EVcafeで考える 第11回
by がす
こんにちは、がすです。
以下のイーロン・マスクのツイート(ポスト)にある通り、テスラは大企業ながらベンチャーのような勢いとパワーで仕事をしています(これはスペースXなどイーロン・マスクの会社全てに通じるところですが)。そのため、日々ニュースに事欠きません。
イーロン・マスク「テスラは何年も経った今でも超ハードな会社です。テスラほどの規模で、これほど勤勉な会社は世界に存在しないと思います」
そんな状況の中、テスラは米国でサイバートラックを発売する予定ですが、まだ価格や詳細な仕様は発表していません。今後、サイバートラックの納車イベントや、実際の車の試乗レビューなど大きな盛り上がりが予想されます。さらにテスラは中国や欧州、日本で新型モデル3(通称ハイランド)を発売するため、こちらも盛り上がりそうです。
しかしイーロン・マスクの焦点はサイバートラックや、新型モデル3とはすでに先の未来のテスラへ移っているようです。
それはズバリ、「ロボタクシー」です。
ロボタクシーとは、自動運転の無人タクシー(自動運転レベル4、5)のことですが、テスラからロボタクシーの公式発表がない中、なぜここへきてロボタクシーが盛り上がっているかと言えば、イーロン・マスクが完全自動運転の再構築に成功したことが起因しています。
テスラが実現した本物のAI自動運転
近日中にリリースされるであろう、テスラの完全自動運転FSD(Full Self-Driving)のバージョン12では、エンドツーエンドのニューラルネットでAIが学習し、ハンドルやペダルを直接制御して自動運転します。それを先月8月26日にイーロン・マスクが実際にテストドライブしている模様をX(旧Twitter)でライブ放送し、その完成度が世界中で話題になりました。
テスラの完全自動運転(FSD) V11ベータではビデオゲームのような「仮想世界」を作成していました。人間のプログラマーは、その仮想世界で車を走行させるために30万行のコードを書きました。このコードには、車線内を維持する方法、車線変更、標識、信号機、前を走る車、いつ曲がるのかなど、運転に関するすべてのルールが含まれています。しかし、今回の完全自動運転(FSD)V12(イーロン・マスクによると完成形なのでベータ表記はなくなるそうです)でテスラは全てのコードを書き換えて、仮想世界を無くしました。それはエンドツーエンドのニューラルネットで学習し、ハンドルやペダルを直接制御します。まさに本物の運転AIです。
このエンドツーエンドのニューラルネットで本物のAI自動運転を実現したとデモしたのは、今のところテスラだけです。テスラは完全自動運転のため何度か全てのコードを書き換えて作り直すことを行っています。
当初はモービルアイベースだったものを、ニューラルネットと人間の命令を含む数十万行の手書きコード。そしてそれをまた8カ月前に全て書き換えて今回のFSDバージョン12となるエンドツーエンドの完全ニューラルネットワークにしました。そうです、驚くべきことに完全自動運転のプログラム書き直しから8カ月で到達しています。これだけ聞くと、テスラが8カ月で完全自動運転を実現できたのなら他社もすぐ追いつくのではないか? と思うかも知れませんが、これはかなりハードルが高いのです。
テスラのAI自動運転に競合他社がすぐに追いつけないわけは?
イーロン・マスク「自動車メーカーは完全な自動運転がどれほど難しいかを知りません。成功への唯一の道は、車専用のニューラルネットワーク推論加速ASIC、数十億ドルのニューラルネットワークトレーニングスーパークラスター、及び100億マイル以上の車両データを備えたハードコアな実世界のAIソフトです。幸運を」
AIによる自動運転のためには、AIがトレーニングする大規模なスーパーコンピューター(上記のイーロン・マスクの言うクラスターとは連携してタスクを実行するサーバーの集合のことです)が必要ですが、そのAIが学習するための実際の様々な走行ビデオが大量に必要です。テスラは人間の運転方法を記録した数十億フレームのビデオを使って、運転方法をAIに学習させました。テスラEVにはカメラが8台付いており高品質な走行の動画データをキャプチャーできます。そのEVがすでに世界中で販売され、世界中で走行しています。
こんな車群は地球上にテスラ以外存在しないのですが、それだけではなくテスラは「シャドーモード」という機能をテスラ車のプログラムに入れています。これはユーザーが手動で運転している間、バックグラウンドで自動運転との違いを検証してデータをテスラへ送ることができます。他には現在30万台を超える完全自動運転のユーザーが自動運転中に、人がハンドルやブレーキなどで介入したシーンも記録できます。つまり、単なる自動車走行のビデオがA Iの学習教材になるだけではなく、テスラの場合、シャドーモードや実際にドライバーが介入した部分をフィードバックできる。AIが学習するための良質な「活きた」素材を、テスラは入手できる環境を作っています。
他の自動車メーカーにとってEV(車)は必ず売れるというものではありませんから、例えAIコンピューターやカメラを搭載しても、車がたくさん売れて各地に広まらなければ、テスラのような環境は作り出すことができません。
そういったデータからAIが学習することで、テスラはここ8カ月でAIによる自動運転に目処がたったのですが、今後、更なるAI学習用に自社で専用チップから開発したスーパーコンピューターDojoの使用が拡大されていきます。
その前に先日、テスラのAIチームが 1万個の Nvidia H100 GPU で構成される新しいコンピューティング クラスターを稼働させたことも発表されました。(レンタルではなくテスラが実際に所有しており垂直統合されています)
つまり自動運転のAIができたので、学習をどんどん進められるわけです。今後、さらに指数関数的に賢くなっていくことが予測されます。
これらを他社が真似することは容易でないことが分かると思います。他社がAIでの自動運転の開発に取り組むにはもはやハードルが高すぎるのです。
そしてロボタクシーへ
頭脳は目処がついた。いよいよハードの車です。
ウォルター・アイザックソン著の「イーロン・マスク」伝記が話題になる中、
CBSがその取材で開発中のテスラのロボタクシーのモックアップ映像を流しました。
実はイーロン・マスクは9月に1度だけ、ロボタクシーについてX(旧Twitter)で反応したことがあります。それはテスラファンがロボタクシーの予想でサイバートラックにインスパイアされたデザインを出した時に、
「違う。しかし、ロボタクシーは未来的なデザインになるだろう」
そしてそれがおそらく、イーロン・マスクの伝記に掲載されて、最近のCBSでも流れたモックアップの横に貼ってあったデザインのこれがイーロンの言うロボタクシーのデザインでしょう。
モックアップと合わせて見てください。ハンドルもアクセルもブレーキもありません。ふたり乗り(ただし運転手はいません)。後ろは荷室です。3輪に見えますが、イーロン・マスクが言うには3輪は安全性が低いため4輪になるようです。
イーロン・マスクはこのロボタクシーを本当にハンドルもアクセルもブレーキも無く発売すると思われます。(詳しくは伝記を読んでみてください)
AIで自動運転するハンドルもブレーキもない無人のロボタクシーをテスラが初めて出す。ここにイーロン・マスクのこだわりがあリます。
そして、テスラの次世代小型EVと言われる2万5000ドルのEVはこのロボタクシーとプラットフォームを共有するでしょう。もちろん、2万5000ドルのEVの方はデザインとプラットフォームは同じですがこちらはハンドルとアクセル、ブレーキも付くはずです。(ハンドルはオプションで選ぶことになるかも知れません)。狭いながら後部座席もあると予想します。
テスラのロボタクシーについては、まだテスラからは公式発表がなく、伝記から漏れる写真や情報から憶測が広がっています。しかし、ずっと以前からイーロン・マスクはロボタクシーについて語っており、ロボタクシーを買った人は、ライドシェアとして有料で貸し出して個人でも副収入を得ることができるとまで言っています。
最初は正直、完全自動運転も完成してないのにロボタクシーでのビジネスなんて考えるのは早すぎると思っていましたが、今回のAIによる自動運転に目処がついたことや、想像以上に開発が進んでいるデザインや機能を知るにつれていよいよテスラのロボタクシーが現実味を帯びてきたという印象です。
イーロン・マスクによる、「テスラのハンドルもブレーキもアクセルもないロボタクシー」への全賭け。
いよいよ完全自動運転が、ロボタクシー実現という新しい展開が、もうすぐ生まれます!
EVcafeでは気になるテスラの「ロボタクシー」についても引き続き、独自の視点でも追いかけていきますのでお楽しみに!
がす(来嶋 勇人)
福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になりテスラでハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。
プライベートでは2024年からイーロン・マスクの公式パロディアカウント(フォロワー140万人)からオファーをもらいイーロン・マスク(パロディ)公認のAIデザイナーとなり、ハイクオリティなAI画像をイーロン・マスク(パロディ)に提供中。そのメールをやりとりしているイーロン・マスク(パロディ)はイーロン・マスク本人だと思っている。
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