スズキのインドにおける生産販売子会社、マルチ・スズキ・インディア・リミテッド(MSIL)は1月17日、インドのニューデリーで開催中のバーラト・モビリティ・グローバル・エキスポ2025にて、EV化が加速するインド市場へ向けた同社初となる電気自動車(BEV)のSUV「eビターラ」を発表しました。
eビターラは、2024年11月にイタリア・ミラノで初公開されたスズキのBEV世界戦略車第一弾です。新開発の電気自動車専用プラットフォーム「HEARTECT-e」を採用し、49kWhと61kWhの2種類のバッテリーをラインナップ。上位の61kWhモデルでは1回の充電で500km以上の航続距離を実現します。性能面では、49kWhモデルで最高出力105.8kW、61kWhモデルで128kWを発揮し、最大トルクは192.5Nmを達成しています。
車両のサイズは全長4275mm、全幅1800mm、全高1640mm、ホイールベース2700mmで、最小回転半径5.2m。インテリアは25.65cm(10.1インチ)と26.04cm(10.25インチ)の2画面ディスプレイを採用しています。
充電インフラ面では、「e for me」と名付けた包括的なEVエコシステムを展開。自宅用スマートチャージャーの設置支援や、インド国内1000都市以上、1500カ所のEV対応サービス拠点の整備を進めています。
スズキ・モーター・コーポレーション 代表取締役社長の鈴木俊宏氏は展示会で、同車がMSILのグジャラート工場で生産される「インド製EV」であることを強調。「EVを魅力的な商品とするため、最適な性能を実現するEV専用プラットフォームの開発、市場ニーズに合わせた商品開発、グローバルな規模の経済を活かすための一極生産体制という3つの戦略を掲げています」と述べ、その生産拠点として品質の高さとスケールメリットを活かせるインドを選択したことを説明しました。さらに、同市場において「EVでもトップシェアを狙う」と意欲を示しています。
インドで発表されたeビターラ
インド政府は2030年までに乗用車の新車販売におけるEVの割合を30%に引き上げる目標を掲げており、スズキもこれに呼応する形で、2030年度までにインドでのEV販売車種を6車種に拡大し、乗用車販売に占めるEVの割合を15%にする目標を設定しています。
なお、インド市場ではライバル各社もEV展開を加速しており、シェア2位の韓国ヒョンデ(現代自動車)は本展示会に合わせて小型SUV「クレタ」のEVを発売。タタ・モーターズもSUV「ハリアー」や小型車「ティアゴ」の新型EVを展示し、製品ラインナップの充実を図っています。
調査会社JATOによると、インドの2024年の新車販売台数は、前年比4%増の486万台で、スズキがシェア首位の37.2%を占めています。一方、EV市場においては、全体の販売台数12万台あまりのうち、現地財閥のタタ・モーターズが61.7%という圧倒的なシェアを持っており、スズキにとって初BEVとなるeビターラは、同EV市場における重要な戦略車として位置づけられています。
eビターラは10色のボディカラーと4種類のツートンカラーをラインナップ。現段階では価格は発表されていませんが、2025年春より生産を開始し、同年夏頃から販売をスタートする予定。さらに、インドから欧州、日本、東南アジア、中南米、アフリカなど世界100カ国以上への輸出も計画されており、トヨタ自動車への供給も予定されています。