トヨタ自動車は、電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を手がけるJoby Aviationに対し、5億ドル(約730億円)の追加出資を行うことに合意しました。これにより、トヨタのJobyへの累計投資額は8.94億ドル(約1300億円)に達することとなります。
この追加出資の背景には、トヨタ自動車創業者である豊田喜一郎氏の夢が脈々と受け継がれています。現会長の豊田章男氏に至るまで、より身近な空のモビリティの実現という想いは、トヨタの企業理念の一部として生き続けてきました。
トヨタの執行役員である小川哲男氏は、この追加出資について次のように述べています。「eVTOLの研究開発から実用化に向けて、Jobyとの協力関係をさらに深めていきます。空のモビリティには、様々な交通課題を解決する可能性が秘められており、その実現に向けてより一層努力してまいります」
一方、Jobyの創業者兼CEOであるジョーベン・ビバート氏も、両社の長年にわたる協力関係の重要性を強調しています。「トヨタのモノづくりのノウハウと支援は、我々の取り組みを大きく前進させてきました。今後も共通の目標に向けて連携を続けていきます」と述べています。
この協力関係の成果は、すでに具体的な形となって現れています。Jobyは、カリフォルニア州マリーナの生産ラインで3機目の試作機を完成させ、生産用地の拡張にも着手しました。さらに、2024年8月には航空機の型式認証プロセスの4段階目まで進んでおり、実用化に向けて着実に歩みを進めています。
トヨタとJoby Aviationの関係性についての解説動画
この進展は、2025年に開催される大阪・関西万博での空飛ぶクルマのデモンストレーションフライトにも期待を抱かせます。万博では、ANAホールディングスがJoby Aviationとの共同運航を計画しており、会場から離陸し、戻ってくる飛行を実施する予定です。これは、トヨタとJobyの協力関係が実を結ぶ絶好の機会となるでしょう。
ただし、安全審査の遅れなどから、当初政府や日本国際博覧会協会が目指していた商用飛行は見送られることとなりました。それでも、JALやANAHD、丸紅、スカイドライブなど4グループは、9月26日に一般客を乗せないデモフライトの飛行計画を公表しており、会場周辺や大阪市、兵庫県尼崎市の湾岸エリア上空を飛行する予定です。
eVTOLは、短距離・多頻度運航用に設計されており、将来的には、都市圏での通勤者や出張者、旅行者によるオンデマンド利用が期待されています。従来のヘリコプターやドローン、小型飛行機の要素を併せ持ちながら、信頼性、環境性、静粛性に優れ、運用コストやメンテナンスコストも低く抑えられるという利点があるとされています。
写真:トヨタ自動車