三菱HCキャピタルのグループ会社である三菱HCキャピタルエナジー、および三菱オートリースは、EV・充電インフラ、さらには、その電源としての再生可能エネルギーの供給を含めたEV導入・運用に必要な統合型サービスの提供開始を2023年9月1日に発表し、事業を展開しています。
現在、モビリティ業界では、環境負荷の低減や人流・物流の効率化、安全性の向上といった社会的課題の解決が求められており、なかでも、政府の戦略目標として、2035年までに、国内における乗用車の新車販売において電動車 100%の実現が定められたことから、EVの普及は業界全体の重要課題となっています。そのようななか、2021年4月に、銀行・商社系のリース会社である三菱UFJリースとメーカー系の日立キャピタルの統合によって誕生した三菱HCキャピタルは、2023年5月に公表した「2023~2025年度中期経営計画」において、組織横断で取り組む重要テーマの中に「EV関連」「脱炭素ソリューション」を設定、グループ各社およびパートナー企業とともに、企業のEV導入をサポートすることで、カーボンニュートラルの実現に貢献していくことを掲げました。
三菱HCキャピタルは、国内リース業界3位となる1兆8962億円の売上高〔2023年3月期(連結)〕を誇る大手総合リース会社
この統合型サービスでは、初期費用なしで、EV、充電機器の導入、運用、その設置が可能な駐車場および再エネの供給を統合的に提案するサービスをワンパッケージで提供することで、グループ各社が連携しながら企業のEV導入および CO2削減に貢献することができるのです。
今回は、本プロジェクトを推進する、三菱HCキャピタルのモビリティ事業部 西村祐哉課長代理と再エネの運用を担う三菱HCキャピタルエナジーの事業開発部 宮﨑純平部長にお話をお聞きしました。
「日本の企業に関しては、オフィスビル、工場での省エネや脱炭素、CO2削減というのは昔から取り組まれていると思いますが、その中のEV化というのは、多くの関連したアセットを有する当社グループにとって取り組みやすい部分です。同時に、欧州や中国の昨今のEV化のトレンドが、現在、黎明期の日本にも押し寄せてきて、来年、再来年と、よりEVが活発に導入されてくる流れになるはずですから、グループとして向き合うべきテーマとしました」と三菱HCキャピタルのモビリティ事業部 西村課長代理は語ります。
本事業では、三菱HCキャピタルのグループ会社である三菱オートリースがEVのリースおよびフリートマネジメント機能の提供を担い、親会社の三菱HCキャピタルが三菱HCキャピタルエナジーと連携し、再エネやEV充電インフラ、エネルギーマネジメントなどの部分をサポートする形で、EV導入を中心としたサービスのパッケージを作っていきます。西村課長代理によると、その第一歩は、駐車場へのEV充電器設置に対する悩みを聞くことだそうです。
「現状、多くの企業から『そもそも自社の駐車場にEV充電器を置けるのでしょうか?』という質問をいただいています。特に都市部の多数の企業の方々は、機械式、タワー式と呼ばれる駐車場を使っていて、EV充電器が設置できないと悩まれています。そこで、色々なパターンの駐車場でEV充電器が使えるようにしたり、駐車場の変更を提案したりと、 関係会社と連携をしながらEV充電器が設置できる方法を提案して、企業のEV化の支援をしたいと考えています。どのような環境の駐車場を使っている企業でもEVが使えるようになる、それこそが、この統合型サービスの長所かと思います」
三菱HCキャピタルでは、カーボンニュートラルを目指すグローバルな大企業だけでなく、中小企業も含む幅広い企業に向けてサービスを展開します。普通の社用車だけでなく、バスやタクシー、運送用トラック、自治体や省庁などが有する公用車、パトカー、救急車など、どのような種類のEVカーを選択する場合にも、この統合型サービスで対応が可能です。
また、本サービスでは、グループ会社の三菱HCキャピタルエナジーが同社としてはじめてとなる小売電気事業を開始、非化石価値のある電力供給を行い、統合型サービスのエネルギーの側面を支えます。
三菱HCキャピタルグループは、再エネ発電所の開発や管理、その運用を手掛けており、国内では業界トップクラスの約1.2GWの運転開始済み再エネ電源を保有しています。その再エネの運用を担う三菱HCキャピタルエナジーは、本件を契機に、同社が開発・保有する再エネ発電所を活用した小売電気事業として、非化石価値のある電力の供給を推進していきます。
これまで、三菱HCキャピタルエナジーは、再エネの発電事業者として主にFIT 制度(固定価格買取制度)を活用して太陽光発電所の開発・運営をしてきました。日本の太陽光発電所は、発電した電気を20年間電力会社が定額で買い取ってくれるというFITを活用したものがほとんどでしたが、そのFITも2022年以降、順次終了。三菱HCキャピタルエナジーは、これから開発していく非FIT電源や運開済のFITの電源を活用すべく、発電事業者でありながらも、小売を展開することとなったのです。
ただ、今回、統合型サービスで使う予定の10kWと想定されている日本中に点在するEV充電器を、発電事業者が保有する大型の太陽光発電所からの供給によって再エネ化することには課題がある、と三菱HCキャピタルエナジーの事業開発部 宮﨑部長は語ります。
「電気には同時同量という、発電した電気と使った電気が常に一致しなければならない物理的な法則があります。一台10kWをベースに考えると、企業がEVで使う電気に対して、再エネ事業者が保有する発電所の発電量では、桁が2、3桁違ってくるので、1000のものを100に分割して供給するような難しい作業が、日本全国に点在した10kWの充電器に電気を供給するために必要となってしまいます。そこで、この統合型サービスの理想的な活用方法は、工場そのものを再エネ化することでカーボンニュートラル工場にして、そこで使われる社用車にEVを導入するというような形です。それであれば、我々が再エネを効率よく供給することで、企業のカーボンニュートラルへの支援を円滑に行うことができます」
グループとして、この統合型サービスに取り組む三菱HCキャピタルは、2023年8月より、実験的に自社の中四国支店が使用する営業車をEVに切り替え、9月には非化石価値のある電力の受給をスタートしました。
三菱HCキャピタル モビリティ事業部の西村課長代理は、「今後、全国の支店への展開を図るとともに、引き続き、お客さまのニーズや事情に応じて、さまざまなソリューションを開発、提供していきたい」と締めくくりました。
メインカット:北海道苫小牧市にある三菱HCキャピタルエナジーの自己投資発電所 (設定容量は29.8MW)