権が制定したインフレ抑制法(IRA)は非常にインパクトが大きい状況です。EV、蓄電池の開発や生産の補助金を出し、急速充電器のインフラ整備を進めて米国の脱炭素を推し進める政策です。ところが補助金の対象を、EVやバッテリーを米国内で製造した車種に限定しています。さらに自動車メーカーにとって厄介なことに、電池材料の重要な鉱物についても米国との貿易協定を結んだ国のものに限定するなど、厳しい制限がかけられています。テスラも米国で販売しているEVは米国製のバッテリーですが、この制限をクリアし続けることについては「不透明」な部分も多く、難しい舵取りとなっています。そういう意味では今年11月のアメリカ大統領選挙とあわせて注視しなくてはならないところです。

 3:ヨーロッパでのEVへの補助金カット

 欧州自動車工業会の去年末の発表ニュースによると、ヨーロッパではEVは好調であり、中でもバッテリー式の電気自動車(BEV)が全体に占める割合は、2023年の14%から約20%へと大幅に拡大すると見込まれています。ところが一方で、フランス、ドイツ政府はEV購入へのインセンティブをカットしました。特にドイツはテスラにとってはヨーロッパでの柱となる市場です。ドイツでは、メルセデス、VW、アウディ、BMWらの内燃機関車含めて並いる競合と戦いながら、尚かつインセンティブカットという逆風の中で、テスラは価格調整の綱渡りをしなくてはならなりません。

 4:その他の強力なライバル

 メルセデス・ベンツ EQE、ポルシェの新しいマカンEV、アウディの新しいQ6 e-tron、その他最初に述べた中国の高級EVが投入され続けるEV市場では、テスラのモデルX、そしてモデルYの販売数への影響も出てくるでしょう。

2024年1月25日に発表されたポルシェ新型マカン
2024年1月25日に発表されたポルシェの新しいBEV、マカンターボ

 以上が今後のテスラの販売数に影響するであろう、ネガティブな要素と見ています。

 しかし、がっかりしないでください。逆に今後、テスラの販売数アップの追い風となるであろう、ポジティブな要素もあります!

 2024年、テスラの追い風となるポジティブな要素

 1:新型モデル「ジュニパー」の登場

 新型モデル3に続き(新型モデル3では強力なパフォーマンスモデルの登場も待っています!)、今年は、プロジェクト・ジュニパーと呼ばれるモデルYのリフレッシュが噂されています。2024年末に米国発売という噂ですが、中国での激しい戦いもあるため、テスラは新型モデルY(ジュニパー)の投入を急いでいるはずです。外見、内装、快適性、静寂性なども新型モデル3同様の改良アップデートになることは間違いありませんが、新しいバッテリーのアーキテクチャによる航続距離の増加も噂されています。

テスラモデルYとハリネズミのイメージ(AI生成ビジュアル)by がす

 2:完全自動運転(FSD)バージョン12ベータの拡大

 2024年1月からごく一部の一般ユーザーへむけてFSD(Full Self-Driving)バージョン12ベータが配信され出しています。テスラの完全自動運転(FSD)のバージョン12では、エンドツーエンドのニューラルネットでAIが学習し、ハンドルやペダルを直接制御して自動運転することは以前の記事でも取り上げました。

 この本物のAIによるテスラの完全自動運転(FSD)のバージョン12はユーザーレポートが色々とYouTubeに上がっており、家の駐車場からから目的地の駐車場まで25分の自動運転で一度も自動運転が途切れなかったことや、以前はできなかった渋滞列に自動で入っていって高速道路に入ることなど、非常に印象的なAIによる自動運転を披露して人間を驚かせています。イーロン・マスクによる「雨でのトレーニングが必要」などのXの投稿から、テスラが順調に自動運転を仕上げつつあることも分かってきました。

 米国でもそうですが、この完全自動運転(FSD)バージョン12ベータが中国で展開されれば販売に多大な追い風となります。

 3:テスラの北米標準規格(NACS)の制圧

 ご存知の通り、北米の充電施設は、テスラの北米標準規格(NACS)に事実上、統一されました。これにより、米国ではテスラのスーパーチャージャー無しでは他社のEVも売れなくなりましたので、本家のテスラの販売にも好影響を与えるはずです。

テスラを運転するイーロン・マスクのイメージ(AI生成ビジュアル)by がす

 4:ギガテキサス、ギガベルリンの工場拡大

 ギガテキサス、ギガベルリン工場はまだまだ拡大されます。生産数が増えればまだ需要は飽和していませんから、販売数は必然的に伸びることとなります。もっと言いますとイーロン・マスクは全てのギガファクトリーで生産を増強する考えを明らかにしていますので、販売数は伸びていくでしょう。

 以上、上記のネガティブ要素とポジティブ要素に注意しながらウォッチしていけば、テスラの販売台数が順調に伸びるか、ブレーキがかかるのか、より踏み込んだ視点を持ってウォッチしていけると思います。

 今回は今後のテスラの販売台数についてだけに焦点を絞りましたが、引き続きテスラ自体のEVの販売台数以外の部分(AI、オプティマス、ロボタクシー、ソーラー等)もEVcafeで追いかけて行きたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします!

 (文・AI生成ビジュアル by がす、 メイン写真 提供元:Tesla, Inc. )

がす(来嶋 勇人)

 福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になりテスラでハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。

 プライベートでは2024年からイーロン・マスクの公式パロディアカウント(フォロワー140万人)からオファーをもらいイーロン・マスク(パロディ)公認のAIデザイナーとなり、ハイクオリティなAI画像をイーロン・マスク(パロディ)に提供中。そのメールをやりとりしているイーロン・マスク(パロディ)はイーロン・マスク本人だと思っている。

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