電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第51回
by じんべい
2021年、世界中の自動車メーカーが工場を止めました。原因は半導体不足。トヨタもフォルクスワーゲンも、チップが足りずに生産ラインを止めるという前代未聞の事態に陥りました。あれから5年。再び半導体争奪戦の足音が近づいています。インテル、マイクロン、サンディスクといった半導体・メモリメーカーの株価が急騰し、AIデータセンター需要の爆発的拡大が引き金となった新たなチップ争奪戦が始まっています。

年初来株価パフォーマンス比較、半導体・メモリーメーカーの急騰が凄まじい(出典:Google Finance)
テスラ投資家の間に「半導体が足りなくなったら、テスラはどうなるの?」という懸念が静かに広がるのも無理はありません。ところが調べてみると、テスラの打ち手は懸念どころか、むしろ攻めの一手でした。
1. テスラはそもそも、どれだけ半導体が必要なのか?
まず半導体(チップ)について簡単に整理しておきましょう。半導体とは、スマートフォンやパソコンの中に入っている電子部品の心臓部のことです。テスラのEVにもたくさんの半導体が使われていて、特にFSDを動かすためのAIチップは、非常に高性能なものが必要になります。
テスラのEV1台には約2500〜4000個もの半導体が搭載されており、特にFSDを担うAIチップ部分は大量のメモリを消費します。テスラは現在「AI4」というチップを使っており、次世代の「AI5」の開発も完了。さらにその先の「AI6」も開発中という、独自のロードマップを歩んでいます。

さらにスケールが一段と大きくなるのが、オプティマスの量産が本格化する2027年以降です。試算によると、オプティマスだけで年間2億個以上のチップが必要になるとも言われています。
AIデータセンターを席巻するGoogle、Microsoft、Metaといった巨大テック企業と、テスラは同じ高性能チップの製造枠争奪戦に参加しているわけです。この構図を理解しておくと、次の話がより面白くなります。
2. 短期的には、コスト上昇のリスクは正直ある
2026〜2027年にかけて、高性能メモリや半導体の供給はAIデータセンター向けにほぼ事前予約済みの状態。価格は上昇し、納品まで時間がかかる状況が続いています。
テスラにとって、次世代チップ「AI5」の量産開始とオプティマスの初期生産が同時期に重なる今年後半は、注意すべき点があります。ただし、AI5量産立ち上げ初期の歩留まり低下や、オプティマス生産の立ち上げコストが、一時的な利益率プレッシャーになる可能性は頭に入れておく必要があります。
イーロン自身も繰り返し「供給チェーン(部品の調達・製造・流通の仕組み)が最大のボトルネックだ」と指摘しており、外部の工場だけに頼っていれば必要な量を揃えるのに5年かかると明言しています。
ただ——ここからが本題です。テスラの打ち手は他の会社とは全く異なります。
3. テスラが打った手は、他社とは次元が違う
テスラは単に「半導体不足に悩まされる会社」ではなく、「不足そのものを自分で解決しようとしている会社」なのです。
まず次世代チップのAI5は、世界最大の半導体受託製造メーカーであるTSMCとサムスンの2社で並行生産する戦略を採っています。1社に頼るリスクを分散させるわけですね。しかもサムスンとは2033年まで総額165億ドル(約2.5兆円)という大型の長期契約をすでに締結済みで、安定供給の確保に動いています。
しかし、最大の切り札はその先にあります。それがテラファブです。
テラファブとは、テスラ、スペースX、xAIが連携して進める巨大半導体工場プロジェクトです(「テラ」は超巨大、「ファブ」は製造工場の意味)。テスラはギガテキサスのキャンパス内に研究用の小型ファブを約30億ドルで建設し、チップを作っては試し、改良してまた作るという高速開発サイクルを自前で回す拠点にします。大規模な量産ファブはスペースXが主導し(初期投資550億ドル・総額最大1190億ドル)、テスラはその共同利用者として恩恵を受ける構造です。

要するに、「チップが足りないなら、仲間と一緒に工場ごと作ってしまえ」というイーロンらしい発想です。半導体不足という業界全体の制約を「外から調達する」のではなく「自分たちで解決する」——この戦略は、他のEVメーカーには真似のできない次元の話です。
4. テスラ投資家として、何を見ておくべきか
整理してみましょう。
短期的には、AI5量産とオプティマス初期生産が重なる2026年後半にコスト上昇のプレッシャーがかかる可能性があります。これはテスラ株の値動きが荒くなる要因として頭に入れておく必要があります。
一方、中長期で見ると、テラファブが本格稼働し始める2027年以降、テスラは逆に半導体の供給で優位に立てる可能性があります。テスラ、スペースX、xAI合計で年間1000億〜2000億個のAIチップが必要になる——これがテラファブの生産目標の根拠であり、既存の外部工場では到底追いつかないスケールだからこそ、自前化を急いでいるわけです。
インテルやマイクロンの株価急騰を眺めながら、テスラ投資家が本当に問うべきことはこうではないでしょうか。
「半導体不足の恩恵を受けるのは誰か」ではなく、「半導体不足を自ら解決できる会社はどこか」と。
その答えは、すでに出ているかもしれません。
まとめ:半導体不足はテスラの「敵」ではなく、「差別化の舞台」
半導体不足という問題は、テスラだけが直面しているわけではありません。しかし、業界全体が「どこから買うか」を悩んでいる中で、テスラだけが「どうやって作るか」を考えている。この発想の違いが、5年後、10年後の競争優位を決定づける可能性があります。
チップを制する者が、AIとロボティクスの時代を制する。その舞台で、テスラはすでに独自の一手を打っています。
半導体不足が業界全体を悩ませる中で、テスラだけが独自の解決策を持っている。この事実は、長期投資家としてテスラを評価するうえで、じんべいが最も重視しているポイントの一つです。これからもこの動向をしっかり追っていきましょう。

文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約3万人。 X(Twitter)フォロワー数:約1万人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

