特集&エッセイ

テスラのAIトレーニングコンピューター Dojoが製造開始! NVIDIAとテスラについて考える

EVcafeで考える 第3回

by がす

 テスラが、6月22日にいきなりTwitterで以下のテスラAI専用アカウントの更新をスタートしました。

 一体、何が起こっているのでしょうか?

 この22日のツイートの中でテスラは興味深いグラフを掲出しました。それが以下のグラフです。

テスラがツイートしたグラフ
TESLA AI に掲出されたグラフ

 このグラフには、7月23日に「Dojoの生産スタート」とあります。つまり、2022年9月のテスラのイベント「AI Day 2022」でもイーロン・マスクが詳細を明らかにしたニューラルネットワークのトレーニング用のスーパーコンピューター「Dojo」(ドージョー)が、ついに生産開始し、大規模に性能拡大していくというわけです。ちょうどその1カ月前の告知といったところでしょうか。

TESLA トレーニング用コンピューター Dojo
テスラ  スーパーコンピューター Dojo

 そして、テスラが自社開発したスーパーコンピューターDojoの生産開始を伝えた、その1カ月前に、AI開発のスーパーコンピューターという視点で関連しそうな別のニュースがありました。

 それは半導体の大手NVIDIA (エヌビディア)がAppleらと並ぶ時価総額1兆ドル(約140兆円)の巨大テクノロジー企業になったというニュースです。NVIDIAはAI開発に使われる半導体のGPUを設計、開発し、スーパーコンピューターに搭載して販売しています。ご存知の通り、最近話題のChatGPT(OpenAIが公開したAIチャットボット)や画像生成AIなど、世界では一気にAI開発が大きく前進し、クローズアップされています。同時に、それらAIを開発するために不可欠な膨大なデータ計算をするGPU半導体やそれを搭載したスーパーコンピューターの需要が世界中で急激に高まっているわけです。そしてAI開発に取り組む企業がNVIDIAのAI用の半導体(GPU)や、それを搭載したスーパーコンピューターを購入するため、現在、NVIDIAに長蛇の列を作っています。具体的にはグーグル、Meta(フェイスブック)、マイクロソフトといった錚々たるテックの巨大企業らがNVIDIAのGPU製品に今年だけで10万台以上の注文を入れているのです。

カリフォルニア州サンタクララにある、半導体メーカーNVIDIA本社 (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)
カリフォルニア州サンタクララにある、半導体メーカーNVIDIA本社 (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

 AIを開発する企業は一刻も早く大量データから膨大な計算、トレーニングをしてAIサービスを開始したいわけですから、需要が追いつかない現在、NVIDIAの半導体も値上がりしていくと思われ、同社が時価総額1兆ドルになったのもうなずけます。

 実はテスラも自動運転の開発(ニューラルネットワークのトレーニング)に世界トップ10に入るNVIDIAのスーパーコンピューターを使用してきましたが、さらにスピードアップするために自社で半導体から設計し今回のDojoを開発しました。

テスラ独自のAI GPU Dojo
テスラ Dojoのシステムトレイ

 そのDojoの生産が開始され拡大していくということは、つまりテスラはNVIDIAのGPU供給の時期や価格にも一切縛られることなく、DojoというAI開発用のスーパーコンピューターを製造し、どんどんそのスケールを拡大できるということを意味しています。

 去年、NVIDIA製のGPU製品を数万個、1社だけで調達している大手企業もありましたが、同様に例えばテスラが30万個のGPUをNVIDIAに注文したとしても、何年待ちになるか分かりません。自社で開発したDojoを使えば、NVIDIA製のGPU製品やスーパーコンピューターの供給に左右されませんから、このメリットはテスラにとって計り知れないのです。

 では、テスラもNVIDIAのようにAIトレーニング用のスーパーコンピューターDojoを他社に販売したらどうか? となるわけですが、テスラは半導体メーカーになるつもりはなく、あくまで自社製品(EVの自動運転、オプティマスの頭脳)のAIトレーニングに活用をしようとしています。ただし、イーロン・マスクが言うには他企業のAIトレーニングのためにDojoを有料で使ってもらおうという、AmazonのAWS的な考え方は持っているようです。

Dojoを頭脳として活用するテスラのAIロボット・オプティマス
Dojoを頭脳として活用するテスラのAIロボット・オプティマス

 イーロン・マスクは6月17日に訪問したパリで「テスラは、完全自動運転の実現に近づいている」と述べました。またいつものリップサービスとする見方もありますが、今回の発言の背景にはテスラのDojoが生産にこぎつけられて、拡大の見通しが立っている情報と合っています。イーロン・マスクは「Dojoが無くても完全自動運転は実現できる」と言っており、Dojoが製造できたことで、その自動運転の開発スピードは今後、数十倍以上に加速する(=完全自動運転の実現に近づいている)ということなのです。

テスラは自社でDojoの製造拡大ができる
テスラは自社でDojoの製造拡大ができる

 AIによるChatGPTが登場して、突然、話題になった時に世界が驚きました。ChatGPTによって社会や企業のルールの見直しや、雇用が失われる懸念が出ているニュースが流れています。A Iでの自動運転は現実世界を理解して判断していくため、ChatGPTよりもはるかに難しいだろうと言われていますが、このままDojoが拡大すれば、ニューラルネットワークのトレーニングが加速し、AIで自動運転が突然できるようになることも考えられます。

 自動運転が実現する前の現時点で、NVIDIAのライバルとなるようなスーパーコンピューター・Dojoを自前で開発するテスラは、1兆ドル企業のNVIDIAと同等かそれ以上の半導体技術を持っています。しかも面白いことに、NVIDIAのようなAI半導体メーカーではなく、テスラはEVを売りながら、そのEVのためにAI半導体も自前で作れる企業ということなのです。今後のテスラのAI、そしてDojoの動向にますます目が離せなくなってきています!

「写真提供元:Tesla, Inc. 」

※Dojoについては「TESLA FAN BOOK」に解説が載っていますので、ぜひご一読ください! https://evcafe.jp/mook/

がす(来嶋 勇人)

 福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になりテスラでハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。

 プライベートでは2024年からイーロン・マスクの公式パロディアカウント(フォロワー140万人)からオファーをもらいイーロン・マスク(パロディ)公認のAIデザイナーとなり、ハイクオリティなAI画像をイーロン・マスク(パロディ)に提供中。そのメールをやりとりしているイーロン・マスク(パロディ)はイーロン・マスク本人だと思っている。

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