2023年11月9日 、インド最大手の航空会社であるLCC、インディゴ(INDIGO)を運営するインド有数の旅行・ホスピタリティ複合企業であるインターグローブ・エンタープライゼズ(InterGlobe Enterprises)と電動垂直離着陸機(eVTOL=空飛ぶクルマ)のリーダーの一つでもあるアーチャー・アビエーション(Archer Aviation)が、適切な規制当局の承認と認可を条件として、インドで全電動式エアタクシー・サービスを開始・運営するための提携に関する覚書を締結しました。
今回、インドに導入される電動エアタクシー・サービスを開発展開するアーチャーは、カリフォルニア州サンタクララを拠点に2018年に創業した、都市の航空モビリティ・ネットワークで活用される電動垂直離着陸機を設計・開発している企業です。
アーチャーは、トヨタ自動車が出資・協業し、同じくカリフォルニアに本社を置くジョビー・アビエーション(Joby Aviation)や、バーモンド州に拠点を置く、日本航空(JAL)と提携するウィスク・エアロ(Wisk Aero)と総合商社の双日と提携するベータ・テクノロジーズ(BETA Technologies)の2社と並ぶ、eVTOL 業界をリードするスタートアップ企業の一つです。また、アーチャーは、2023年8月にステランティス、ボーイング、ユナイテッド航空などの長期パートナー企業から2億1500万ドル(約326億3500万円)の投資を確保、2025年に計画している米国都市における商用電気エアタクシーの運行開始に向けて事業を加速させています。
今回、インドのデリーを中心とした慢性的な大渋滞に対応するため、インターグローブのグループ・マネージング・ディレクター、ラフル・バティアとアーチャーのCCO(チーフ・コマーシャル・オフィサー)、ニヒル・ゴエルは、安全で持続可能、かつ低騒音で地上交通とコスト競争力のある電動エアタクシー・サービスで、インドに画期的な交通ソリューションを提供すべくパートナーシップを結びました。
両社は、アーチャーの航空機を運航し、eVTOL 離着陸場(バーティポート)についてのインフラの資金調達と建設を行い、これらの運航に必要なパイロットやその他の人員を訓練するために、国内の厳選されたビジネス・パートナーと協力していく予定です。このパートナーシップでは、インド事業のためにアーチャーのeVTOL「ミッドナイト」を最大200機購入するための資金調達も計画されています。
アーチャーのミッドナイト航空機は、1人の操縦士と4人の乗客が乗れて、飛行間の充電時間を最小限に抑え、高速で連続飛行ができるように設計されています。目標は、インターグローブ・アーチャー便の乗客が、コンノート・プレイスからデリーを越えたグルグラムまでの間27km、通常車で60~90分かかる道のりを約7分で飛行できるようにすることです。
インターグローブとアーチャーは、都市部でのエアタクシー・サービスに加え、貨物、物流、医療、救急サービス、民間企業やチャーター便など、インドにおける電気航空機のさまざまな利用ケースを追求する計画です。
「インターグローブは過去20年以上にわたり、インド全土の何億人ものインド人に安全で効率的かつ安価な輸送手段を提供してきました。アーチャー社の電気航空機をインドに導入することで、効果的かつ未来的で持続可能な輸送ソリューションをもたらすという新たな機会に、私たちは興奮しています」とインターグローブのグループ・マネージング・ディレクター、ラフル・バティアは述べています。
また、アーチャーのCCOのニヒル・ゴエルは、「アーチャーの目標は、都市をより環境に優しく、よりスマートで、より効率的な場所にすることです。デリー、ムンバイ、ベンガルールを皮切りに、インドの都市にミッドナイトを導入し、国全体のモビリティを根本的に変革することを目標に、インターグローブのチームと提携できることは、これ以上ない喜びです」と語りました。
世界銀行は、2050年までに都市人口が2倍以上に増加し、世界の大都市の多くで短距離の道路通勤に2時間かかると予測しています。アーチャーの革新的な最先端の電動エアタクシーは、5兆ドル(約759兆円)の経済大国を目指すインドに、安全で持続可能な低騒音の都市モビリティ・ソリューションを提供していく計画です。
アーチャーはまた、2026年にUAEに電動エアタクシーを導入する計画の一環として、2023年の11月13日から17日まで開催されるドバイ・エアショーでミッドナイトを一般公開すると発表。この構想にはアブダビ投資庁が資金を提供しています。
一方、11月5日まで東京で開催された「2023ジャパンモビリティショー」でeVTOL「Joby」を展示したジョビーは、韓国の携帯電話事業者、SKテレコムから1億ドル(約151億7500万円)の出資を受け、イギリス、韓国、日本でネットワークを開発する計画を発表。2024年、韓国でテスト飛行を行うことを発表しました。また、ジョビーとANAホールディングスは共同で、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会により、大阪・関西万博『未来社会ショーケース事業出展』「スマートモビリティ万博」の空飛ぶクルマ運航事業者に選定されました。
これにより、両社は大阪・関西万博会期中に会場内ポート及び会場外ポートをつなぐ2地点間での空飛ぶクルマの運航を計画する事業者として参画します。ちなみに、トヨタはジョビーの筆頭株主であり、同社に4億ドル(約607億円)を投資しています。
新しい市場構築に向けて群雄割拠の空飛ぶクルマ(eVTOL)業界、今後どのメーカーが世界に打って出るのか興味はつきません。
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