米テスラのCEOイーロン・マスク氏への560億ドル(約8.4兆円)の報酬支払いが、米デラウェア州裁判所により再び無効とされました。この、あまりにも巨額の報酬支払いを巡り、1年にわたる法廷闘争が続いています。
事の発端は2018年にさかのぼります。当時テスラは、マスク氏に対し、企業価値が12段階に分けて設定された目標を達成するごとに報酬を支給する仕組みを導入。これが今年1月、デラウェア州の裁判所で無効との判断が下されました。その理由は、報酬決定の過程でマスク氏が取締役会に強い影響力を持ち、独立した判断が行われなかったというものでした。
これに対しテスラ側は2024年6月、年次の株主総会に向けて、マスク氏への報酬支給について改めて株主投票を実施、賛成多数で承認を得ました。しかし12月2日、デラウェア州のマコーミック判事は「たとえ株主が承認したとしても、取締役会の独立性が損なわれていた問題は解決されない」として、再び無効判断を下しました。
この間、マスク氏は「デラウェア州で会社を設立するべきではない」と反発。テスラは6月、本社登記をテキサス州に移転しています。
なぜデラウェア州が重要なのでしょうか。同州は企業法制が整備され、裁判所の判断も蓄積されていることから、米国企業の約7割が同州で法人登記をしています。一方、テキサス州は経営者により好意的とされ、今後テスラはテキサス州で新たな報酬パッケージの承認を目指す可能性があります。
この問題は今後も続く見通しですが、マスク氏の資産は既に十分な規模に達しています。保有するテスラ株だけで約1500億ドル(約22兆円)相当。さらに最近では、トランプ氏の大統領選勝利による株価上昇で、430億ドル(約6.4兆円)もの資産増加を記録しています。
テスラ側にはまだデラウェア州最高裁への上訴の機会が残されていますが、この判決は米国の経営者報酬のあり方に一石を投じることになりそうです。
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