2025年初頭、トランプが大統領に就任する直前のタイミングで、テキサス州オースティンを訪れました。テスラオーナーズクラブジャパン(TOCJ)のギガテキサス見学ツアーに同行し、日本から10名、シンガポールなど各国からの10名(以下「シンガポールチーム」)の合計20名で3泊4日、1200キロ以上走行したツアーの模様を複数回に分けてレポートします。
EVcafe編集長 駒井尚文(@Tesla365days)
3日間、FSDテスラを集中的に体験
今回、およそ3日間にわたってテスラのFSD(監視つき自動運転)を集中的に体験しました。私たちが乗ったのは、Ver.13.2.2 でした。その後、6月になった今、FSDはVer.13.2.9までアップデートされ、オースティン市内では、テスラがドライバーレスのロボタクシーサービスを始める予定です。この状況も踏まえつつ、年頭に体験したFSDについて振り返ります。以下、私個人の感想に加え、同行していたTOCJのメンバーの意見も加えてまとめてみました。
ウインカーを車が自ら出すという衝撃
FSDのテスラは、停車している状態から発進し、スピードを上げたり下げたり曲がったりを繰り返して目的地までたどり着きます。この間、日本のテスラにおけるオートパイロットとの大きな違いは、ウインカーだと感じました。FSDテスラは、右左折や車線変更の前、「カッカッカッカッ」と自らウインカーを起動します。車が自ら「曲がりますよ」「車線変更しますよ」と意思表示をするのです。これは日本のテスラでは、ほぼ体験できません。とても新鮮で、驚きを伴う体験です。

赤信号で停車し、青信号で発進する
「信号機の認識」もFSDならではの特徴です。一般道でFSD走行中、テスラは赤信号で停車し、青信号で発進します。自動運転だから当たり前なんですが、日本ではこの機能はまだありません(日本でも、信号機はタッチスクリーン画面に表示はされます)。
赤信号時の右折にも対応
アメリカでは、赤信号でも右折がOKな交差点がありますが、FSDはそれにも対応していました。信号で一時停止し、安全を確認してから右折します。また、「STOP」(一時停止)標識では、完全にピタっと停止してから進みます。
日中でも夜間でも、パフォーマンスが変わらない
昼でも夜でも、FSDは安定していました。日光が眩しい局面でも何の不安もありません。ただ今回、テキサスでは晴天の日が続いていたので、雨のFSDドライブは経験できませんでした。
モードによって運転のアグレッシブさが違う
FSDのモードは3通り。アグレッシブな順に、Hurry > Standard > Chill となっています。Hurryだと追い越し車線を好み、追い越しも多め。Chillだと走行車線にとどまり、追い越しを行うことはほとんどありません。Standardはその中間。

障害物はちゃんと避けていく
テキサスのハイウェイでは、動物の死骸やタイヤなどの障害物が落ちているのに何度か遭遇しました。FSDテスラはこうした障害物をちゃんと避けていきます。
FSDは人間より運転が上手いのか?
「人間が運転するより上手い」の声多し
「左ハンドル右側通行」になれていない日本人ドライバーの場合、FSDに運転を任せた方が、自分で運転するより安全だと感じます。TOCJのメンバーたちも、運転する気満々でドライバー席に座った人に、「FSDで行きましょう」と圧をかける声が非常に多かったですね。
もう、これ(FSD)がデフォルトのドライブでいい
今回、FSDを体験した人のほとんどが、「もう、これがデフォルトのドライブモードでいい。こっちの方が安全だと思う」と語っていました。さらに「日本に帰って、自分のテスラを運転する気にならない 」という声も多数聞かれました。
FSD前提のアメリカ旅行をしたくなった
あと多かった意見は「FSDがあるなら、もっと頻繁にアメリカに来て、ドライブ中心の旅をしたい」というもの。私も同感です。かつて、カリフォルニアなどを旅行する際、空港でレンタカーを借りて旅を始めるケースが多かった。その後、Uberの時代になって、自分で運転しなくてもあちこち行けるようになりました。そしていま、FSDでさらに機動性が高くなったと感じます。テスラオーナーなら、「アメリカに行ったらFSDで旅をする」がファーストチョイスになりそうです。

FSDは、体験してみないとわからない
年に一回、FSDの進化を確認するためにアメリカを訪れたい
「この凄さは、実際に体験してみないと絶対にわからない」というのもまた、ツアーメンバー共通の意見でした。間もなく始まるロボタクシーが、順調に普及するといいですね。そしたら、テスラ車を借りなくでもFSDを体験することができます。個人的には、FSDとロボタクシーの進化を確かめるために、年に最低一回はアメリカを訪れたいと思っています。WaymoやZooxなど、テスラ以外のロボタクシーにも乗ってみたい。

日本でも実現してほしい。FSDで色んな問題が解決する
「日本でも是非!」というのも、FSDを体験した人全員の思いです。「免許証返納」の必要はなくなるし、「過疎地におけるお年寄りの通院」の問題も解決するし、ペーパードライバーの人たちも、FSD車なら問題なく運転できるでしょう。FSDやロボタクシーは、社会の色んな問題が解決できるソリューションになるのは間違いありません。
夕食の帰りにFSDで自宅まで帰りたい
これは私個人の切実な願いです。千葉県の内房にある私の家は、徒歩圏にレストランがなく、外食の場合は車で15分以上かけて出かけるしかありません。夜はタクシーも営業していません。つまり、外食の場合はお酒が飲めない。一日も早く、FSD(ロボタクシー)が普及してほしい。
まだ「完全」とは言えなかったFSD
ドライバー介入! 失敗事例も2回ほどあり
私の場合、およそ1200キロほどのFSD体験のうち、明らかに「これは失敗」と判定できた事例は2件ありました。1件目は、住宅地で道路工事中のエリアに侵入、走行していた時。テスラは工事現場を巧みに避けながら進んで行きましたが、最終的に、路上に立っていた「工事で行き止まり」の看板から先に進めなくなりギブアップ。人力でバックして他の道へ迂回しました。2件目は、 ハイウェイで走行車線(右側車線)を走行。本来ならばそのまま直進すべきところ、なぜか右側道に下り、左折専用レーンなのに左折せずに直進しようとしたので介入した事例。「FSD、まだまだ完璧じゃないよね」ってことが浮き彫りになりました。
駐車場エリアで立ち往生するケースが多い
ショッピングモールやスーパーチャージャーが目的地の場合、駐車場エリアに侵入したあと、どの枠に停めればいいのか判断できずに止まってしまうことが複数回ありました。また、障がい者用の枠にしれっと駐車したこともあります。駐車場での挙動は、FSDの大きな課題のひとつですね。

サイバートラックは枠線を踏むことがある
サイバートラックでFSD中、Hurryモードで走っていたら、道路左側(運転席側)の路側帯の枠線を踏んで走ることが何度もありました。これはモデルYやモデル3ではなかった現象。やはり車幅が大きいと、微妙にはみ出すこともあるんですね。
その他の挙動で軽微なバグも
ハイウェイを走行中に、前方に車がいないのに追い越し車線に移動する挙動がたびたびありました。追い越し車線に出て数秒走り、結局元の車線に戻るという謎行動。また、車線変更と言えば、ハイウェイの走行車線を走行中、路肩に停車中の車両があったり、人間がいたり、パトカーなどが停車している場合、上記のように追い越し車線に移動して、しばらく走って元の車線に戻るという挙動が見られました。これは謎行動ではなく、同じ路上にあって動いていない車や人間とは距離をとるという、リスク回避行為なんだと理解できます。

FSDは超絶快適。しかしドライバーは何をすれば?
ドライバーは眠くなる、スマホ見ると注意される
FSDは、車が自動で運転してくれる機能なので、とっても楽だし快適です。しかし、ドライバーは前方を見ている以外にやることがありません。これは日本の高速道路でテスラのオートパイロット走行をしている時も同様なのですが、オーディオ操作のためにタッチスクリーンに集中したり、スマホを取り出して操作を始めたりすると「脇見をするな」と注意されてしまいます。なので、とにかく眠気をこらえ、脇見をしないように前方を凝視するという苦行に耐えなくてはなりません(ステアリングに触れる必要はなし)。現時点では、「FSDで運転から解放されること」と「眠気や退屈を我慢する」ことはトレードオフなんですね。
個人的に、今回のFSD体験は、自分で自動車を運転するようになってから最大の衝撃体験です。ここは間違いありません。これに匹敵する体験が過去に何かあったかなと記憶を呼び起こしましたが、カーナビに初めて触れた時がちょっと近いかも知れません。「地図を見なくて済む」というのは当時はかなり感動的でしたが、FSDは「自分で運転しなくて済む」わけで、カーナビ体験とは比べものにならないぐらいの感動です。
以上、テキサス州オースティンで経験したテスラFSD ver.13.2.2 のインプレッションまとめでした。オースティンでは、6月22日から無人のロボタクシーがライドシェアを開始したみたいです。次回は、このロボタクシーを体験しにオースティンに行ってみたいですね。私たちが乗った時から、FSDがどこまで進化しているのか確かめたいと強く思います。
FSD体験、もっと詳細な動画をご覧になりたい方は、TOCJツアーに同行していたテスカス氏のYouTubeを是非ご覧ください。
テスカス氏のYouYube




