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「ミラノ」という呼称は違法? アルファロメオの新型スポーツコンパクトが「ジュニア」に名前を変更してデビュー!

 アルファロメオは、2024年4月15日に「アルファロメオ:ミラノという名前はダメですか? それなら『アルファロメオ ジュニア』にします!」というリリースを発表。4月10日に「MILANO(ミラノ)」として発表した新型コンパクトカーの名称をわずか5日で「アルファロメオ ジュニア」に変更するとしました。

「MILANO(ミラノ)」から「アルファロメオ ジュニア」に名称を変更
「ミラノ」から「アルファロメオ ジュニア」に名称を変更

 アルファロメオ初の量産BEVとハイブリッドのラインアップからなるスポーツコンパクトの「ミラノ」は、発表するやいなや大反響を呼び、ヨーロッパで発売されたローンチバージョンは、「オンライン見積にアクセスが殺到し、一時公式サイトがパンクするほどだった」とアルファロメオCEOのジャン=フィリップ・インパラートが語るほど好調なスタートを切りました。

 そんな市場の反応からも分かるように、このミラノというモデルは、アルファロメオフファンにとっても長らく待ち続けた待望のモデルだったのです。

待望のモデルだったアルファロメオジュニア(旧ミラノ)
ファン待望のモデルだったミラノ(現アルファロメオ ジュニア)

 振り返ると、2021年のステランティス設立時に策定された長期製品計画の戦略「From 0 to 0(フロムゼロトゥゼロ)」によって、赤字続きだったアルファロメオの業績は、同年の下半期に黒字に転換。

 その戦略では、2021年時点でEVが「0」だった状況から、2027年までに全ラインアップを排出ガス「0」モデルにして、自動車業界全体で最も早く電動化へ移行するという目標が掲げられました。

 また、毎年1つの新型モデルを投入するとされたこの計画において、初の量産BEVモデルを含めた新車は、ヨーロッパで最も大きなEV市場と目されるBセグメントへ切り込む重要な一台だったのです。

 シークレットに包まれた新しいコンパクトカーの発表に至るまで、2023年6月には、当時まだ「kid」と呼ばれていたBセグメントに向けたコンパクトSUVの名称を募集、同年12月には「アルファロメオ『Milano』、その名前に込められた歴史」というリリースで名称を発表するなど、これらの情報を段階的にリリースしながら「ミラノ」という名称が持つインパクトでユーザーの期待を膨らませ続けたのです。

2023年6月のLINK(LinkedIn)でのアルファロメオ、ニューモデル名称募集

 そのスポーティなコンパクトカーにアルファロメオがつけた名称が「ミラノ」。これは、1910年6月24日にアルファロメオが生まれた都市の名前でもある「ミラノ」に由来していました。また、アルファロメオのエンブレムには、創業以来、ミラノがあるロンバルディア州都のシンボルである十字架と、ミラノを象徴する貴族ヴィスコンティ家の紋章のビショーネ(蛇)といった、ミラノを象徴する2つのシンボルが描かれており、創業から60年以上にわたって(1910年から1972年まで)、そのエンブレムの下部には「MILANO」の名が記されていました。

2023年12月に「ミラノ」と決定とリリース
2023年12月に「ミラノ」と決定とリリース

 しかし、これらをもとにアルファロメオが選んだ「MILANO(ミラノ)」という名前の使用について、イタリア政府より「法律で禁止されている」との発表がありました。

 今回の4月15日のリリースでは「この名前(ミラノ)はす​​べての法的要件を満たしています。新しいクルマの名前よりも重要な課題が(政府には)あると信じています」「この議論によってもたらされた無料の宣伝に対し、政府に感謝します」とイタリア政府に対してチクリとコメントしながらも、アルファロメオは「相互促進の精神から、名前を『ミラノ』から『アルファロメオ ジュニア』に変更することを決定」と発表しました。

 そして4月16日、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ国際家具見本市」に合わせてミラノの街中で展示会が開催される「ミラノデザインウィーク」にて、アルファロメオ ジュニアは、初めて一般公開されました。同じくメイドインイタリーの品質で一世紀以上の歴史を持つクラシコイタリアブランドの名門ラルスミアーニとのコラボレーションにより展示されています。

ラルスミアーニとのコラボレーションによりミラノデザイナーウイークでデビューしたアルファロメオジュニア
ラルスミアーニとのコラボレーションによりデビューしたアルファロメオ ジュニア

 世界中から人々が集まるミラノデザインウィークにおいて、街と同じモデル名の「ミラノ」をデビューさせるというアルファロメオの思惑こそは外れたものの、一度限りのお披露目後の車名変更という、自動車業界では珍しい予期せぬ話題により、アルファロメオ ジュニアは、世界が注目する中での一般展示となったのです。

世界中から人々が集まるミラノデザインウィークにて一般展示
世界中から人々が集まるミラノデザインウィークにて一般展示

 では、アルファロメオ入魂のモデル名「ミラノ」の代わりとしてつけられた新しい名称「アルファロメオ ジュニア」は何に由来しているのでしょうか? アルファロメが「ユニークなストーリーと多くの候補があるなかで、名前の変更は大きな問題ではありませんでした」とコメントした通り、同社の歴史には数多の名車が揃っており、ジュニアもその中の一台です。

 1960年代、ベルトーネ時代のジョルジェット・ジウジアーロがデザインした美しいフォルムのジュリアのライアンアップに、アルファロメオが加えようとしたのが「GT1300ジュニア」でした。当時、ジュリアとそのクーペバージョンであるジュリア・スプリントGTの成功に続き、同社が目指していたのは、過度な購入費用やランニングコストをかけずに、華麗で高級なクルマを熱望する若者層を惹きつける車でした。

 1966年9月26日、バロッコで発表されたGT1300ジュニアは、「ジュリア」という名前こそなかったものの、アルファロメオの新世代を牽引する存在となりました。実際、スパイダーシリーズの類似バージョンもジュニアと識別されています。GT1300ジュニアの1290ccツインカムエンジンは、単一電源と新タイミングにより89psを発揮し、最高速度は170km/hを超えました。ボディワークも、より若々しい専用トリムに刷新。GT1300ジュニアは、若年層の新しい市場を切り開きつつ、販売台数9万2000台を超えるベストセラーを記録、当時のアルファロメオのステータスシンボルとなりました。

GT1300ジュニア
GT1300ジュニア

 このように振り返ると、先日まで「ミラノ」と呼ばれていた新しコンパクトカーは、機能性に優れていて華麗でいながら過度に高級すぎないGT1300ジュニアに近い、新世代型モデルと言えるかもしれません。

 欧州EV市場で最も大きいとされる、コンパクトカーのBセグメントでヒットしそうな、この新モデル「アルファロメオ ジュニア」。アルファロメオのホームページによると、初回限定バージョンである「JUNIOR SPECIALE(ジュニア スペチアーレ)」の現在の価格は、BEVのエレクトリカが4万1500ユーロ(約680万円)、ハイブリッドのイブリダが3万1900ユーロ(約530万円)となっています。日本でアルファロメオを展開するStellantisジャパンによると、アルファロメオ ジュニアの日本発売に関しては現在未定とのこと。

 ミラノ改めアルファロメオ ジュニアは、欧州でこのまま好調な売り上げを続けて GT1300ジュニアのようなアルファロメオを代表するモデルになることができるのか? 要注目です。

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