イーロン・マスク氏の宇宙開発企業「スペースX」が、新規株式公開(IPO)計画を進めているとブルームバーグなど各メディアが報じています。
このIPOでは、企業価値1兆5000億ドル相当の評価を見込んでおり、実現すれば史上最大規模のIPOとなります。
これまでイーロン・マスクは、スペースXのIPOについて否定的な発言を繰り返してきましたが、ここに来て大きな方針転換を行ったことになります。
このIPOへの動きは、AI競争の激化とスターリンク衛星インターネット事業の急速な拡大という2つの要因が考えられます。
現在、世界的なAI開発競争において、データセンターなどのインフラ投資が急務となっています。マスク氏自身もxAIを通じてAI開発を推進しており、膨大な計算資源への投資が必要です。同時に、スターリンクの全世界展開には継続的な巨額投資が求められます。従来の段階的な資金調達では、これらの資本需要に対応しきれない状況が生まれていました。
スペースXは2024年12月に約3500億ドル(約55兆円)の企業価値で評価されており、IPOによる大規模資金調達は、マスク氏にとって、テスラ株の売却リスクを避けながら、複数事業への同時投資を可能にする現実的な選択肢となり得ます。
また、スペースXのIPO計画の背景には、スターリンク事業の技術的転換点があります。第6世代スターリンク衛星は従来より大幅に大型化され、ファルコン9での打ち上げが困難になります。ここで重要な役割を果たすのが、超大型ロケットのスターシップです。

スターシップのロケット再利用スキームが完成すれば、衛星1基あたりの打ち上げコストを劇的に削減できます。これによって、大規模宇宙インフラの構築が現実的になります。スペースXは、ロケット製造から衛星開発、打ち上げサービスまでを垂直統合することで、この革新的なビジネスモデルを実現しています。
また、テスラとの相乗効果も見逃せません。EV技術、AI、宇宙技術の融合は、モビリティと通信、エネルギーを統合した新たな市場を創造する可能性があります。スターリンクの全世界通信網は、自動運転車やロボット技術の基盤インフラとしても機能し得ます。
マスク氏は「スペースXは人類を多惑星種にする」というビジョンを掲げてきましたが、IPOという選択は、その壮大な目標を実現するための現実的な資本戦略となります。2026年のIPOが実現すれば、民間企業による宇宙開発は新たな段階へと進むことでしょう。

マスク氏は12月11日、自身のXで、宇宙ジャーナリストのエリック・バーガーのポストに答える形で、スペースXのIPO計画を肯定しています。

