BYD Auto Japanは、BYDが日本国内で販売する全モデルを対象にした「認定中古車制度」を、2024年4月19日より全国52拠点のBYD正規ディーラーで取扱い開始。また、その運用開始にあわせてBYDオフィシャルホームページ内に「認定中古車専用サイト」を開設しました。
2023年3月1日に行われた戦略発表会において、BYDは認定中古車制度の開始を発表。 BYD車のリセールバリュー(残価率)について、BYD Auto Japanの東福寺社長は以下のように語りました。
「初期のEV中古車ではバッテリーの劣化による性能の低下があったという過去の事例から、ガソリン車よりも電気自動車の方が中古車の価値は低いとされてきました。ただ、テスラや日産の新しいリーフなどもバッテリーの寿命が長くなってきていて、EVバッテリーのSOH(ステイトオブヘルス※1)も高くなってきている」
東福寺社長は、8年間または15万キロ以内で保証され、自社実験施設で4500回※2もの(0~100%)充放電に耐えうる耐久性を備えたBYDのブレードバッテリーの品質に触れ「再販される電気自動車でもバッテリーの心配はないことが浸透してくれば、自然とリセールバリューも上がってくると考えています」と語りました。
BYD Auto Japanは、2023年2月2日にショールームを備えた日本1号店となる国内正規ディーラーの「BYD AUTO 東名横浜店」をオープン。そこから2024年4月末時点で54店舗(開業準備室を含む、ショールーム完備の店舗はそのうち25拠点) まで販売網を拡充しています。
認定中古車制度では、まずディラーに展示していたデモカーやBYDの社用車で使っているEVを販売。「オークションに出して買い手がつくまで値段が下がってしまうという状態を作らないよう、正しい価値を保てるような中古車事業を展開したい」(東福寺社長)とBYDは考えています。
BYDは、今回の認定中古車制度に関して、以下の適応条件と点検の保証項目を設けています。
<BYD認定中古車の適用条件>
1:初度登録から4年未満かつ走行距離5万キロ以内(2024年時点)
2:新車登録から整備記録簿あり、修復歴・改造がない車両、レース使用車両は不可
3:BYD Auto Japanが正規に輸入した車両であること
4:正規ディーラーで全ての定期点検・車検を受けていること
5:事故車(修復歴車)の定義は日本自動車査定協会基準に従う
<BYD認定中古車の点検・保証項目>
1:点検内容:12か月点検相当
2:保証期間:新車保証+1年(最大で初度登録から5年間保証)
3:走行距離:無制限(高電圧部品保証を除く)
4:保証内容:新車延長保証に準ずる
5:交換部品:詳しくはBYD認定中古車専用サイトへ
BYD認定中古車制度、今後の課題とは?
先行する海外EVメーカーの認定中古車の立ち上げを主導、EV中古車市場の情報に詳しい、カーロテックのマネージャー、村辺多一郎さんに認定中古車制度を導入後のBYDの課題についてお聞きしました。どうやら、BYDが開始した認定中古車制度には2つの課題があるようです。
ディーラー同士の競争による中古車の低価格化
「課題の一つは、BYDがテスラなどと違って、日本メーカーと同じディーラー制をとっていることです。現状のBYDの認定中古車専用サイトを見ると、ユーザーは、中古車販売サイトへ誘導され、そこで中古車を選ぶことになります。そこでの値付けは各ディーラーによって行われているので、販売会社の規模によってオンライン上でのEVの価格が変わってきます。自然と店舗においてもユーザーとディーラー間で値下げ交渉がはじまり、ディスカウント率を高くできる販売会社の車の方が売れるという低価格競争が始まるでしょう」
実際に現時点で、認定中古車専用サイトから確認できる車両本体価格は364〜376万円となっていて、同じ仕様のATTO3間でも価格差が出始めています。
新車と中古車の価格差のコントロール
「オークションによる価格崩壊が生じる前に認定中古車制度を開始し市場に適正価格を提示したい」とBYDは考えているようですが。「ディーラー間の販売競争によって認定中古車の中から値崩れしてくる可能性がある」と村辺さんは指摘します。また、もう一つの課題は新車と認定中古車の価格差についてです。
「新車のEVを購入する際に支給される補助金は、中古車には出ません。現在、ATTO3は、国の補助金や減税処置などで約40万円の優遇を受けることができ、それに加えて自治体の補助金を適応させると、認定中古車よりも新車の方が安く買えるなんてことも……。CEV補助金は「購入後4年間は販売できない」などの条件がついてきますので、その縛りに抵抗があるユーザーは中古車を購入するかもしれませんが、この補助金との兼ね合いで中古車価格がより低価格化してくる可能性があります」
今後、どのような形で認定中古車制度を活用しながら適正価格を維持しブランドを守れるか。BYDの中古市場におけるマーケットコントロールには要注目です。
※1 新車時の満充電容量(Ah)を100%とした場合の、劣化時の満充電容量(Ah)の割合。
※2 航続距離 476kmのBYD ドルフィン ロングレンジの場合、4500回の(0~100%)充放電のイメージは、距離にして210万Kmを超え、仮に毎日(0~100%)満充電を繰り返したとしても12年以上の年月に相当。
BYD認定中古車制度の詳細は、下記WEBサイトをご参照ください。