六本木の東京ミッドタウンで行われた、フェラーリ フェスティバル 東京に参加してきました。フェラーリの歴史を彩る名車の数々と、初めてのフル電動フェラーリ「ルーチェ」を目撃できた体験は、興奮とともに、ある種の納得感を覚える内容でした。その模様を2回に分けてレポートします。今回が第2回目です。
by EVcafe編集長 駒井尚文 @tesla365days

受付カウンターの右手にある扉から、フェラーリ ルーチェの展示室に入場します。グローバルマーケティング責任者のエマヌエーレ・カランドさんがプレゼンを担当します。

ルーチェ、実物を見たらめちゃめちゃカッコいいじゃないですか。独特のフォルムが未来を感じさせます。曲線も美しくてセクシーです。ガーデンに並んでいたマッチョなフェラーリたちとは全然別の乗物だって分かります。
ヴィーニャCEOは挨拶の際、ルーチェの開発について語りました。「私たちは、新しいEVを作りたかったワケじゃない。新しいフェラーリを作りたかったんだ」

そうなんです。ルーチェはフェラーリ初のEVでありながら、初の5人乗りセダンでもあるのです。
ドアは観音開きです。意外だったのでちょっと調べてみると、フェラーリは2023年から販売しているSUVタイプの4ドアモデル「プロサングエ」でも、すでに観音開きを採用していたんですね。これは知らなかった。

テールは丸みを帯びていて、ここのデザインも5月には不評だった部分です。日本人的には、ちょっとスカイラインぽい。でもこのボディ色のせいなのか、特に違和感は感じません。「何も問題ないじゃん。カッコいいじゃん」って思います。

それにしても、渋くて上品な色味です。何というカラー名なんだろう? 現場にいたカランドさんに聞いてみました。「この色は『グレーシルバーマット』です。ルーチェは400以上のカラーが選べますよ」とのこと。
「400以上! マジで? テスラのモデルYは6色しかないのに」って思いましたけど、その理由は10分後に分かりました。
7623万円、車というよりは「注文住宅」の感覚
次に案内されたのが、テーラーメイド・アトリエです。ここでは内装も、外装も、ボディカラーまで含めて、お好みの色にカスタムできます。アトリエは、マラネロ、上海、ニューヨークにあり、次は東京にも作りたいとのこと。
ルーチェの日本での価格は7623万円。そりゃあ、オーダーメイドできて当たり前ですよね。車というより注文住宅を購入するのに近い感覚なのだと思います。
ルーチェをデザインしたジョニー・アイブとLoveFrom
さて、ルーチェをデザインしたジョニー・アイブについては、2015年に出版された評伝について、個人ブログにも書いたことがあります。ページの最後にリンクを置いておきます。

ルーチェは、アイブとマーク・ニューソンのデザイン会社「LoveFrom」が、フラビオ・マンゾーニ率いるフェラーリ社内のデザイン部門やエンジニアと組んで手がけました。担当したのは外装と内装、ほぼ全体です。大きな方向性は最初からLoveFromが主導したといいます。
外装では、ガラスを多用した「グラスハウス」のようなキャビンや、ルーフ後端の柱を兼ねる「フライングブリッジ」と呼ばれる構造が特徴です。内装は、アルミ削り出しのダッシュボード、ステアリング、シフター、メーター周り、角度を変えられるセンタースクリーン、スイッチ類まで。LoveFromの担当者は「以前のクルマから流用した部品はほぼゼロ。すべて一から設計した」と話しています。

ヒューマンマシーンインターフェイス(HMI)という説明書きとともに、ステアリングやセンターディスプレイが展示されていました。それぞれ、アルミから削り出した単独のコンポーネントになっています。MacBookやiPadの筐体と同じです。

アイブ本人がとくに力を入れたのが、ディスプレイの操作体験です。テスラのように画面にすべてを集約するのではなく、物理ボタンやダイヤルを残しつつ、OLEDディスプレイと組み合わせています。
これは、幻の「Apple Car」なのでは?
「アイブがデザインしたクルマ」と聞いて思い出すのは、やはり「Apple Car」でしょう。当時は「プロジェクト タイタン」と呼ばれていました。アイブがアップルを退社したのは2019年。それまで彼のチームはApple Carのデザインにも関わっていたはずだし、退社後もLoveFromとしてコンサルを続け、「センサーを隠さず、クルマの奇妙さを受け入れるべきだ」と助言していたそうです。検討されていたのは、4席が向かい合うリムジンのような車内と、VWビートルのような丸い天井を持つ形でした。
しかし契約は2022年ごろに終了し、プロジェクト自体も2024年に中止。Apple Carは世に出ることはありませんでした。
いま、東京・六本木で間近に見るルーチェは、向かい合う座席でもなければVWビートルのような天井でもありません。しかし、現地でルーチェの前に立って、フェラーリのエンブレムを脳内でリンゴのロゴに置き換えてみると……それはまさに「Apple Car」ではないですか!
「すべて一から設計した」かどうかは置いておいて、こうやって、ジョニー・アイブの姿と一緒に映っているルーチェを見ると、ウルトラハイエンドのApple Carにしか見えません。モデル名は、さながら「Apple Car Pro Max Ultra」って感じ。

「プロジェクト タイタン」は死んではいなかった。その中心人物のひとりと共にマラネロの地に流れつき、超高級モデルとして甦った……。あくまで筆者の妄想です。
そうなると、次に気になるのはバッテリーでもモーターでもなく、チップとOSということになりますよ。やはり、クアルコムのSnapdragonでしょうか? Android Automotive? NVDIA? まさかのMacOS? いやいやそれはない。
ルーチェについて、アイブの仕事はまだまだたくさんありそうです。フェラーリ独自のOSは作るの? 自動運転は? フェラーリアプリとの連携もありますよね? 取りあえず今回、車自体の外装と内装は確認できました。あとはやはり、頭脳となるソフトウェアの仕上がりが気になります。ヨーロッパのメーカーがみんな苦労している部分ですね。
ルーチェの日本の販売枠は「ほぼ完売」
9月29日、テレビ東京のワールドビジネスサテライトで、ロマニエッロ社長のインタビューが流れていました。「日本での関心はどうですか?」との質問に、「ルーチェの日本での今年の販売枠は、ほぼ完売しました」と満面の笑顔で語っていました。
やはり、このイベント「フェラーリ フェスティバル 東京」は、もっぱら日本の上客の方々に向けたものであったと確信できました。そして、見事な成果をあげたということもまた確認できました。来年には、東京の街を走るルーチェの姿が見られそうです。エンジンを積んでいないフェラーリは、恐らく、これまで聞いたことのない類のサウンドを残して走り去っていくことでしょう。目撃する日が楽しみです。
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