クルマの先端技術展である「オートモーティブワールド2024秋」(第3回東京展)が、2024年9月4日から6日まで千葉県の幕張メッセで開催されました。BEV(電気自動車)やSDV(ソフトウェアが定義する車両)などのモビリティに関連する次世代の先端技術や製品が出展された他、主要企業のトップや技術者、研究者などが登壇する各テーマのコンファレンス・シンポジウムも見どころでした。
今回、実際にクルマの展示があったのは、中国のBEVをマルチブランドで輸入するファブレスメーカーのアパテックモーターズ株式会社(東京都港区)の2台のBEV。そのうちの1台は、日本初上陸となる中国の新興メーカー、合衆新能源汽車(Hozo New Energy Automobile)が生産する「NETA Aya」(現地名:哪吒V)です。このモデルは、海外での販売を強化しており、特に中国メーカーの進出が加速するタイでは、2024年上半期に新エネルギー車部門で第3位にランキングされた実績があり、次いでマレーシア、インドネシアなどにも進出し始めています。
それらの国々においてNETAのBEVは、220万〜399万円の価格帯を中心に展開。今回披露された、NETA Ayaのタイでの販売価格も、54万9000~76万バーツ(約220万~320万円)となっています。
NETAは合衆新能源汽車の車種ブランドで、同社は2014年10月に設立された新興メーカー。BEV製品の質を上げることで競争力を高め、東南アジアを中心とした海外の市場でも広く受け入れられています。
アパテックモーターズの関係者によれば、「NETA Aya」は次世代へ向けたインテリジェントな高品質の小型BEV。今回公開されたモデルは、日本と同じく車両が左通行のタイ、シンガポール、香港で販売されていて、日本市場にも対応する右ハンドル仕様。インテリアは14.6インチの縦型センターコントロールスクリーンが配置され、このスクリーン上でエアコンやオーディオなどの操作が可能です。
インナーパネルは12.3インチの横型デジタルで、こちらにも走行情報が映し出されます。シートはレザー調であり、このクラスではややプレミアムな印象を受けます。一方、パワートレインは最高出力70kW、最大トルク150Nmのモーターを搭載し、満充電で401kmの航続距離(NEDC)、バッテリー容量は40.7kWhで、中国で主流のリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFPバッテリー)を採用しています。展示車両の充電コネクターは中国GB規格でしたが、30分で80%近くまで充電できるとのことです(普通充電は6~8時間で満充電)。
もう1台の展示車両は、アパテックモーターズが日本市場に向けて企画し、中国メーカーの東風汽車が製造しているOHKUMA(大熊CAR)というブランドのTX-2000というモデルです。中国では、スマートキャビン・SDV(ソフトウェアが定義する車両)化が進んでいる中で、過剰な装備は省き、日本仕様としてシンプルなデザインを採用。パワートレインは最高出力34kW、最大トルク102Nm、バッテリー容量は16.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載しています。
NETAブランド車を日本に初上陸させた狙いとして、アパテックモーターズの孫峰社長は、「日本はBEVの普及率が諸外国に比べてまだ低く、その需要の拡大に期待しています。日本のユーザーは環境意識が高く、新エネルギー車に関心を寄せていることが背景にあります」と語りました。アパテックモーターズは、日本におけるNETAの総輸入元として事業展開を進めていく方針です。
一方、先行して日本市場に導入済みのOHKUMA-TX2000については、都市部でのカーシェアリングサービスを準備。車両代金月額9800円(メンテナンス費用や保険料は別途)というリーズナブルな価格でのカーリースが予定されています。
また、同社は、東京の中心・港区麻布地域において、「AZABU GO」というサービスを地元商店街などと共同で進めています。孫社長は、「日本の消費者が本当に必要な車、使いやすい車、気軽な車」の導入を目指しており、「日本」にこだわる姿勢を示し、今後のモノづくりにおいても「日本製品・部品を積極的に採用していく」としています。
(文・写真:芮一燦、方竹紫)
方竹紫 株式会社現代文化研究所 主事研究員
東京大学総合文化研究科修士課程修了(現在、同校の経済学研究科博士課程に進学、中国産業研究第一人者の丸川知雄研究室にて中国の半導体産業を研究)。中国を中心とするモビリティの調査研究を実施し、今後の産業動向を分析
芮一燦 株式会社現代文化研究所 主事研究員
東京都立大学大学院博士後期課程出身。日中経済関係や有権者行動などを研究。前職にて、機械学習モデルを用いた広告施策効果分析、キャリアユーザーのセグメント分析など経験。現在、自動車ユーザー行動調査、AI・自動運転開発動向調査、訪日インバウンド企画など担当
現代文化研究所は、トヨタ自動車が全額出資するトヨタグループの調査研究法人
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